2024年04月29日( 月 )

成長可能性都市ランキング(野村総研調査)(後)

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トップ10に九州から、福岡、鹿児島、久留米、佐世保が入る

 九州人には元気になる話だ。(株)野村総合研究所がまとめた、都市が持つ、産業を生み出す力を順位づける「成長可能性都市ランキング」で、福岡市が2位になるなど上位10都市のうち九州の4都市が入った。朝日新聞(8月26日付朝刊)が報じた。野村総研のレポートを見てみよう。

佐世保市は「多様性を受け入れる風土」では3位

 ランキングには誰も予想しなかった都市が顔を出す。「多様性を受け入れる風土」では、長崎県佐世保市が東京23区、札幌市に次いで堂々の3位だ。次の3点を評価している。

・外部人材の受け入れが多く、移住者支援も積極的に行っている。

・外国人やよそ者を受け入れる風土を持っておりマイノリティ(少数者)に対する寛容度も高い。

・米軍基地が立地する特性から、外国人が知り合いにいる人、外国人が街の発展に貢献していると考える人が他都市より多い。

 佐世保出身の経済人は、3位の評価に思わずのけぞったそうだ。基地の街なので、米軍と軍人は日常的な光景だった。高校生のとき、クリスマスパーティーに招かれ、ケーキとアイスクリームをごちそうになり、「こんな美味しいものを食べているのか」と驚嘆したことを鮮明に覚えているという。圧倒的な豊かさに憧れ、ホームステイを利用して米国留学した同級生や、米国軍人・軍属と結婚して米国に渡った顔見知りは2~3人にとどまらない。いつの時代も、思いきりがいいのが若い女性だ。

 「米国が嫌いだという人は、ほとんどいないのではないか」。米海軍のマーチング隊を先頭にした自衛隊と米軍の共同パレードは基地の街・佐世保のメインイベントだ。

 それにしても多様性を受け入れる風土が全国3位とは。「米軍との共生は土地の人には当たり前の感覚だが、沖縄のような反基地を予想している東京人には、よそ者を受け入れる風土があると映ったのかもしれない」と戸惑いを隠さない。

「都市の暮らしやすさ」No.1は佐賀市

 さらなるサプライズもある。「都市の暮らしやすさ」では、佐賀市が1位なのだ。次の3点を挙げている。

●人口あたりの医療機関数や小売店数、飲食店数が多く、医療、買い物、飲食など日常生活の環境が充実している。

●生活コスト全般が安く、少ないコストで質の高い住宅に住むことができる。市民の日常生活の満足度が総じて高い。

●車を使わなければ生活が出来ない点を不満とする市民が多い。

 身近な場所に田んぼやクリーク(水路)がある佐賀は、蚊が多いことから「ブン蚊都市」とからかわれていたが、暮らしやすさでは「日本一」とのお墨付きを得たのだ。
 なぜ、九州の都市の評価はこれほど高いのか。前出の朝日新聞はこう伝えている。

〈九州について野村総研は「共通点として多様性の寛容度や住んでいる街に対する満足点が高い。そういう風土がある地域には新しい風が吹き込みやすく、起業など比較的適していることが多い」と分析している。〉

 要するに、ミニ東京に染まっていないということだ。久々に九州人を元気にさせてくれるレポートだった。

(了)
【森村 和男】

 
(前)

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