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2017年09月10日 07:03

日本最大級!回復期病院の実績に見る独立独歩の事業展開(後)~巨樹の会

一般社団法人 巨樹の会(カマチグループ)

西高東低の回復期病床

 関東における巨樹の会の回復期病院も、「必要とされるところに病院を建てる」という蒲池会長の信念に基づいて、次々と開設されているが、それが地に足が着いた経営によって展開されている点は特筆すべきだろう。巨樹の会の直近2期の財務内容(【表Ⅱ】参照)を見ると、現預金を増やす一方で、有利子負債は縮小。流動比率は175.9%と健全域にある。また、17年3月期における正味財産比率(企業でいう自己資本比率)は33.7%。前期比で9.2ポイントの増加となった。

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 積極的な事業展開を行いながら正味財産を増加させて財務を維持しているのは、社会や地域のニーズに応えていることの証左でもある。

 16年3月1日現在、全国の回復期病院の病床数は7万7,102床。2000年以降、右肩上がりだが、地域別にみると、病床数のばらつきは顕著。2000年の時点で厚労省は、人口10万人あたり50床を目標とし、現在、全国平均では60床を超えているものの、関東地区の都県はすべて60床以下。東京、神奈川、埼玉、茨城に至っては50床以下である。北海道、東北も同様に低く、“西高東低”の分布となっている。

 このようななか、カマチグループは、“求められる医療”を提供するべく展開。現在では、巨樹の会が、東京地区5、埼玉地区3、千葉地区3、栃木地区2、医療法人社団 緑野会が神奈川地区1の回復期病院を運営し、総病床数は2,256床となっている。特筆すべきは、東京都にある病床数1,193床は、東京都全体の回復期病床の約20%のシェアを占めていること。加えて今年10月、江東リハビリテーション病院(206床)がオープンする。

力の源泉は人材育成

 こうしたスピード展開の屋台骨になっているのは、現場が必要とする人材を育成・供給する学校法人 福岡保健学院である。グループの基本理念である「手には技術、頭には知識、患者様には愛を」を行動原理に身に付けた看護師、セラピストが、拡大する医療の現場に投入され、第一線で活躍する。自身を「教育者」という蒲池会長は、人材育成面でも投資を惜しまず、グループの「力の源泉」(桑木副理事長)である、分厚い人材の層を作り上げてきた。

買い物に同行するセラピスト

 現場におけるサービスの質の向上を図るために、数値化(見える化)も徹底している。前出の在宅復帰率のほかに、リハビリの結果を示す基準としてFIM(機能的自立度評価法、Functional Independence Measure)を採用。これは、日常生活の自活度を示す尺度で、食事、トイレ動作、歩行、理解、記憶などの合計18項目(運動項目13、認知項目5)を7段階評価し、すべて自立できていれば満点の126点、すべて介助が必要だと18点となる。これをFIM利得(=退院時FIM得点-入院時FIM得点)とFIM効率(=FIM利得/入院日数)で図り、FIM利得が高いとリハビリやケアの効果が高く、FIM効率が高いとリハビリやケアの効率が高いと評価する。なお、カマチグループでは、脳血管疾患、運動器疾患、廃用症候群のすべてでFIM利得、FIM効率ともに全国平均を上回る。リハビリに係る医療費も増大しているなか、「よりリハビリの質を高めていくことが重要」(桑木副理事長)と、さらなる向上に努めていく考えだ。

 一方で、今後の課題として、高齢化にともなう介護事業との連携が考えられている。急性期後の患者の受け入れ先となる回復期病院では、患者の介護認定が変わることが多々ある。本人のみならず、その家族も初めて、または不慣れな介護経験のため、不安を抱えている。ところが、入院中から患者に関わるケアマネージャーはほとんどおらず、電話のやり取りだけでケアプランが決まることも多いという。桑木副理事長は、患者は楽をしたがり、きついリハビリをさけ、少しでも楽しいところ、楽なほうへ進みたがるため、病棟でFIMを上げた意味がなくなることを懸念し、「ケアマネージャーや介護事業者の方には、“どうやって家に帰れるか”ということを念頭に考えていただきたい」と語る。

 カマチグループの歩みと巨樹の会の実績から考察するに、『時代をリードする経営戦略』とは、従来の概念にとらわれず、たとえ独立独歩であっても、飽くなき自己研鑽によって確立した信念に基づき、行動を貫くことから始まるのではないだろうか。そして、自分の組織を客観視し、理念を共有して、全員一丸となって、より高みを目指していく努力が、事業継続に必要不可欠な要素として汲み取れる。「大和民族のための医療に徹する」という蒲池会長の志は、現組織の在り方に体現されている。

(了)
【山下 康太】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:鶴崎 直邦
所在地:佐賀県武雄市武雄町大字富岡12628
設 立:1954年4月
正味財産合計:307億7,941万円
URL:http://www.kyojunokai.jp​

 
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