2024年04月30日( 火 )

士業の現状と課題~アップパートナーズ代表に聞く(後)

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 医療福祉業界のサポートに特化し、西日本最大級の規模と実績を持つアップパートナーズグループ。税務サポートだけでなく労務や各種経営コンサルタントを置き、クライアントの要望にワンストップ型で応える。
 国税庁によると税理士の懲戒処分件数は2014年度までの10年で約3倍の59件に増加。また、日本弁護士連合会(日弁連)によると、弁護士の2016年の懲戒処分件数は114件で、統計を取り始めた1950年以降過去最多となっている。
 クライアントからの信頼でシェアを伸ばし続けてきた同事務所。不祥事が増加する業界についての見解を、代表税理士の菅拓摩氏に伺った。

(聞き手:弊社執行役員・緒方克美)

 ――税理士の仕事は、近い将来にAIに取って代わるという意見が聞かれます。これに関してはどのように考えられていますか。

 菅 10年後は分かりませんが、5年後にAIに完全移行している、ということはないかと思います。私も市場に出ているFinTech関連のツールの確認や、試験的導入を行いましたが、仕訳システムの精度が低いなどの課題が多く、まだ税務のプロ以外が利用するのは非常に困難だと感じました。

 当事務所にはSEの部隊もおり、クライアントのIT化支援も行っています。今後、AIを上手く活用すれば、作業効率を上げると同時に、余計な費用を削減することが可能になり、多くの企業が助かります。AIの本来の役割の1つは、人手不足を補うことです。“AIに仕事を取られる”のではなく、事務手続きなどの作業面をAIがカバーし、税理士が知識面に集中できるようなシステムと体制を構築していくべきではないでしょうか。

真の税理士の姿を問う

  ――御社が西日本トップクラスに成長してきた理由はなんでしょうか

アップパートナーズ 菅 拓摩 代表税理士

 菅 従来の税理士業務に固執せず、クライアントにとってより良いサービスを考え続けてきたことが1つの要因ではないでしょうか。例えば、今では当たり前のことですが、納税予測と事業計画の作成のお手伝いがあります。私はこのサービスを15年位前からほぼ全クライアントに提供したのですが、その当時はほとんどの事務所が納税予測などしていませんでした。納税を含めた事業計画を作成し、検証を毎月行うと、今度は資金繰りのお手伝いもした方がよいと気付き、そのサービスも毎月行う。このような気づきと実行を繰り返してきました。

 また、SEの必要性にいち早く気付いたことも大きかったのではないでしょうか。クライアントに、スタッフ200名が同質のサービスを提供するには、システムの構築が不可欠でしたので、早い時期にSEを採用しました。このSEが優秀で、さまざまなツールを作成してくれたおかげで、さらに多様なサービスを扱えるようになりました。SE部隊ができたのも、IT化が今後の企業戦略には不可欠だと感じたためです。

 このように、クライアントのさまざまな課題を解決するための体制を作り続けてきたことが、お客さまからの信頼と業績拡大に繋がったのではないかと考えます。

 懲戒処分が増加しているという現状は、同じ税理士事務所として悔しく、悲しい限りです。脱税が明らかになれば、指南した税理士だけでなく、クライアントも当然の処罰を受けます。本当に必要なことを示すという姿勢であれば、脱税指南などありえないことです。

 目先の利益にとらわれず、クライアントに寄り添うという真の役割を思い出すことが、いまの税理士業界には必要なのではないでしょうか。

 ――本日はありがとうございました。

(了)
【文章・構成:中尾 眞幸】

<COMPANY INFORMATION>
税理士法人アップパートナーズ
代表:菅 拓摩
所在地:福岡市博多区博多駅東2-6-1九勧筑紫通ビル9階
設 立:2008年9月
グループ総資本金:1億5600万円
URL:http://www.upp.or.jp/index.php

<プロフィール>
菅 拓摩(すが・たくま)
1973年4月24日生まれ、福岡県で育つ。立命館大学院経営学研究科修了。2003年に菅拓摩税理士事務所を開設。2008年に内田延佳税理士事務所と経営統合し、アップパートナーズを設立。同事務所代表税理士に就任した。

 
(前)

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