2024年03月29日( 金 )

スルガ銀行~「かぼちゃの馬車」への融資を検証する(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 スマートデイズ(旧スマートライフ)は、スルガ銀行に個人投資家を紹介し、東京で女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を2017年10月までの4年間で、約800棟近く販売・運営していたと見られている。
 昨年10月、スルガ銀行が融資方針を変更したことから、サブリース家賃の支払いを完全停止する事態に陥ったといわれる。ほとんどの投資家は、1億~3億円程度の物件を7%前後の高金利のフルローンで購入したといわれ、被害を受けたオーナーは約700人にのぼり、総額は約1,000億円といわれる。はたしてスマートデイズだけの問題なのかどうか。融資したスルガ銀行の貸出金の動きから検証していくことにしたい。

1.スルガ銀行の貸出金推移について

 【表1】はスルガ銀行の貸出金の推移表である。

この表から見えるもの

◆2013年3月期の総貸出金は2兆7,553億円。貸出金は4,280億円。「個人ローン」の残高は2兆3,273億円で、その内訳は「住宅ローン」が1兆9,236億円。「その他個人ローン」は4,036億円となっている。(株)スマートライフが設立されたのは2013年8月。従って13年3月期がスタートの計数となる。

◆スマートライフが活動を始めた6カ月後の14年3月期の「個人ローン」は、前期比+1,432億円の2兆4,705億円。「住宅ローン」は前期比+328億円。「その他ローン」は前期比+1,105億円。13年3月期の増加額は882億円であり、223億円の増加はシェアハウスの新規売上増が寄与したものと推測される。

◆15年3月期の「個人ローン」は2兆6,102億円(前期比+1,397億円)。その増加額の内訳を見ると「住宅ローン」は前期比▲2億円。「その他ローン」が前期比+1,399億円と大きく増加しているのがわかる。「その他ローン」に占めるシェアハウスの比率はわからないが、増加額に大きく貢献したことは間違いないようだ。

◆16年3月期の「個人ローン」は2兆7,722億円。「その他ローン」は前期比+1,250億円に対し、「住宅ローン」は前期比+370億円となっている。

◆17年3月期の「個人ローン」は2兆9,073億円。「住宅ローン」は前期比+474億円。「その他ローン」は前期比+877億円となり、増加額は小さくなっている。シェアハウスの販売が頭打ちになってきた時期はこのころからと推測される。

2.スルガ銀行の個人ローンについて

◆スマートライフが設立された後の「その他ローン」および「住宅ローン」の計数を追って見ることにしたい。【表2】を見ていただきたい。

この表から見えるもの

◆2013年の「住宅ローン」は1兆9,236億円で、その比率は82.7%だった。「その他ローン」は4,036億円で、その比率は17.3%。しかし17年12月期(第三四半期)の「住宅ローン」の比率は
69.2%と大きく下げているのがわかる。一方「その他ローン」は17.3%から30.8%と大きく比率を上げているのがわかる。

◆2017年12月期の「住宅ローン」は2兆553億円で、2013年3月期より+1,317億円(増加率6.8%)となっているが、「その他ローン」は+5,103億円(増加率126.4%)と大きく増加している。金利の高い「その他ローン」に営業力を強化していったスルガ銀行の動きが読み取れる。
【表3】を見ていただければ、スルガ銀行の収益力が他行と違った動きとなっているのがわかるのではないだろうか。

まとめ

 全体の数字を見ていくと、スルガ銀行は金利の高い「その他ローン」を推進して、収益力を高める経営方針であったものと推測される。シェアハウスへの融資が問題となり、株価を大きく下げている。スルガ銀行がこの処理の仕方を一歩間違えるようなことがあれば、顧客離れを誘発する危機に直面することになるのではないだろうか。

(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

※クリックで拡大

※クリックで拡大

※クリックで拡大

※クリックで拡大

 
(中)

関連キーワード

関連記事