2024年04月29日( 月 )

山の花に会いたくて 『フクジュソウ』福寿草、キンポウゲ科の多年草

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 フクジュソウは年明け、雪の中から顔を出し、いち早く春を告げる花の代表です。そのため元日草(がんじつそう)や朔日草(ついたちそう)などの別名を持ちます。福寿草という和名もまた新春を祝う意味があります。背丈は10cmほどですが、愛らしい花です。

 フクジュソウに会いたくて、仲間2人を誘い、太宰府インターから五木方面へ車で向かった。7年前の東日本大震災直後の2011年3月12日のことだ。友人の1人は奥さんから「こんな時に出かけるなんて」と言われたそうだが、津波のテレビ映像を見ているより、山で開放感を味わいたくて付いてきたそうな。
 脊梁山地の仰烏帽子(1,302m)が目指す山である。五木村の入り口近くの登山口より、林道を利用し、さらに上部の第2登山口へ車で登る。これだけで所要時間が1時間近くかかったことになる。

 仰烏帽子登山口と表示された大きな看板から登山道へ入る。3月とはいえ山はまだ冬、登山道は霜柱で膨れ上がり、陽が当たる場所は霜柱が溶けてぬかるんでいた。ゆるい上りの登山道を進むと大きな樹が現れた。幹周り5尋(ひろ)はある大きな桂の樹である。
 石灰岩の岩や石が、ところどころに点座している。フクジュソウは石灰岩質を好む花でもある。少し危険な仏岩の展望台へよじ登り、しばし展望を楽しむ。そして、さらに歩を進める。目指すフクジュソウが石灰岩の岩間に点々と見えてきた。黄色いフクジュソウは群れていたり、寂しく1輪だけ咲いていたりとさまざまだ。
 背の低い花だが葉を一見してキンポウゲ科だとわかる、人参の葉のかたちに似ているのだ。デジタルカメラを2台使って、何枚もシャッターを切る。
 撮影した写真をカメラのモニターで確認する。何枚かは陽の光を反射して花弁が白く写っていた。人間の目には感じないのだが、デジタルカメラの性能なのだろうか、フィルムカメラではありえない事だ。私と花とのツーショットも仲間に撮影してもらった。

 仰烏帽子山頂へ足を伸ばす、部分的に残雪もあり、緩い登山道を登り詰めると、そこが山頂であった。落葉した樹々の山容、脊梁の山々が360度目の前に広がっていた。「あー、春間近だ」、山の空気を何度も胸いっぱい吸った。あと少しで新芽が出て若葉で山は萌えてくる。
体中が近づく春の息吹を感じていた。記念写真の撮影後、少し下った陽だまりで昼食。そして、登ってきた登山道をピストンで下山、轟々と流れる川辺川沿いの温泉で汗を流し帰路へ。

 良き仲間とともに、静かな山で花との出会い旅であった。

仰烏帽子のフクジュソウ

2018年3月19日記
池田 友行

 

関連記事