2024年04月19日( 金 )

島根益田信用組合~女性職員が4,700万円を着服

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 島根県にある島根益田(信組)(本店:島根県益田市駅前町14-23)は24日、支店に勤務していた女性職員が、2004年10月頃から17年12月にかけて、本人および親族の借入金返済のために、金庫室に保管していた現金4,743万6,000円を13年間にわたり着服していたことを明らかにし、1月19日付で懲戒解雇処分していたことがわかった。

 同信組によると、着服が発覚したのは昨年12月29日。本部が各支店から余剰金を送付させた際、元職員の支店からの金額が想定の半額ほどしかなかったため特別調査を実施。元職員は着服を認めたという。

 同信組は別表の通り、2カ月後の3月2日、「不祥事件発生について」で、その概要を発表しているが、その対応は遅かったのではないだろうか。

人事管理を検証する

◆同組合は益田市に本店営業部を含め5店舗。浜田市に1店舗あり計6店舗で営業している。2017年3月期の預金残高は約255億円。貸出金は156億円(いずれも平残)。
・横領した元職員はそのうちの1支店に13年間、転勤もなく出納の責任者だったという。定期的な人事異動をしなかった本部の責任は重い。着服は「起こるべくして起きた」といわれても仕方がない杜撰な人事管理だったのではないだろうか。

着服の手口

 着服の手口は単純だった。1万円札100枚の帯封の上と下だけは1万円札にし、中は1000円札98枚を挟んで帯符していたという。表面的には100万円の束ではあるが、実際には「118,000円」しか入っていなかったことになる。またドンゴロス(麻袋)に入れている500円硬貨を10円硬貨にすり替えていたこともわかった。

現金管理を検証する

 1万円札と1000円札の縦幅は76mmで同じだが、1万円札の横幅は160mm、1000円札は150mmなので10mm短い。千円札98枚を1万円札で上下を挟むと段差があるためすぐ見分けがつく。そのため10束を大きな帯符で覆いごまかしていたと推察される。

◆100万円の帯符の中味は118千円であり、差額は882千円。4,743万円の横領であり、53束以上が偽装されていたと思われる。
・着服があった支店は月に1回程度、ほかの職員が定期的に現金を検査していたと説明しているが、実際は検査していなかったのではないだろうか。
・私が勤務していた銀行でも1カ月に1回、必ず現金検査を実施していたが、当番に指名されると大変で、金庫室だけでなく、出納手持ち現金および各テラーの手持ち現金を1円まで、検査をしていたことが今となっては懐かしく思い出される。

まとめ

島根益田(信組)本店(3月25日撮影)

 竹本義正理事長は「お客さまならびに関係各位の信頼回復に向けて再発防止策を徹底し、今後二度とこのような不祥事は発生させないよう取り組む」とコメントしたが、一方で元職員の親族が横領金を弁済していることを理由に、「本件は組合内現金の着服であり、お客さまとのお取引に影響を与えるものではない」として、元職員を刑事告訴しない方針を示した。

 その裏には刑事告訴すれば、同信用組合の杜撰な人事管理や現金管理が白日の下に晒されることを恐れて忌避したものと推測される。

 この不祥事により、全国148の信用組合だけではなく、全国の金融機関に対し、現金検査の厳格化に警鐘を鳴らした点は大きいが、ただその責任の取り方は甘く、役員3人だけが報酬を3月から3カ月間、わずか10%減額する処分を発表して、幕引きを図ろうとしているのが透けて見える。

 島根県に信用組合は1つしかない。島根益田(信組)は、この苦しい時こそ、役職員が一致団結して顧客の信頼を取り戻すために、また今後、二度とこのような不祥事件を起こさないためにも毅然と刑事告訴すべきではないだろうか。

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 

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