2024年12月12日( 木 )

化粧品・健康食品通販業界の雄~幾多のトラブルも跳ね返す販売力(後)

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(株)ディーエイチシー

商品の製造販売に関わるさまざまなトラブル

 売上高1,000億円を超える健康食品・化粧品通販のリーディングカンパニーとしての地位を不動のものにしている同社だが、これまで数々の商品や行政に関わるトラブルを起こしている。
 03年5月に、同社が販売していた「メリロート」と呼ばれる成分を含む健康食品の摂取者が肝機能障害で入院したことで、厚生労働省は当初社名を伏せ、消費者に事実公表と注意喚起を徹底するよう指導したが、改善が見られず、その後も同商品への苦情が寄せ

られた。これにより、厚労省は健康被害事例として、同社の社名を公表した。
 また、同年10月には、顧客会員に配布している会報誌に掲載している特定保健用食品ではない商品に「コレステロールが気になる方に」などと表示。厚労省から健康増進法および食品衛生法違反として指導を受けている。07年には、厚労省が、同社ほか健康食品通販数社に対し、商品名を含む全面的な表示の改善を求めている。

本社社屋(同社HPより)

本社社屋(同社HPより)

 09年には、公正取引委員会が、同社含む7社に対し、シャンピニオンエキスを含む健康食品に消臭効果があると表示したことで景品表示法違反による排除命令を出した。
 業界全体で物議をかもしたのは、同社が12年8月に全国紙に掲載した他社比較を表示した広告内容。中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局の補助金事業「北陸地域ライフケア関連産業振興事業」のなかで、ある経営コンサルタントが行った調査データとして、「利用している(利用したい)機能性食品メーカー第1位に選ばれました」の謳い文句で、カテゴリー別に競合他社の実社名をランキング形式で掲載。いかに同社製品が利用されているかを訴求する広告内容に、同業他社や消費者からも大きな反発を受けた。助成金を出した中部経済産業局も「企業の実名が掲載されたことは不適当」とし、同社に対して「事前にしっかりと説明していたにもかかわらず、営利目的で使ったのは問題」と抗議した。

 表示以外に、特許に関わる訴訟もある。10年に同社が販売するメイク落としの商品「DHCマイルドタッチクレンジングオイル」について、(株)ファンケルが同年に取得したオイル成分の配合に関わる特許を侵害しているとして、損害賠償7億1,000万円と販売差し止めを求め、東京地裁に提訴。さらに製造販売差し止めを求める仮処分命令を申請した。
 一審では特許権侵害を認め、DHCに約1億6,600万円の支払いを命じ、販売の差し止めについては退ける判決を下し、商品の販売を中止したが、同社はこれを不服とし、知財高裁に控訴。ファンケルも損害額を不服とし、3億6,700万円の支払いを求めた付帯控訴を起こした。同社は特許の有効性について、特許庁に無効審判を請求。無効審決を受け、知財高裁に審決取消訴訟を提起するなど、泥沼の訴訟合戦となった。その結果、金銭の支払いもなく、「特許侵害の対象となっていた製品の製造販売をしない」「特許の無効審判の取り下げ」「特許の有効性について今後争わない」を条件に和解が成立。同社では「逆転勝訴と考え、大変満足している」と発表。このコメントが業界内では「道義上いかがなものか」と物議を醸した。

 また、17年には、同社が販売する「DHCアスタキサンチンジェル」と「DHCアスタキサンチンローション」の2商品について、富士フイルム(株)が化粧品成分の配合技術に関する特許権を侵害されたとして、東京地裁に製造、販売の差し止めと、1億円の損害賠償を求める訴訟を起こしたが棄却。富士フイルムは不服として知財高裁に控訴したが、東京地裁の判決が支持され、請求は棄却された。

競争激化に対応、大手に迫る販売企業として

 幾多のトラブルを乗り越えながら業容を拡大してきた同社。その事業姿勢については賛否両論があるが、大きな技術開発力を持たず、時流に乗った、低価格販売手法を軸にブランドによる差別化を推し進めている。
 同社をよく知る、ある業界関係者は「もともとはファンケルのビジネスモデルがベンチマークだった。ノウハウ吸収のためにヘッドハンティングをして今のビジネスのかたちができたと聞く」といい、これまでの同社の事業への取り組みから、売れる商品ならば少々のトラブルも承知で開発している感もある。そうでなければ、競争が激しい通販市場でトップを走れないし、大手にも迫れないという思いもあるのではないだろうか。
 ただ、各商品群を見ても販売するブランドが強くても、商品としてのブランドが高いものは多くないとも感じる。低価格路線の販売ブランドからどのように底上げしていくのか。今後の施策が注目される。

(了)

【小山 仁】


<COMPANY INFORMATION>
(株)ディーエイチシー
代 表:吉田 嘉明
所在地:東京都港区南麻布2-7-1
設 立:1975年12月
資本金:33億7,729万円
売上高:(17/7連結)1,056億7,400万円

 
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