2024年05月02日( 木 )

西日本フィナンシャルホールディングス、久保田勇夫会長新春経済講演会(11)

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英国のEU離脱交渉はやっと第2段階へ

 次にBREXIT、英国のEU離脱についてです。これは大事な話でございますが、今日は時間の制約もあり簡単にお話します。昨年3月に英国が離脱を通告しまして、昨年11月か12月にようやく実態の話になったそうだというのです。その間、何をやっていたかと言いますと、英国が離脱する際の条件の交渉をしていたのです。テーマが3つほどあるのですが、その中の1つに清算金がいくらかということがありまして、これが400億ユーロないし460億ユーロでようやく決着しました。その間、離脱後の両者の関係をどうするのかの交渉も併せてやりたいと主張したのですが、EU側は離脱後の関係の交渉は離脱の条件の合意がない限り、すなわち俗にいえば離婚の示談金が定まらない限り、離脱後どうするかの話の議論はしない、ということでした。それで昨年3月に通告して約半年かかってようやくこの離脱後の話をすることに合意したことになります。

 それで今ようやく第2段階に移りました。第2段階というのは、先述の通り2019年3月の離脱後にどうするかという交渉です。現在のところどうも直ちに、離脱後の本来の関係について来年3月までにはその合意が出来そうもないので、それまでの間移行暫定期間を置こうとして、それについての交渉をやり始めています。暫定期間については何が問題かというと2つありまして、1つは暫定期間を何年にするかということです。1年か、2年かということで、英国側は2年と言っています。日本の新聞では一時、「2年で合意」と報道されましたが、合意には至っていないようです。EU側は短ければ短いほうがいいとし、英国の方はその経済紙『フィナンシャルタイムズ』などは「暫定期間を2年間とせず永久にそのままでいいじゃないか」と論じています。いずれにしましても、BREXITの話は暫定期間を何年にするかということと、暫定期間の措置をどうするかということが問題点ですが、これらについての実質的な交渉は今年3月ぐらいからしか始まらないようですね。そういうわけで全体から見ますと、英国のEU離脱の交渉はものすごく時間がかかっており、予定通りに進まないのは明らかであります。

 それで問題は、われわれ日本に対する影響および日本の対応であります。1つは、金融機関はかなり実体的な運用と言いますか、対応をしつつその業務の内容に応じて、EUの諸機関が多く立地するベルギーの首都であるブリュッセルに移したり、英国に残したり、あるいはフランスのパリや欧州中央銀行があるドイツのフランクフルトに移したりしています。フランクフルトの当局は自信満々でして、「誘致策を講じなくてもフランクフルトに来る」と言っています。一方、フランスの関係者はいろいろ措置を講じて「パリが当然にロンドンに代わる国際金融都市になるのだ」と言っていますが、これは少し甘いと感じます。いずれにしても金融機関をどうするかは、世界的な金融の動きのなかで決まりますので、日本としても大勢順応でいいと高をくくっていてもいいのではないかと思います。

 問題はメーカーのほうであります。とくに、すでに英国に工場を作った企業です。たとえば、英国の新幹線のためなど、英国のマーケットを目的として工場を作っている場合は問題ありませんが、欧州大陸を主たるマーケットとして英国に工場を作っているのであれば、これは非常に困ると言いますか、影響が出てきます。さらにいえば、英国に工場を作ってはいるけれども、その工場がつくるのは欧州大陸でつくる完成品のほんの一部の部分だという企業は、欧州の工場が英国にあっても大した影響はありません。ただ明らかなことは、欧州に新たな製造拠点をつくろうとする場合、これを英国につくるということは、従来より慎重に考えなければならないだろうということです。ということで少し長くなりましたが、次に移りたいと思います。

(つづく)

 
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