2024年04月20日( 土 )

「人材不足」「働き方改革」、中小企業はどう乗り越える~社会保険労務士法人アドバンス(後)

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 「働き方改革関連法案」に向けた動きが加速しつつある。大企業を中心に、労働時間削減に向けた取り組みなどが開始されており、今後は中小企業もこの波を受け、労働環境の是正に向けた動きを余儀なくされる。
 福岡市では、今年4月1日から「ふくおか『働き方改革』推進企業認定事業」を開始。企業側に、働き方改革へのいち早い取り組みを促す。一方で、改革への障壁に頭を悩ませる経営者の数も多い。
 中小企業の経営者たちは、迫る「働き方改革関連法案」に向け、どう取り組んでいくべきか。「ふくおか『働き方改革』推進企業認定事業」にも認定され、労働環境改善のスペシャリストとして、多くの企業に改善策を提示する、社会保険労務士法人アドバンスの伴芳夫代表に伺った。

 ――「働き方改革」に関して、実際に中小企業が導入するには障壁が多く、困惑している経営者も多いようです。アドバンスさんでは、どのようなアドバイスをされているのでしょうか。

 伴 我々は、大企業よりも中小企業の方が「働き方改革」に対応しやすいと考えています。理由は、大企業に比べると中小企業はフットワークが軽く、動きやすいこと。さらに社内間のコミュニケーションを図りやすいことが挙げられます。

 昨年9月、デロイトトーマツコンサルティングさんが実施した大企業を中心とした調査で、働き方改革への取り組みに「従業員の満足を得られなかった」とする回答が4割と出ています。というのも、現在実行されている取り組みは、労働時間に着目しているものがほとんど。「働き方改革」の目的は、残業時間の削減ではなく、従業員の働きやすい環境をつくり、生産性を向上させること。そのためには、従業員の思いを汲むことが不可欠です。しかし大企業は、従業員数も膨大であるため、本当の意味での需要をとらえることが難しい。

 その点、中小企業は従業員の意見を反映し、現場に則した取り組みを実行しやすい環境にあるといえます。「働き方改革」を正しく機能させるためには、社員とのコミュニケーションを日ごろから図っておく必要がある。我々が提供している幹部研修やコミュニケーション研修は、その解決の一端も担っています。

 社労士の仕事は、ただ労務状況を管理し、就業規則をつくることではありません。そもそも、企業が作成している就業規則の中身が法に反している、というケースは必ずしも多くはありません。問題なのは、就業規則と実態がかけ離れているケースです。企業へのカウンセリングとヒアリングをしっかり行い、実態の改善を図りつつ、就業規則を実態に合わせて組み立て直す。それが本当の社労士の役割です。就労規則と実態を見直していく過程で、結果的に「働き方改革」への対応につながることもある。なにも大胆な変革ばかり求められるのではなく、育児介護の支援体制や、キャリアアップへの取り組みなど、すでにあるルールをほんの少し変えるだけで、成果をもたらすことができるのです。

1法人としても、働きやすく時代に沿った環境を創造

 ――1人ひとりの働きやすさを考慮し、働き方のダイバーシティを認めることが重要、ということですね。今年4月に施行された「ふくおか『働き方改革』推進企業認定」では、労働時間の是正だけでなく、キャリアアップ支援体制なども認定基準として取り上げられています。アドバンスさんは、認定第1号法人として認定されていらっしゃいますね。

 伴 はい。従業員の「働き方」に、より則した改革でないとあまり意味がありませんので、そういった意味でも、優れた指針といえるのではないでしょうか。

 我々も、もとは今後認定に関するご相談の増加が見込まれるため、直接福岡市の担当部署に説明を伺いに行ったのですが。内容を見てみると、当法人でも取得できるものでした。そこで改善すべきところは改善し、無事認定に至った次第です。実際に認定を受けるまでの過程を知っていれば、さらに詳細なアドバイスが可能になりますので、そういった意味でも実のある取り組みだったと感じています。

 ――アドバンスさんでは、今後どのような方針で事務所を運営していかれるのでしょうか。

 伴 従来の通り、社労士・行政書士としてクライアントのお手伝いをするのは当然のこと、時代の変遷に伴って多様化するニーズに、広く応えられるよう変化していきます。その1つとして現在強化しているのが、IT事業者とのアライアンスの構築です。

 IT技術はここ2、3年で急速に成長し、需要も非常に高くなってきています。我々社労士としても、ITに対応できなければ、あっという間に世間に置いていかれかねません。お客さまのニーズをしっかりつかみ、柔軟に対応することが、これまでより、さらに求められる時代となるでしょう。ご相談をいただいた際に、その企業ごとに最適なシステムをご提案・ご紹介できる事務所であるように、随時情報を収集し、体制を築いてまいります。

 この一環として、5月11日に当事務所にて、IT技術を人事・労務業務に組み込んだ“HR Tech”の展示会「ADVANCE EXPO」を開催いたします。人事・労務に生かすことができるシステムの実演を見ることができるだけでなく、個別の相談や商談も可能です。お客さまに寄り添う者として、努力を怠らず、いつの時代も必要とされる存在であり続けたいですね。

(了)
【中尾 眞幸】

<COMPANY INFORMATION>
社会保険労務士法人アドバンス、行政書士法人アドバンス
代 表:伴 芳夫
所在地:福岡市中央区舞鶴2-2-11 富士ビル赤阪8F
創 業:1986年
URL:http://www.van.gr.jp/

 
(中)

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