2022年05月24日( 火 )
by データ・マックス

期待が高まっている南北経済協力(後)

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 それでは、南北の現在の経済状況はどうだろうか。北朝鮮は国連安全保障理事会による制裁で、昨年の経済成長率はマイナスを記録し、経済状況がよくない。

 一部では飢餓者が出るほど深刻な状況になっているようだ。北朝鮮の1人あたり国民総所得(GNI)は146万ウォンであることに比べ、韓国は22倍の3,198万ウォンである。貿易総額は北朝鮮が65億ドルである一方、韓国は北朝鮮の138倍の9,016億ドルである。このように南北の経済格差は大きい。その間、開城公団の設置で南北交易は徐々に増加していた。その結果、南北交易は2015年には史上最大の27億1,400万ドルを記録した。ところが、朴槿恵(パク・クネ)政権は2016年2月10日に突然、同工業団地を閉鎖。その結果、南北の交易額は2016年には3億3,000万ドルにまで減少し、2017年にはたった100万ドルにまで落ち込んだ。

 南北関係が改善されるにつれて、韓国の文大統領が発表した「朝鮮半島新経済地図構想」が注目を浴びている。遅れている北朝鮮のインフラ開発に投資が行われることへの期待が高まっているわけだ。試算によると、そのコストは289兆ウォンに上るということで、鉄道、道路の建設などを中心に株価が先行して値を上げている。とくに、北朝鮮に往復できる北に近い韓国の地域を中心に、すでに土地の価格が値上がりしている。「新経済地図構想」の中には、大きなプロジェクトがいくつも網羅されているが、まず現実的に可能性が高いのは、金剛山観光の再開、開城工業団地の再開、 京義(キョンウィ)線(ソウル~新義州)の連結などであろう。

 とくに、ソウルから新義州を繋ぐ京義線は、将来中国にもつながり、その先にヨーロッパにまでつながれる可能性があり、今までの物流を一変させる大きなインパクトを秘めている。北朝鮮は電気事情がかなり悪い状況なので、何よりも発電所などのインフラ投資が先行されるだろう。そのほか、北朝鮮には豊富な地下資源が眠っている。その利権をめぐって、中国、米国、日本をすでに動いているようだ。
北朝鮮との経済協力による特需を期待し、韓国の建設会社など関係会社はプロジェクトチームを結成し、その実現に向けて計画を立てている。北朝鮮と経済協力が実現すれば、朝鮮半島のリスクが緩和され、金融市場にも肯定的な影響を与えることになるだろう。それに、今まで進展しなかったシベリアのガスパイプライン構想などが現実味を帯びてくることになる。しかし、南北経済協力には課題も多い。まず、南北関係の改善が前提になる。南北改善が実現しないと、絵に描いた餅である。また、財源の調達である。莫大な資金が必要になるので、政府の政策だけではどうにもならない。結果的に民間企業の資金協力なしには実現できないが、民間企業はリスクがないことが確認される必要がある。そのほか、北朝鮮には技術も人材もないので、それももう1つの課題であるとの指摘もある。

(了)

 
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