2024年12月02日( 月 )

ポイントオブケア検査(POCT)市場の有望性(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 みなさんは病院で検査を受けるたびに、検査が煩雑であることと、検査結果が出るまで随分待たされ、いらいらした経験はないだろうか。もし病院で受けていた精密検査を自宅など、いつでも、どこでも受けられるようになったら、医療はどのように変わるのか考えてみたことはあるだろうか。

 IT技術や通信技術の発達、医療技術の目覚しい進歩により、従来は大きな病院でしか行われていなかった検査を自宅、保健所、応急室などで受けられる時代が到来している。また、既存の検査は解析に時間がかかり、重症患者または応急患者の場合、治療が間に合わず、命を落とすようなこともあったが、今回取り上げるポイントオブケア検査は、結果がわかるのに数分しかかからない。これは患者にも医療関係者にも朗報である。

 ポイントオブケア検査とは、point of care testingの略で、 患者の検体を専門の外部試験施設に送らずに、診療所や家庭、救急車の中など、その場で行う検査や、そのシステムのことを指す。従来のように専門の外部検査機関に検体を送って検査をするのではなく、患者の近くで小型の機器やキットを用いて迅速に検査結果を出すため、医療診断の質の向上に役立つとされている。

 このポイントオブケア検査は1980年代に欧米で導入され、1990年代に入り、POCTという名称に統一された。当初、ポイントオブケア検査は測定結果の精度が疑問視される傾向もあったが、それも既存機器との相関性の高さが証明されたことで徐々に解消されつつある。

 既存の検査の場合、検査を外部に依頼することになるので、結果を得るのに数日を要する場合もあったが、ポイントオブケア検査は検査時間が短縮されるので、多くの医療現場で活用されていくことが期待されている。とくに、後進国のように医療設備がまだ整っていないところでは、大きな期待が寄せられている。

 世界の保健所の数は500万カ所あるとされているが、医者はいうまでもなく、診察できる設備さえないところが多い。ところが、POCTは小型の機器とチップがあれば専門的な知識がなくても検査が可能になる。それでポイントオブケア検査(POCT)は今後、世界的に急激にニーズが高まり、大きな市場へと拡大することが見込まれている。

 それでは、今までの検査はどのように行われていたのか。医療現場で検査は診断、治療に役立つ有益な情報を、正確かつ迅速に医者などに提供するために行われる。しかし、従来は検査は大型病院、専門検査機関などを中心に中央化された検査室で大量に効率よく行われていた。また医療機器は高額で、場所を取る為、小規模病院ではそのような装置をそろえるのが難しいのが現実だった。

(つづく)

 
(後)

関連キーワード

関連記事