2022年08月18日( 木 )
by データ・マックス

産廃処分場乗っ取り事件 処分場の土地をめぐる新たな動き

 乗っ取り疑惑に揺れる福岡市博多区の金隈産廃処分場を巡り、役員の辞任届を偽造、提出されたとする被害者が乗っ取り経営陣の職務執行停止の仮処分を求め、福岡地裁に申し立てを行っていることがわかった。

 申し立てを行ったのは、同処分場の関連会社「(株)和幸商会」と「(株)クリーン金隈」の役員を兼ね、「両社の株式を100%保有している」と主張している吉岡直之氏。吉岡氏は、辞任届や取締役会議事録などを偽造されたことで和幸商会とクリーン金隈の役員を辞任させられ、多大な損失を被ったと訴えていた。

 申し立てられたのは、クリーン金隈の法人と登記上の代表取締役である伊藤博之氏。伊藤氏は一連の乗っ取り行為の首謀者の1人とされる。現経営陣は市役所への手続きが必要だと伝え、吉岡氏から住民票などを入手したうえで、辞任届、議事録を偽造。正式な議決が行われたと偽って法務局に届け出た疑いがある。

 今回の申し立ては、同処分場の土地所有権をめぐる不可解な不動産取引が発端。不動産登記を見ると、和幸商会はクリーン金隈に15年4月に処分場の土地を売却。その後、土地を購入したクリーン金隈が上嶋稔氏に16年9月に転売したことになっているが、17年3月にクリーン金隈が処分禁止仮処分を申し立てた。そのうえで土地を取り戻すため、福岡地裁に登記された所有権移転、および抵当権設定の抹消を訴えていた。

原告:(株)クリーン金隈
被告:上嶋稔、ほか1名
事件名:土地所有権移転登記抹消登記等請求事件

 原告は、上掲の16年10月13日に登記された所有権移転、および17年2月13日に登記された抵当権設定の抹消を訴えた。訴状で原告は「固定資産評価額の270万円で土地一式を売買したことになっているが、金銭のやり取りはしていない」と主張。さらに所有権の移転はしているが、売買は存在しなかった「仮装」であるとし、通謀虚偽表示であるため、所有権は上嶋氏にはなく、抵当権設定も無効であるという内容が主張された。

 しかし、なぜ所有者を変える必要があったのか。裁判資料によると、和幸商会に協業を名乗り出た上嶋氏が当時のクリーン金隈代表の上原隆重氏に関する信用に関わる噂を聞きつけ、今後のトラブルを避けるために、土地の所有名義を自身に変更することにしたという。しかしその後、タダで手に入れた上嶋氏が土地使用料を払うように主張してきたため、クリーン金隈は上記の訴えを行ったのだ。

 この裁判は処分禁止の仮処分を申し立てた17年3月から始まったが、同年8月25日に原告都合ですべての請求が取り下げられている。提訴された上嶋氏がたまらず、売買代金を払うとし、その前に裁判での請求を取り下げて欲しいと告げたのだ。これに応じるかたちで請求は取り下げられたが、上嶋氏は金を払うことはしなかった。(なお、今年3月、土地所有権は上嶋氏個人から自身が代表を務める(株)ニチド(大阪市)に変更されている。)

 このように、吉岡氏がクリーン金隈の代表として不動産を取り戻そうとしていた最中に、一連の乗っ取り事件が勃発。違法行為により、クリーン金隈の代表者に就任したのは伊藤博之氏。この伊藤氏が何らかの理由で処分禁止仮処分を取り下げようとしていることに気づいた吉岡氏が、対抗措置を取ったもの。取り下げを阻止するために、伊藤氏の職務執行の停止を申し立てているが、伊藤氏ら乗っ取り経営陣は辻褄の合わない反論を展開している。早ければ7月中に、裁判所の判決が下る。

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【東城 洋平】

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