2022年08月18日( 木 )
by データ・マックス

舞台は法廷へ~終わり見えぬ産廃処分場乗っ取り事件(前)

福岡市博多区 金隈産廃処分場

 まるでテレビドラマや映画に出てくるような“法人乗っ取り劇”が起きた。産廃処分場を運営する法人とその関連会社において、一部の役員などが結託し、代表者や株主の知らぬところで、秘密裏に取締役会や株主総会が開催されていた。意に反する者を排除するため、勝手に代表取締役を辞任させ、株主の了承を得ないまま増資を決行するなど、数々の違法行為が行われた疑いがある。「事件」発覚から4カ月。終わりが見えないまま、舞台は法廷へと場所を移す。

2度目の乗っ取り

 前代未聞の法人乗っ取り劇の舞台となったのは、福岡市から許可を受け、産廃処分業を手がける(株)和幸商会(福岡市博多区)とその関連会社である(株)クリーン金隈(同所)。和幸商会の産廃処分場運営をめぐっては、サニックス創業メンバーである箭内伊和男氏が創業者を洗脳、当時のナンバー2を排除し、代表の座に就いた経緯があった。近年は福岡市からの再三の改善指導もあり、まともな運営もできておらず、廃業に進むかと思われていたのだが…。

 今年2月のことだ。「知らない間に、自分が辞任したことになっていた」と話すのは、和幸商会の取締役でクリーン金隈の代表取締役を兼ね、両社の株式を保有する吉岡直之氏。取締役会の開催も一切聞いておらず、辞任届も出した覚えがない。株主総会の開催通知は届いておらず、当然、増資の了承もしていない。

 

吉岡氏と伊藤氏のメールでのやりとり

 吉岡氏は何かの間違いかと思い、和幸商会の箭内代表取締役とナンバー2の伊藤監査役に状況を聞いた。返ってきた言葉に「乗っ取り」を確信した。
 「あなたはもういなくなる予定だったから、関係ないでしょう」。
 吉岡氏は抗議したが、受け入れられなかった。そして、すぐさま登記関連の書類を確認した。出てきたのは、自身が作成した覚えのない「吉岡直之」取締役の辞任届2通だった。
 そこで、年末年始にかけ、箭内氏らに告げられたことを思い出した。「市役所から連絡があり、手続きに必要なので住民票を送ってほしい」―社内の人間からこういうメールが来れば、素直に従ってしまうものだ。市役所からの要請と言われれば、提出しないわけにはいかない。吉岡氏は2度続けて求められたことに疑問を感じながらも、和幸商会に住民票などを送った。

 偽造された辞任届と住民票がそろえば、届け出は完了する。あとは吉岡氏が出席したとする取締役会、株主総会の議事録を作成すればよい。案の定、何者かに偽装された議事録が見つかった。

 

議事録には本人と異なる筆跡

 ここにデータ・マックス取材班が入手した3件の文書がある。
 いずれの議案も、吉岡直之氏の辞任に関わるものだ。「吉岡直之氏から、役員辞任の申し出があったため、後任を選任したい」と記載されているが、前述の通り、本人はそのような申し出をした覚えはないと断言する。偽造された辞任届を基に、集まりが開催されたように見せかけているが、両日とも吉岡氏は集まりには参加しておらず、何者かによって偽装された可能性が極めて高い。とくに(3)では、「吉岡直之」の直筆サインと捺印があるが、吉岡氏はサインした覚えはない。念のため、吉岡氏の直筆サインをいくつか確認したが、文字の特徴が明らかに違っていた。筆跡鑑定を行うまでもなく、誰かが本人に成りすまして書いたものだと判断できる。
 企業法務に詳しい弁護士によると、これは明らかな違法行為で、「公正証書原本不実記載」「私文書偽造」「偽造私文書など行使」にあたる可能性が高いという。

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首謀者は元・JFL監督

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 関係者への取材で、一連の乗っ取り行為の中心に「柏田清光」という人物がいることがわかった。同氏は国政選挙に出馬経験のある、元JFL(日本フットボールリーグ)の監督だという。「柏田氏が和幸商会に出入りを始めてから、運営がおかしくなった。彼が裏で指南しているのではないか」と、関係者は異口同音に語る。柏田氏が和幸商会に出入りするようになったのは、昨年11月ごろ。しばらくして、県外ナンバーのトラックが処分場に出入りし始めたという。
 柏田氏の経歴は非常に興味深い。2007年の参議院議員選挙で「共生新党」から比例代表で出馬するも落選。当時の比例区候補者プロフィールには「宮崎県出身/不動産会社社長」とあり、さらにJFL(日本フットボールリーグ/註:アマチュアのトップリーグ)に参加するサッカーチーム(所在:宮崎県)の監督という経歴も記されていた。柏田氏の名刺には、産業廃棄物コンサルタント業「(株)盛大」(福岡市東区、大藏則子代表)の技術管理士とある。しかしこの「盛大」という会社、登記は見つかったものの、業界関係者ですらその存在をほとんど知らない謎の法人だ。
 和幸商会は、仕事は増え始めたものの、経営状況は厳しいままだ。ほとんどメリットがないと思える法人乗っ取り行為の真の狙いは何か。周囲から漏れ聞こえてきた「拡張」という言葉に、ヒントが隠されていた。

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(つづく)
【東城 洋平】

 

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