2024年04月20日( 土 )

山九・神鋼JVがベトナムで浄水場建設を20億円で受注

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北九州市ゆかりの高度浄水処理技術(U-BCF)が海外へ

▲アンズオン浄水場完成予想図(JICAHPより)

 北九州市内に主たる営業拠点を置く山九(株)と(株)神鋼環境ソリューション(本社:兵庫県神戸市)の共同企業体(JV)は8月下旬、ベトナムハイフォン市のアンズオン浄水場(処理能力日量10万m3)の高度浄水処理「U-BCF」(上向流式生物接触ろ過)などを整備する工事を受注した。受注金額は20億3,500万円。

 この事業は、JICAの無償資金協力として2016年2月にスタートした事業で、(株)NJSコンサルタンツ(NJSC)と(株)北九州ウォーターサービス(KWS)の共同企業体がコンサルティング業務を請け負っていた。北九州市が主導する海外水ビジネス案件としては、最大規模の受注額となる。同市海外水ビジネス推進協議会では、今回の受注を機に、同国でのさらなるU-BCFの受注につなげていきたい考えだ。

 同協議会関係者によれば、「今回の事業実施を通じて、異国で建設する生物処理施設に必要な技術的対策や建設ノウハウを蓄積。本事業の施工実績をもとに、次の類似案件への入札参加資格も獲得し、今後、同国で発注が予想される類似工事の国際競争入札に備えるという戦略だ」という。その意味では、今回の受注は、この戦略のワンステップに過ぎず、「ゴールまでいまだ道半ば」のようだ。

 ハイフォン市は、人口約170万人のベトナム第3の港湾都市。北九州市と姉妹都市の関係にある。同市最大規模のアンズオン浄水場では、急速ろ過処理で水道水を供給していたが、生活排水などにより水源河川の水質が悪化。安定した水道水質の確保が課題になっていた。

 JICAは2016年2月、浄水処理能力の向上を目的に、U-BCFなどを建設する「ハイフォン市アンズオン浄水場改善計画」を対象とした無償資金協力の贈与契約を締結した。同年5月、NJSCとKWSのJVはハイフォン市とコンサルティング業務(詳細設計 、工事入札事務 、工事施工監理 、竣工時の運転・維持管理指導)を契約。受注金額は約1.5億円。北九州市がもつU-BCFの建設・運転・維持管理ノウハウや、ハイフォン市内で行ってきた実証実験結果などをもとに、本事業の完成に向けたコンサルティングサービスを提供している。

 日本の高度浄水処理技術には、オゾン除去、活性炭処理などの処理方式もある。生物膜でろ過するU-BCFは、ほかの処理方式に比べ、低コスト、省スペースというメリットがある。北九州市の基幹浄水場である本城浄水場と穴生浄水場にU-BCFが導入されている。

 ハイフォン市でのU-BCFの採用は、ビンバオ浄水場(処理能力5,000m3/日)についで2例目。ビンバオU-BCFの事業費は約5,000万円(ハイフォン市の自己資金)で、そのうち、約50%の事業費(土木工事)をハイフォン市内企業が受注し、残り50%の事業費(U-BCF本体および電気機械工事)をKOBELCO Eco-solutions Vietnam(神鋼環境ソリューションのベトナム現地法人)が受注。北九州市上下水道局が技術アドバイザーに就き、事業が進められた。2013年12月に竣工、同月から供用開始している。

【大石 恭正】

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