2024年04月30日( 火 )

『ぐっちーさん』が福岡で講演~AI大失業時代を生き抜くために!

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 8月23日、福岡市内のホテルで中小企業福岡・北九州懇話会の定期講演会が行われた。講師に投資銀行家の“ぐっちーさん”こと山口正洋氏が登壇し「日本経済の現状 ついにきた!AI大失業時代 今こそ地方にチャンス」というテーマで講演を行った。

 講演では、「AIによる大失業時代の到来」というセンセーショナルな言葉を使い、「情報をもつ企業が今後の経済を支配していく」という持論を紹介。GoogleやFacebookなどのIT企業を例に上げ、「これらの世界的企業が個人情報に対して価値を見い出し、いかに活用しようとしているか、経営者なら知るべきだ」とした。

 また、山口氏は2人以上の世帯の消費支出において、2011年3月が29万3,181円であったのに対し、18年6月は26万7,641円と7年弱で2万4,000円ほど減っていると説明。「東日本大震災発生時よりもお金を使っていない現状を知っていただきたい。九州ではあまり影響はなかったかもしれないが、東京では2週間ほど物が買えない期間があった」と話す。
 消費支出の減少の要因に、給料が上がっていないことが挙げられる。「アベノミクスは一部の大企業には恩恵をもたらすが、それ以外の企業は恩恵を受けていない」。それを裏付けるかのように、参加した中小企業経営者の多くが話にうなずいていた。

銀行員はいらない

 さらにAIが今後、普及していくことで、「普通の人には仕事がこなくなる時代がやってくる」と力説。「アメリカではシアトルのフィンテック企業がわずか20名で5兆円のお金を動かしている」とし、決裁判断に時間がかかる日本の銀行員が必要ない時代が近い将来、来ることを懸念した。
 AIの進歩により、人がする仕事が減ることが予想されるなか、山口氏は今後、「人間しかできないもの」を追求することが生き残る道であるとし、「AIが人間と勝負して、かなわないのが読解力。ここを磨くことが大切」とした。だが、「中学生、高校生には読解力がない生徒が多い。我々なら簡単にわかるものでも間違うケースがある。これは社会問題です。これからはコミュニケーション能力を磨くことが大切ですね」と語った。
 これからの社会は、「人間の英知を結集し、希少価値があり、高価であっても、少量でロングテールな商品をつくるべき。マニアックで、とんがっているもの。これには、AIはかなわない」とし、独自性をいかに打ち出すかが重要とした。
 最後に福岡の経営者に対して、「福岡は90%がサービス業と言われています。サービス業は、AIが苦手な分野」とし、AIができない部分を強化していくことが生き残りにつながるとメッセージを送った。

 山口氏は1960年東京生まれ。慶応義塾大学経済学部を卒業後、丸紅に入社。モルガン・スタンレーなどを経て独立。アメリカの投資銀行員時代の2005年頃、証券化商品の破たんにともなう金融危機を予測して、危険性の高いこれらの商品の販売を中止したことにより、銀行を辞めた経験をもつ。しかし、その予測が、その後の2008年9月のリーマン・ショックにつながった。それを予見した数少ない日本人エコノミストとして知られている。
 現在は、現役の投資銀行家として活躍する一方で、東日本大震災の被災地の岩手県紫波町では地方再生プロジェクトにも参画し、実務にも詳しい。ビジネスの傍らで「ぐっちーさん」のペンネームでブログ、有料メルマガなどを配信している。著書に「ニッポン経済世界最強論!」(東邦出版)、「日本経済ここだけの話」(朝日新聞出版)など多数。

【矢野 寛之】

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