2024年05月03日( 金 )

九州地銀の2019年3月期(第1四半期)決算を検証する(6)

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~金融再編を促す人口減少について~
【表1】を見ていただきたい。九州7県の人口推移表である。
<この表から見えるもの>
◆九州7県の2018年8月1日の推定人口は1,286万人で、日本の総人口1億2,649万人の約
10.2%を占めている。一方、九州の地銀は18行(第一地銀11行・第二地銀7行)。全国の地方銀行が104行なので、その比率は17.3%。2021年に十八銀行と親和銀行が合併する予定となっているが16.5%とわずかに下がるだけなので、人口割合から見ればオーバーバンキングの状態は依然として変わらないのがわかる。
◆県単位の人口を見ると、2010年の国勢調査から増加しているのは福岡県(+38,871人)だけとなっている。人口の減少が一番多かったのは鹿児島県で▲91,316人。また減少比率が一番高かったのは▲85,811人の長崎県で▲6.0%となっている。日本の総人口の高齢者(65歳以上)のピークは20年後の2040年と予想されており、将来の人口減少を考慮すれば、十八銀行と親和銀行の合併はやむをないのかもしれない。
◆九州の政令指定都市3つのうち、2010年の国勢調査より人口が増加しているのは福岡市(+114,230人)と熊本市(+5,129人)で、北九州市は▲30,685人と明暗が分かれた。
・県庁所在地でも2010年の国勢調査より人口が増加しているのは福岡市、熊本市、大分市の3市だけで、佐賀市を含め4市は減少している。中心部においても人口減少が深刻な問題となっていることがわかる。

~九州地銀(18行の)純資産残高順位表について~
純資産は過去の収益を積み上げた正味財産である。【表2】を見ていただきたい。
<この表から見えるもの>
◆純資産残高がトップなのは福岡銀行で6,705億円。2位は西日本シティ銀行で5,175億円となっている。3位鹿児島銀行、4位の肥後銀行までが3,000億円以上の銀行で、5位の大分銀行から10位の北九州銀行までが1,000億円以上となっている。
◆11位以下を見ると、筑邦銀行を除き、すべて第二地銀となっている。最も筑邦銀行は第一地銀ではあるものの、戦後の1952年に設立された銀行である。また最下位の長崎銀行は1912年(大正元年)に設立され100年余りを経過しているが、純資産は147億円しかない。純資産はボリュームがないと積み上がらないことが読み取れる。
◆グループを見ると、純資産残高トップはふくおかFGで7,872億円。2位は九州FGで6,399億円。3位は西日本FHで5,378億円となっている。その差は設立の歴史である。西日本FHの母体設立は1944年に対して、ふくおかFGおよび九州FGの設立は明治時代で100年を越える収益の蓄積の差といえよう。
・九州地銀18行の純資産合計は3兆115億円に対して、3グループの純資産合計は1兆9,649
億円となっており、その比率は65.2%を占めている。今後もなお一層寡占化していくことが予想されている。

~九州地銀(18行)の預貸率について~
【表3】を見ていただきたい。九州地銀の預貸率順位表である。
<この表から見えるもの>
◆第1位は北九州銀行、2位は長崎銀行で、ともに100%を超えるオーバーローンとなっている。北九州銀行は設立して間がないため、貸出金増加により収益を上げる方針と見られる。一方、長崎銀行は十八銀行と親和銀行の攻勢を受け、八方ふさがりの状況のように見える。いずれにせよ、両行とも身の丈に合った預貸率にすることが求められているといえよう。
<まとめ>
2016年2月26日、十八銀行はふくおかFGと経営統合することで基本合意したと発表。しかし公取委の承認が得られず延期を繰り返してきたが、2年半後の8月24日、来年4月1日に経営統合することが認可された。
 十八銀行が経営統合を決断した大きな理由の1つは、預貸率が最低だったことではないだろうか。今は大分銀行が十八銀行と入れ替わっているのがわかる。はたして次に経営統合を決断する銀行はどこなのだろうか。

(了)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

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