西鉄天神大牟田線・連続立体交差事業 鉄道高架化でまちはどう変わるか?(後)
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2018年09月07日 07:00

西鉄天神大牟田線・連続立体交差事業 鉄道高架化でまちはどう変わるか?(後)

鉄道工事ならではの振動・騒音への工夫と配慮

▲ハーフプレキャスト工法での施工
 (春日原駅〜白木原駅)

 「電車の直上、近接の作業は、電車が止まる夜間にしかできない。近隣住民に対する騒音や振動には気をつけている」―そう話すのは、1工区の現場を担当する田尾一憲・清水・安藤ハザマ・松本共同企業体所長。

 また、「鉄道工事は、一般的な土木工事に比べ、作業時間帯・内容によって、騒音・振動に対して十分に配慮する必要がある」と鉄道工事のポイントを指摘する。たとえば、コンクリート構造物を取り壊す場合、通常はコンクリートブレーカーを用いるが、振動や騒音が発生するため、これらの発生が少ないコンクリートカッターを用いるなどの工夫をしている。

マスコットキャラクターでイメージアップ図る

 西鉄天神大牟田線の高架化事業では、事業のマスコットキャラクターが存在する。福岡市が事業主体となる区間では、「ざっしょのクマ」「電車くん」というマスコットキャラクターを用い、事業のイメージアップを図っている。「福岡市では、地域などからの要望に応じ、市の取り組みや暮らしに役立つ情報などを説明する出前講座を実施しており、連続立体交差事業の出前講座においては、事業マスコットキャラクターを使って、沿線住民などへのイメージアップを働きかけている」(若松課長)と話している。福岡県事業主体の区間では、地元大野城市のPRキャラクターの「大野ジョー」のデザインが工事現場の外壁などにプリントされている。

 土木の施工現場では、近隣住民からのクレームが大きな問題に発展することがある。鹿島建設JVでは、工事の内容について理解してもらうため、月に1回、2工区沿線約600~700世帯に対し、今月の作業工程に関するビラを配っているほか、同じものを各工区の公民館に配布している。夜間作業や道路規制をともなう作業を行う場合は、対象エリアの各世帯に対し、別途ビラを配っている。「近隣住民とのトラブル回避のためには、情報提供が何より大事だ」(後藤所長)と力を込める。

 西鉄としても、沿線住民からのクレーム対策に抜かりはない。「鉄道工事の場合、夜間作業をともなうケースが多いので、近隣住民への事前の情報提供は、必ず行うことにしている。昼間の作業でも音が出る場合は、事前の情報提供をお願いしている」(藤丸係長)と話している。

福岡県が事業主体となる春日原~下大利駅高架化事業

 福岡県が事業主体となるのは、春日原駅、白木原駅、下大利駅の3駅におよぶ延長約3.3kmで、大野城市栄町1丁目と同市下大利3丁目(距離比率は大野城市:春日市=8:2)を結ぶ区間となっている。福岡市事業主体の区間約1.9kmと合わせ、総延長は5.2kmの区間となる。春日市と大野城市は、駅前広場の整備など関連する事業を行う。

 この区間の踏切が12カ所もあり、通勤時間帯などには、慢性的な踏切渋滞が発生するなど、雑餉隈駅付近と同じく、円滑な道路交通のうえで大きな妨げになっている。20年度に高架化切り替えを完了、21年度の事業完了を予定している。大野城市や春日市が事業主体となる周辺関連事業すべてが完了するのは、23年度の見通しとなっている。

 高架化事業の実施によって、鉄道で分断された市街地が1つとなり、土地区画整理事業などとの一元的な実施による新たなまちづくりが期待されている。この区間では新駅の設置はないが、駅前広場の整備なども予定されており、西鉄バスやコミュニティバスなど交通結節機能としての利便性向上などが期待されている。

 工区は、直上部(起点~白木原、約2.2km)の区間と仮線部(白木原~終点、約1.1km)に分かれる。仮線区間は、側道を整備する大野城市が用地買収を実施。現在は、この新たな用地上の仮線部分を電車が走っており、もともとの線路敷に高架構造物を構築している。土木工事の工区は4工区あり、直上部に当たる1工区(延長約700m)は鹿島・大林・西鉄グリーン土木JV、2工区(約900m)は清水建設、3工区(約600m)は安藤・間が施工を担当。仮線区間となる4工区(約1.1km)の担当は松本組となっている。高架工事は11年4月から着手しているが、しばらくは杭打ちなどの基礎工事などが続いた。現在では、高架橋や桁の構築など本格的な工事が次々と進められている。

 もともとの春日原駅は、線路上に駅がある橋上駅だったが、高架工事のため解体。18年2月からは東西仮駅舎として開業している。下大利駅では、駅舎横に仮線を敷設したため、現在は仮駅で営業中。元あった場所に新たな駅舎を建設している。

 2工区を担当する清水建設の緒垣新吾・西鉄春日原高架工事所長によれば、「直上工事は夜間にしかできない工事など制約が多く、危険をともなう作業なので、細心の注意を払い慎重に行っている」という。少しでも施工上のリスクを回避するため、同工区約900mの区間のうち、ほとんどの区間についてハーフプレキャスト工法を採用している。

(了)
【大石 恭正】

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