2024年04月19日( 金 )

着工できぬ新築物件 背景に隣接物件の係争アリ

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 福岡県内の海岸に面した土地の一角で、建物新築工事の計画が大幅に遅れている。原因は隣地に建設された建物の基礎部分で、地下に埋められた土留めH鋼が土地の境界線を越えており、新たに建設される建物の基礎工事を邪魔しているからだ。

 今年3月、新築工事の為、建築会社が杭打ちを始めた所、隣地建物Aの土留めH鋼が地下で新築工事側に斜めに傾いた状態で埋まっていることがわかった。下に掘れば掘るほど、その越境範囲は大きくなり地下7mの箇所で最大237ミリとなっている。

 これにより、新築工事の基礎工事で杭打ちができない状況となり、工事は一時中断している。幸い、両物件は法人と法人代表名義で他人同士でなかったため、トラブルは限定的かと思われたが、関係者によると、工事着工のめどは立っていないという。

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 土地を上から見た図がある。Aには3階建の建物があり、Bがこれから新築予定の土地だ。技術的にも越境しているH鋼を引き抜く作業は困難だ。なぜならばH鋼が建物Aの基礎部分のコンクリートと一緒に固まっており、簡単には撤去できないという現状があるからだ。

 取材過程で判明したのは、隣接する建物Aの建築工事をめぐる裁判。施工担当のゼネコンと建築主が争う裁判は5年目を迎えようとしていた。原告ゼネコンが工事代金を請求するために起こした裁判だが、建築主は96カ所にもあがる施工不良、未完了を訴え、反訴するなど穏やかな話ではない。裁判の争点は何なのか。

 記者は建築主の許可を得て、建物に入った。驚くことに、建物AのH鋼接触部分の1階は地下水からの漏水で室内に水が溜まっていた。「これで完成引き渡しと呼べるのか」――建物内部に建築主が納得いかない理由があった。両者の間で何が起きたのか。次回から長きにわたる係争の中身を検証していく。

【東城 洋平】

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