2024年04月26日( 金 )

ユーザー・エクスペリエンスを究極まで高める Amazon!(前)

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立教大学ビジネススクール教授  田中 道昭 氏

 「アマゾン効果(Amazon Effect)」という言葉が米国内で注目を集めている。もともとは、アマゾンがECや小売業界に与える影響を意味していたが、最近ではさまざまな産業や国の金融・経済政策にまで影響をおよぼすことに意味が拡がっている。昨年11月に出版され、ビジネス書でありながらすでに12刷を超えた『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)の著者、立教大学ビジネススクール教授・田中道昭氏に聞いた。

アマゾンをベンチマークすることは重要である

 ――『アマゾンが描く2022年の世界』(PHPビジネス新書)が好評です。先生が本書をお書きになられた動機を教えていただけますか。

 田中道昭氏(以下、田中) 私の専門はストラテジー&マーケティングで、現在3つの仕事をしています。1つ目は立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)において教授の職にあります。2つ目は上場企業の取締役で、3つ目は経営コンサルタントです。今日いずれの仕事においても、アマゾンをベンチマーク(企業などが他社の優良事例を分析し、学び、取り入れる手法)することは重要であるという問題意識があります。

「超長期」の視点と「超短期」の視点を併せもつ

 ――アマゾンは創業経営者のジェフ・ベゾフそのものと言われます。先生の抱かれているベゾスのイメージはどのようなものでしょうか。

 田中 本書を執筆するにあたって、私が最もこだわった点の1つが、ジェフ・ベゾフの生の声を聞くことでした。もちろん、実際にベゾフがどのような人物なのかは本人でも難しいテーマかもしれません。私はベゾフの人物像を理解しようと、彼が実際に話している公開された動画で見つけられたものはすべて視聴し、彼が話している内容として直接の発言が引用されているものにも目を通しました。

 ベゾフは「火星人」とも「狂気の経営者」とも呼ばれています。しかし、それはベゾフに限ったことではありません。短い期間で1兆円以上の企業に育て上げた創業経営者の多くは、誤解を恐れずにいえば、時には人間性が欠落しているのではないかと思えるぐらいの突き抜けた行動をとることがあります。本書では、重要だと思ったことは臆せず何度でも、何十年でも言い続けることを「ジェフィズム」と表現しています。大きな業績を上げている優れた経営者ほど100年など超長期のスパンで自分のミッションを考えています。ベゾフは大きなビジョンを追い続ける「超長期」の視点と、現場においては、PDCA(Plan・Do・Check・Action)を超高速回転させる「超短期」の視点を併せもっています。

(つづく)
【聞き手・文・構成:金木 亮憲】

<プロフィール>
田中 道昭 (たなか・みちあき)

「大学教授×上場企業取締役×経営コンサルタント」 立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授。シカゴ大学経営大学院MBA。専門は企業戦略&マーケティング戦略およびミッション・マネジメント&リーダーシップ。三菱東京UFJ銀行投資銀行部門調査役、シティバンク資産証券部トランザクター(バイスプレジデント)、バンクオブアメリカ証券会社ストラクチャードファイナンス部長(プリンシパル)、ABNアムロ証券会社オリジネーション本部長(マネージングディレクター)などを歴任し、現在は㈱マージングポイント代表取締役社長。小売、流通、製造業、サービス業、医療・介護、金融、証券、保険、テクノロジーなど多業種に対するコンサルティング経験を基に、「東洋経済オンライン」「プレジデントオンライン」「ニューズウイーク日本版オンライン」などにも定期的に執筆中。主な著書に『ミッションの経営学』、『人と組織 リーダーシップの経営学』(両書とも、すばる舎リンケージ)、『アマゾンが描く2022の世界—すべての業界を震撼させるベゾスの大戦略』、『2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路 』(両書とも、PHPビジネス新書)『あしたの履歴書—目標をもつ勇気は、進化する力となる』(ダイヤモンド社、共著)など多数。

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