2024年04月24日( 水 )

創業者の社員教育が最大の資産 「オーナー以上にビルを愛する」心で進む(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株)ビルマネージメント

建設バブルに沸く福岡はビルメンテナンス業にとって好機

 山口県周南市で同業のビルメンテナンス業を営んでいた藤井氏だが、山口と福岡の違いは、やはり商圏の違いであり、それは管理できるビル物件数に直結すると語る。山口県の周南地域は、瀬戸内工業地帯として知られている。岩国市や周南市は石油コンビナート、下松市は鉄鋼や造船、宇部市や山陽小野田市はセメントや化学コンビナートがよく知られており、山陽新幹線から眺めるコンビナートの灯りは「10万ドルの夜景」と讃えられた。しかし、出光グループ最初の製油所だった徳山精油所も廃止となり、一世を風靡した化学工業にも昔日の勢いはない。往時の勢いを取り戻すには至っていない、というのが実際のところだろう。

 山口市内は官公庁の物件が多く、下関市は市場規模の割に競争が激しく、さらに北九州から同業者が進出してくる。となると、無理に山口県内にこだわるよりも、豊かな市場といえる福岡に進出すべきだ…。これが、藤井社長によるビルマネージメントM&Aの1つの狙いである。

 「博多駅近辺や天神のあたりなら、ビル管理法でいう特定建築物にあたる大きなビルがそこら中にありますから。ホテルも多いですしね」(藤井社長)。

 藤井社長が着目しているのが、福岡のホテル事情。とくに3月の大学受験シーズンに大規模イベントが重なると、深刻なホテル室数不足に直面していた。客室稼働率は年々上昇しており、ホテル需要を見込んで現在博多駅近辺を中心にホテルの新規建設やリニューアルが相次いでいる。藤井社長はそこに商機を見出したのだ。

 「ビルマネージメントは、ホテルのベッドメークを業務として行ってきました。ですから、弊社にとって現在の福岡のホテル事情は大きなビジネスチャンスといえるでしょう。積極的に営業して、仕事を取っていきたいと考えています」(藤井社長)。

 雨後のタケノコのように増える、福岡市都心部のビジネスホテルやシティホテル。福岡市を訪れる観光客やビジネス客の快適な滞在を、ビルマネージメントのスタッフが力強く支えている。そして、高いクオリティを実現しているホテル業務の存在が、山口のフジ総業にも良い影響を与えているという。

 「フジ総業は、ベッドメークをやりませんが、設備関係が得意。一方でビルマネージメントにとってベッドメーキングは大きな事業です。相互に補い合うことで、シナジーを発揮できるようにしたいですね。たとえば、福岡で大きな設備を導入するという仕事があれば、山口県からフジ総業の社員を連れてきて作業させ、同時にビルマネージメントのメンバーの養成にもつなげたい。フジ総業にも、ビルマネージメントが得意なベッドメーキングや接客などのソフト面をもち込んでいきたいですね」(藤井社長)。ビルマネージメントとフジ総業。両者のシナジーで、一段上のビルメンテナンスを実現できる。

心で磨く「すべての人のためのビル管理」

▲空気環境測定

 ビルマネージメントのスタッフの姿勢に、当初藤井社長は驚いたという。ビルマネージメントのスタッフと社員に行き届いている教育は、創業者の吉田会長の賜物だ。ビルマネージメントを創業した吉田会長は、それまで受け身の姿勢で契約に基づく作業を実施するだけだったビルメンテナンス業界に、「オーナーに代わりプロとして積極的に建物の資産価値を保全する」という視点をもち込んだことで知られている。ビル・建物に関わるすべての人々にとって安心・安全な、高い品質のビルディングを提供することを目指し、優れた社員教育やサービスの提供を実現していた。

 「『オーナー以上にビルを愛する』という吉田会長の理念が、社員1人ひとりにまで浸透しているのがよくわかります」と藤井社長が語るように、ビルマネージメントのスタッフと社員には「小さなところにも目を向け、オーナー、入居者、ビルを訪問する人々、すべてにとって良いビルディングとなるように管理するのが、ビルメンテナンスのプロたる者の仕事だ」という矜持がある。

 そして、その心がけが表れているのがスタッフの接客態度だ。本来の業務をしっかりやるのは当然のこととして、ビルを利用するお客さまに対して、あいさつがきちんとできる、服装がしっかりしている、笑顔がいいなど、基本的なところではあるが、そこで同業他社との差が大きくつく。「このソフト面が、ビルマネージメントの強みです。私も代表に就任してから事業所を回りましたが、それを痛感しています」。

 これまでビルマネージメントが築いてきた「信用」という財産のうえに、新たな蓄積を重ねていく。「お客さまに満足していただき、安心して発注していただけるように、会社一丸となって頑張っていきたい」と胸を張る藤井社長の目には、1点の曇りもない。

(了)

(前)

関連キーワード

関連記事