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2018年10月18日 10:21

糸島市職員の恣意的運用か?有名無実化されていた障がい者支援サービス(前)

 医療技術の進歩を背景に近年増加傾向にある「医療的ケア児」。日常的な医療的ケアを始め、食事や入浴など生活面でも支援が必要となる。障がい福祉サービスを利用する場合の費用などで公的補助を必要とする声は高まっており、関連するさまざまな支援サービスを導入する地方自治体も増えている。そのようななか福岡県糸島市で、2013年4月から施行されていた訪問入浴サービスの補助に関する実施規程が有名無実化されていた疑いが浮上した。

公的サービスで門前払い

 「医学の進歩を背景として、NICUなどに長期入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろうなどを使用し、経管栄養(たんの吸引やチューブやカテーテルなどを使い、胃や腸に必要な栄養を直接注入する)などの医療的ケアが日常的に必要」(厚生労働省)な「医療的ケア児」。近年、全国的に増加傾向にあり、その数は、2005年度9,403人から15年度1万7,078人まで増えている。

 16年5月には、児童福祉法が改正され、人工呼吸器を装着している障がい児が、保健、医療、福祉などの支援を受けられるために必要な措置が地方自治体に求められている。こうした国の方針に従い、さまざまな地方自治体で、支援体制の整備や充実が図られる一方、新たに導入したサービスが適切に運用されず、有名無実化している実態もみえてきた。

 「糸島市役所で、身体障がい者の訪問入浴サービスで申請者が門前払いになっている」。そう話すのは、医療的ケア児の保護者Aさん。Aさんの長男は、生まれつきの障がいで気管切開を行い、人工呼吸器を装着している。自分自身の力で入浴するのは困難であり、以前は、太宰府市の訪問入浴サービス事業を利用申請し、同市から補助を受けてきたという。

 訪問入浴とは、看護師1名を含めた2~3名のスタッフが利用者の自宅に訪問し、移動入浴車などの特殊浴槽を使って入浴をサポートする介護サービス。さまざまな介護事業者が実施しているが、「医療的ケア児」の場合は実績のある実施事業者が限られており、利用料金は全額負担すると1回で2万円超かかる。一般家庭にとって公的補助は必須といえる。

自治体で異なる対応

▲申請書式もあるが受付されない…

 しかし、Aさんたち家族が約2年前に引っ越した糸島市では、「同様のサービスが、利用者がいないため、廃止になった」(Aさん)との説明を受けた。長男を含む4人の子どもを抱え、年老いた両親の介護をしながら働いているAさん夫婦にとって、訪問入浴サービスが必要不可欠。長男の主治医の協力も得て、何度も糸島市役所に通い、必要性を訴え続け、17年12月、「糸島市重度身体障害者訪問入浴サービス事業利用」の決定通知が出された。

 問題はその後、Aさん以外の訪問入浴サービスを必要とする「医療的ケア児」をもつ複数の保護者が、Aさんの長男がサービスを受けたという話を聞きつけ、糸島市役所へ行ったところ、申請すらできないという“門前払い”の状況になっているという。「先にショートステイ(一時的な施設入所)や放課後などデイサービスを利用し、“最終手段”として申請すべきと言われている」「私の長男よりも年齢が上で身体が大きく、両親が入浴を手伝うのに大変な子どもさんがいる。困難だから申請しているのであり、受け付けないのはおかしい」とAさんは困惑する。

 糸島市に隣接する人口約157万人の福岡市では、1990年7月に訪問入浴サービス制度が導入され、2018年9月現在の利用者数は78名。福岡市障がい者在宅支援課は取材に対し、「福岡市独自のサービスではなく、ほかの多くの都市でも実施されているサービス」とコメント。一方、Aさんの相談を受けた際、制度がなかった太宰府市は、「ほかの自治体に遅れている」と判断し、近隣自治体から訪問入浴サービスの関連規定を取り寄せて参考とし、13年10月に地域生活支援事業に関する規則を改正、訪問入浴サービスを始めたという。これまでの延べ利用者数は4名。現在も3名(うち2名が子ども)が利用しているという。

 このように「医療的ケア児」の増加を受けて各自治体が対応を急ぐなか、利用者がいないからといって制度そのものを廃止にするようなことがあるのだろうか。糸島市の関連法規を探っていくと、Aさんへの説明とは異なる実態がみえてきた。

(つづく)
【山下 康太】

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