2024年05月04日( 土 )

宿泊税、ようやく協議へ~障壁となる福岡市の誤解

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市広報誌、港湾法を考慮せず

 宿泊税の導入をめぐり、1日夜、ついに小川洋福岡県知事と高島宗一郎福岡市長のトップ会談が実現し、実務者レベルの協議に入ることになった福岡県と福岡市。導入する宿泊税の制度については、すでにそれぞれが方針(※)を固めており、二重課税を避けるためにも協議による調整は重要だ。しかし、市側の現状認識に誤りがあり、今後、協議が行われるとしても話し合いがまとまらない可能性は高い。

 福岡市の広報誌「福岡市政だより」の11月1日号で組まれた「宿泊税特集」。市は、紙面に「市が行っている『九州の玄関口』の整備・運営(主なもの)」と題した表を掲載。「海の玄関口」(博多港)、「陸の玄関口」(博多駅)やPR、MICE施設、渋滞緩和、WiFiの整備などですべて県費を「0円」とし、「財源を確保するために、宿泊税は市が徴収すべき」と主張していた。

 この表には、観光客の受け入れで重要な役割を担う「空の玄関口」(福岡空港)は記載されておらず、福岡県が平成30年度予算で、「空港整備促進費」として67億6,464万円を支出したことはまったく触れられていない。また、漁港や河川、水道施設などインフラ整備、医療、教育、児童福祉、雇用対策、文化・スポーツ振興など153事業、計325億6,904万円が「福岡市民のための県予算」として使われていることも無視されたかたちとなっている。

 最も致命的なのは、県がお金を“出さない”のではなく、法律上、“出せない”ということを市側が理解していないということ。港湾法は「港務局を組織する地方公共団体以外の者は、当該港務局に出資することができない」(第28条)と定めている。博多港の港湾管理者は福岡市長、「港務局」とは市港湾局のこと。「工事に要する費用は、国と港湾管理者がそれぞれその十分の五を負担する」(第42条)とされており、福岡県が博多港の整備などに県予算を投じることは違法行為となる。

 残念ながら、この「宿泊税特集」に関わった市担当者は、港湾法について理解しておらず、「陸の玄関口」で「県予算0円」という数字を算出してきた港湾局の責任者は「終日不在」という。さすがに、市港湾局の人間が港湾法を理解していないということはありえないが・・・。

 つまり、県は、法制度上、博多港の整備にはお金を出せないが、それ以外のところで福岡市民のためにお金を使っているのである。その結果、福岡市は限られた財源で、観光への投資ができているといえるだろう。宿泊税の導入をめぐる協議は、いってみれば“カネの奪い合い”だ。双方に誤解があれば、まとまる話もまとまらない。実務者協議の前に、まず、県と市の役割分担についておさらいすべきだ。

【山下 康太】

※福岡市は、宿泊料1人1泊2万円未満200円、2万円以上500円とする税額を決定。福岡県は税額を原則として1人1泊一律200円とする方針。ただし、二重課税になる可能性を考慮し、福岡市では税額を100円とする折衷案が盛り込まれている。

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