九産大、世界初のハナビラタケの全遺伝子を解析~動脈硬化の医薬品開発に活路
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九州産業大学は10月30日、東京女子医科大学と共同で、主に健康食品で利用されているキノコ「ハナビラタケ」の全ゲノムの解読に世界で初めて成功したと発表した。
九州産業大学生命科学部の木山亮一教授と、東京女子医科大学循環器小児科の古谷喜幸研究員の共同研究によるもの。ハナビラタケはハナビラタケ科に属すβ-グルカン(高分子多糖体)やたんぱく質を豊富に含む栄養価の高いキノコ。白いハボタン状の珍しい形状で、カラマツやヒメコマツなどの木の根元に育つ。関東甲信越地方や北海道の高山地帯といった限られた自然環境でしか生育しない、「幻のキノコ」ともいわれていた。
今回の研究では、ハナビラタケ遺伝子中に免疫活性化に効果があるとされるβ-グルカンなどの有効成分の合成に関与する遺伝子群を発見したほか、ハナビラタケ水抽出物中に動脈硬化に有効と考えられている女性ホルモン、エストロゲンと同様の作用を示す成分「サイレントエストロゲン(エストロゲンと似た作用を示すものの、エストロゲン依存癌細胞の増殖を促進しない化合物の総称)」の存在を確認している。
ハナビラタケはがんや感染症、糖尿病に対して予防改善効果があると注目されていたが、その薬理作用が科学的に解明されておらず、健康食品としての利用にとどまっている。そのため、医薬品として利用するために全ゲノムを解読し遺伝子レベルでの有効性を解明することが望まれていた。また、脳梗塞や心筋梗塞の原因の1つである動脈硬化には女性ホルモンであるエストロゲンが有効であることは指摘されていたが、作用メカニズムに不明な点が多いことや、エストロゲン製剤には、がん細胞を活性化させるという問題があり、活用が十分進んでいない状況にあるという。
同大学は「今回の研究成果でハナビラタケの有効性を遺伝子レベルで解明し、有効成分のサイレントエストロゲンの存在を発見したことで、癌発生リスクの少ない新しいタイプのエストロゲン製剤製品化の可能性を広げるもの」とし、今後、企業などと連携して臨床応用や創薬への利用を進めていく予定だとしている。なお研究成果は10月30日に、英国の科学雑誌「Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)」の電子版に掲載された。
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