2024年04月29日( 月 )

【豊洲市場訴訟】東京都が豊洲市場の鉄筋量不足41%を法廷で認めた!(3)

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

 保有水平耐力計算における係数(構造特性係数:Ds)について、構造計算適合性判定機関の指導を紹介しておく。

(1)福岡県建築住宅センター・九州住宅保証2社の「判定事例による質疑事項と設計者の対応集」より

(2)愛知県建築住宅センターの「構造計算適合性判定事例解説集」より

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 裁判官は、いかなる理由があるにせよ、自分で出した判決を自分で覆すわけにはいかないもので、どうしても この裁判を早く打ち切りたいと考えており、これが行政側と司法側の基本的な方針だと推察される。

 仮の義務付け申立に対して、東京地裁は1962年の最高裁判例をもち出して、今回の事案は「特定行政庁が行う処分性がない」という理由で却下した。1962年判決は1955年判決や同1964年判決と同じ枠組みのなかにある。
これに対して原告側の武内弁護士は、最高裁第二小法廷2005年(平成17年)7月15日判決を例に出して、裁判所や東京都が引用している判例は古いもので2005年最高裁判例は、この古い判例を否定していると述べる。

 この最高裁判例は、医療法30条の7に基づく都道府県知事による病院開設中止の「勧告」について、これを「行政指導」として性格付けたうえで、「行政庁の処分その他公権力の行使」にあたるとして処分性を否定した一審判決・二審判決を取り消し、原審に差し戻した。同判決は、上記都道府県知事の「勧告」につき処分性を認めた理由として以下の通り判示している。

 「医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者がこれに従うことを期待される行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保健医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして、いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから、保健医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保健医療機関の指定に及ぼす効果および病院経営における保健医療機関の指定の持つ意義を合わせ考えると、この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たると解するのが相当である。」
 このように上記の2005年判決は、行政機関の行う行為そのものの法的拘束力に限らず、事実上の効果がおよぼす影響を考慮して「処分性」を認めている。法廷ではここまで述べていないが、書面ではこういう判決文を引用して批判しているのである。

 原告側・武内弁護士の論理は、特定行政庁=東京都・小池都知事が法18条25項に基づき、国又は都道府県等が所有又は管理する建築物について当該建築物を管理する国の機関等の長等に、当該建築物が建築基準法令に違反する旨を通知し、法9条1項に掲げる必要な措置をとるべきことを要請した場合は、それを受けた国等の機関は、建築行政の主体としての地位にある機関として、「要請された必要な措置」をとらずに放置することは社会通念上許されず、当該措置をとることが確実に期待できる。従って、豊洲市場水産仲卸売場棟を使用禁止にする要請をすべきとの判決を求めるということである。
首都圏における震度6強を超える地震発生の確率は30年以内に70%以上と予想されている。本件建築物の建築基準法令違反性が耐震性にかかわる重要事項であり、大規模地震による倒壊の危険をはらむものであるから、最低限の措置として 一刻も早く使用禁止の措置をとる必要性があるというのが「即時抗告の結論」であり、本訴訟においてもこのことが争われている。

 法廷では被告(東京都)側代理人が資料をパラパラとめくり点検していたふりをしていたが、この資料は「2015年版建築物の構造関係技術基準解説書」(以下「技術基準解説書」と表現)の現物とコピーである。武内弁護士はコピーを証拠として提出し、原本を法廷で回覧させたのである。

(つづく)

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