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2018年11月15日 11:37

シリーズ・地球は何処に向かう、日本人はどうなる(3)~貴方は両親を天国へ送り出す覚悟があるか!!

葬儀代も踏み倒す息子

 ある葬儀会社での話。「平均して月に2回は葬儀代を踏み倒されます」という愕然とするような話を聞いた。いまや霊を敬うための葬儀もせずに直葬をする時代である。たかだか20万円ぐらいの金額だが、これを払わないというのだ。いまや子どもは親を成仏させるという使命を蔑ろにする時代になったのである。日本では人間社会における家族という小単位の組織が崩壊してしまっている。この葬儀場では対策として葬儀代を前払いでもらうことにした。

 葬儀代を踏み倒されるケースは共通している。残った両親どちらかの葬儀の時である。1人の息子が同居している。長年、転職を繰り返してきたこの息子は40歳を過ぎて両親と同居するようになった。住まいは賃貸アパートで両親の年金に頼った怠惰な生活を送る。当然両親とも亡くなれば年金収入も途絶える。

 葬儀場が代金を請求し、1カ月過ぎても入金がないので、担当者が自宅に行くともぬけの殻になっているというのだ。

両親の最期を見届ける、壮絶な戦いを貫いた男

 隆(仮名)は今年、50歳。福岡市で生まれ育った。24歳で結婚して娘1人の父親となった。幸せな家庭を築くはずだったが数年後、妻と折り合いがつかずに離婚。失意のうちに福岡を出て転職のために関西に移住した。

 30代の10年間は関西で必死に働いていたが、年に1回は帰省するようにしていた。しかし、年を追うごとに両親の衰えが目立ってくるようになり、隆は両親の老後に不安を感じるようになってきた。とくに父親は68歳の時にうつ病になり、その後認知症の症状が出るようになり、時には、母に暴力をふるうようになった。

 隆はやむを得ず、父を病院に入院させた。隆が振り返る。「父を介護する母の献身にはただただ感服するしかない」母は福岡都市圏で育ち、厳しいしつけを受けた人だった。加えて父には2歳年上の姉がいた。彼女も一人暮らしをしており、若いうちから認知症を発症し、日常生活に支障をきたしていた。隆の母は、この義理の姉の面倒も引き受けていたのである。誰もが義理の姉まで介護するという行為には頭が下がるだろう。

疲れ果てた母親

 帰福するたびに母親の疲労困憊した姿を見ながら、隆は40歳のとき「これは俺が福岡に戻って両親の介護をしなければ」と覚悟を決めた。仕事の合間に介護の勉強・技術習得も行った。隆が42歳になった時、母親が癌であることが判明した。隆は「母が癌になった原因は長年、父親と義理の姉を介護してきた疲労の蓄積によるものだろう」と思った。

 ここで決断した。「福岡に戻って両親の最期を見届けるのが息子の使命だ」と関西から引き揚げてきたのだ。ここから隆の両親の看病という名の壮絶な戦いが始まった。両親だけではない。伯母の面倒も見なければならない。3人の世話を1人で引き受けるのである。まずは母親と3年間向き合う時間が始まった。母は潔癖症で亡くなる直前まで自分の下着は自分で洗っていた。

 母と3年間向き合う中で「父に対する10年間のサポートがいかに大変だったか、精神的な重圧が蓄積していったか」を知った。「神様!母を救ってください!」と叫んだこともあった。やがて癌が進行し、末期を迎えた。「隆、私はもう駄目かもしれない」と母は語った。1時間半、親子で語り合った。隆は父親に対する母の妻としての献身ぶりを知り、母親を改めて尊敬したという。

 それから4時間後、母は息を引き取った。隆は母親に向かって「いたらない息子でごめん!!」と呟いた。母は74歳で永眠した。10年間、夫の介護に終始した最期だった。

父から初めて褒められた

 「母の死は親父にとってショックな出来事でした」と隆は父親の心理を説明してくれた。父は車椅子で葬儀に参加した。認知症が進行していた父は言葉も不自由になり、悲しみの気持ちを表現することができなかった。隆には父が落胆していると理解していた。

 母の死を境に父は目に見えて衰弱していった。父は厳格な一面をもっていた。隆は物心ついたころから父に褒められた記憶が無かった。しかし今年4月、父のベッドに付き添っていた時、父が「隆!!本当に世話になった。おかげで楽にあの世に行ける。お前はすばらしい息子だ」と褒めてくれたそうだ。「父が初めて俺の存在を認めてくれた」と隆の目に熱い涙が込み上げてきたという。その5カ月後の9月、父は83歳の生涯に幕を閉じた。

 隆は、まだ介護から解放されたわけではない。伯母の面倒を見るという仕事が残っている。「40歳まで、両親に心配ばかりかけてきた。40代の約10年間、両親に寄り沿うことで、少しは親孝行ができたと思う。50歳からは第二の人生を切り拓くことに頭を切り替えていきたい」と隆は語る。あなたは介護が必要になった両親に隆のような献身的な振る舞いをする覚悟があるだろうか!!

 隆の家族に見られるような日本的夫婦愛や子が父に尽くすといった、これまでの家族のあり方は、残念ながら今後、失われていくだろう。

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