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2018年11月19日 16:30

シリーズ・地球は何処に向かう、日本人はどうなる(4)~中小企業のM&A事情(前)

 2人に1人が癌になる時代。「A社長が1週間後、胃がんの手術をする」というニュースや「Bさんが大腸がんで亡くなった」という訃報などを相次いで耳にする。それと同様に数多くのM&A情報が飛び交う。「C社が○○に買収された」とか、「D社長がついに会社売却を決断した」などだ。
 弊社にもM&A会社から「一度、話を聞いていただきたい」という趣旨の案内書が送ってくる。友人の会社にも同様の案内がきていた。中小企業の経営者たちがM&Aについてどう考えているかをレポートする。

会社を売却した経営者2例

 最近、会社を売却した友人たちを紹介する。まずは5年前に大病を患った田村(仮名)の例。彼には子どもがいない。75歳を目前にして事業継承を真剣に検討した。社長候補に「甥」「生え抜き社員」「元大手会社に勤めていた人材」をリストアップしたものの、考えれば考えるほど不安になり、結果、会社の売却を決めたという。田村の会社の技術を高く評価した上場会社が買ってくれた。

 このお金で「妻と世界一周でもしよう」というハッピーな老後を思い描くのが普通だろう。しかし、田村はこれまで若い政治家をサポートしてきたので、会社を売却した資金を元手に地域政党を主宰するプログラムを練っている。来年の参議院選挙には間に合わないが、次期総選挙までには若手の政治家を立候補させると公言している。

 久保田(仮名)の例。久保田はビルメンテナンス事業を手堅く行ってきた。子どもたちはそれぞれ好きな道に進んでおり、事業継承の可能性はない。

 久保田の会社は最近、人手不足に頭を痛めてきた。仕事を増やすチャンスはあるのだが、人材確保が困難なので経営意欲が萎えてきた。それ以上に、この事業自身に魅力を感じなくなっていたのである。そういう心変わりのなかで「福岡へ進出したい」という野望に燃えている同業者と面談する機会を得た。M&A会社の段取りである。久保田は即座に決断し1.5億円を手にした。

 久保田は多趣味な男で、奥さんもプロ顔負けの写真家だ。「奥さんのアシスタントになって撮影三昧の旅行をするのかな」と思っていたが、彼は別の事業プランを練っていた。「法人向けの保育園事業の立ち上げ」だ。彼はその構想を具体化するために奔走している。社会貢献ビジネスに携わる使命感に燃えているのだ。やはり、ただものではなかった。ちなみに普段、久保田は温厚な男だが、車の運転をすると人が変わったようになり「抜け抜け!!」と猛スピードを出すという一面がある。

 これらは次のステップアップのための事業売却を実行した例だ。しかし、普通は売却して得た資金で老後の生活を楽しむことを選択するものだ。

無知の勘違い

 無借金で内部留保自己資本2億円を貯めた赤間(仮名)は70台半ばになり自社売却の道を選択した。(1)身内で事業継承をする該当者がいない(2)従業員の大半が60歳を超えているので事業存続が難しい、と判断したからである。売却価格は2.5億円と試算した。不動産の含み益をカウントした結果だ。当たってみたところ何処も一応は不動産に魅力を惹かれて交渉にはなる。だが市場性を鑑みて商談から降りるという。

 周囲の人間は赤間に「2億5千万円で売るのはもったいない。事業だけ売却して不動産は資産会社として運営するのが賢明だ」と耳打ちした。心変わりした彼は「事業だけ売ってくれ」と打診した。しかし、コンサル側は「60歳以上の従業員が大半の組織にまったく魅力を感じない」と断ったという。

 樋口(仮名)は3代目である。女性社員を抜擢するなど、思いつくままに改革を試みるが、ことごとく失敗に終わる。樋口は改革の意欲を失ってしまった。そうこうするうちに、やり手社員たちが独立を図っていく。残りの二軍、三軍クラスの社員たちは指示待ち症候群である。トップである社長の明確な方針があれば動いてくれるが、自主的に会社の改革を行ってくれる可能性は少ない。ここは樋口の決断、断行あるのみ。

 出入り業者も「社長がしっかり方針を語ってくれれば、こちらも安心できるが、本音が聞けずに不安だ」と本音を語る。樋口自身も先行きを楽観視しているわけではない。ただ「内部留保があるので、まだ時間がある」とタカを括っているように見える。やはり体を張って事業を発展させてきた創業者たちと比較すると「甘ちゃん」に過ぎない。気の毒だが、最終的には経営を投げだす確率が高いとみる。

(つづく)

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