2024年04月19日( 金 )

ユニクロとニトリが取り組むロボット倉庫は物流に大変革をもたらすのか(前)

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 人手不足は物流現場でも深刻だ。救世主となるのがロボット倉庫。ここでは先進的な取り組みをしている、ユニクロの(株)ファーストリテイリングと(株)ニトリホールディングスの例を取り上げることで、物流革命が進展中の業界におけるロボット倉庫の今後の展開の在り方を考察したい。

ファーストリテイリング・ロボット倉庫~入庫から出荷まで

 ユニクロの(株)ファーストリテイリングは、物流システム・マテハン機器の世界トップメーカーの(株)ダイフクと組んで、物流倉庫の自動化に取り組み、半年間のテスト期間を経て、10月からe-コマース(EC)向けの有明倉庫がフル稼働を開始した。24時間稼働で省人化率90%、自動検品率100%を実現、従来はオーダーから出荷まで8~16時間かかっていたが一気に15~60分に短縮した。入庫生産性は80倍、出庫生産性19倍、保管効率3倍と大幅に効率化された。商品の入庫から出荷までの全体の流れはこうだ。

 入庫:海外の工場で商品にID情報を埋め込んだRFIDタグが装着され、折り畳み式コンテナボックスに収納し、船舶で日本に搬送、入管手続きを終えると、そのままトラックに積まれ、倉庫1階の荷さばき場に到着する。自動検品機でRFIDタグを読み取り、自動入庫荷降ろし機が、商品の入ったボックスをベルトコンベアに載せ3階の保管庫に商品を運び、入庫作業が終了し商品が保管される。

 出荷:注文に応じて、クレーンが商品を棚から取り出し、2階のクイックピックステーションへ運ばれ、作業員が出荷指示書とタッチパネルで確認しながら商品を段ボール箱に入れる。人手がかかるのはここだけだ。段ボール箱は、1階で自動封函機により梱包、箱に貼られたバーコードを読み取り、ソーターで自動的に方面別に仕分けされ、トラックに積まれて出荷が完了する。

 人力によっていた段ボール箱の組み立てや使用済みのコンテナの折り畳みなども自動化された。ピッキング作業についても自動化に向けた研究開発を行っており、将来的に完全な自動化と無人化を実現させる計画で、全倉庫を自動化する予定だ。

ロボット倉庫化で国内外の物流革命を進める

 ファーストリテイリングは、2016年4月に竣工した有明物流センターを皮切りに、国内では約10カ所の物流センターを稼動させ、物流の仕組みを自社でコントロールする体制を整備し、海外でも物流改革を進めていこうとしている。

 目指すのは「情報製造小売」、リアル(店舗)とバーチャル(EC)を融合させ、情報技術(IT)や人工知能(AI)といった最新テクノロジーを活用し、「情報」を軸に、生産から物流、販売までのサプライチェーンの仕組みを変えていこうとしている。

 そのために、取引先工場との連携によるフレキシブルな生産体制の実現、スピーディーで効率的な物流体制の構築、デジタルマーケティングの活用による顧客とのダイレクトなコミュニ ケーションの仕組み、 EC事業でのサービスの拡充、これらの新しい仕組みを支えるシステムの刷新などのプロジェクトを進めている。

 そこで重要となるのが取引先の協力で、縫製工場、物流会社なども、同じ方向で明確な目標に向かって改革を進め、未来のテクノロジーを積極的に取り入れ、投資、人材、時間を惜しまず注力し、製造小売(SPA)から情報製造小売(ISPA)に進化し、20年度に売上高3兆円営業利益率15%の実現を目指そうとしている。

(つづく)
【西川 立一】

(後)

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