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2018年12月15日 07:00

石油から水へ 今こそ『水力(ウォーター・パワー)』を味方につける(2)

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

水ビジネス、世界で繰り広げられる企業買収劇

 すでにアメリカはもとより、アジア各国でも人間の生存に欠かせない水をめぐる争奪戦が激化する一方となっている。先日94歳で亡くなったアメリカのブッシュ元大統領の一族も、世界最大の帯水層(ボリビア、ブラジル、パラグアイ)を購入し、水男爵の仲間入りをはたしていた。

 ウォール・ストリートの金融機関や投資ファンドは、こぞって水資源や水道事業を買い漁っている。ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、クレディ・スイス、カーライル・グループなどがその代表格であり、すでに2,500億ドルの資金が投じられている。ダウ・ケミカルのリバリス前社長曰く「水は21世紀の石油だ」。食料不足やエネルギー危機も深刻さを増しているが、水問題ははるかに影響度が大きいのである。ゴールドマン・サックスの予測では「水ビジネスの規模は4,250億ドル」。

 そのため、世界各地で水関連企業の買収劇が頻繁に繰り広げられるようになってきた。たとえば、ゴールドマン・サックスはフランス最大手の水企業ヴェオリアを12年に買収。ブラックストーン・グループはフランスの水企業スエズから水処理の大手オンデオ・ナルコを吸収合併。03年のビッグニュースであった。

 アジアでも水企業の買収劇は活発化している。水の汚染で危機的状況に直面しているのは中国である。逆に見れば、水問題は大きなビジネスチャンスになり得る。そこに注目したゴールドマン・サックスは中国の水企業チャイナ・ウォーター・アンド・ドリンクスを傘下に収めるべく株の買い占めに走っている。

 こうした外資が今、虎視眈々と狙っているのが日本の水市場である。上水道の事業が民間に開放されることになれば、水道料金の設定は思うがまま。フィリピン、ベトナム、中国などアジア各国では外資系企業による水道事業や水ビジネスでの参入が相次いでいる。その結果、各地で水道料金の値上げが起こり、大きな社会問題となってきた。同じような事態が日本でも発生しないとは限らない。残念ながら、日本の国会での改正水道法の審議過程を見る限り、世界で激化する水争奪戦に対する関心も分析も皆無であった。

日本が抱える3つの水問題

 我が国が直面する現下の水問題としては、次の3点が挙げられる。第一に、水に関しては、世界に冠たる技術大国であるにもかかわらず、国際競争力がまったくないこと。第二に、食糧自給率の低下と相まって、海外からの食糧輸入が増え、結果的にバーチャル・ウォーター(間接水)を大量に輸入していること。第三に、急成長を遂げる中国における水の不足と汚染が日本に悪影響をおよぼしていることである。日中間の尖閣諸島問題も水を始めとする資源争奪戦の前哨戦という側面も否定できない。

 日本は水資源の豊富な国で、これまで政府も国民も水問題についてあまり深刻に考えてこなかった。その必要がなかったのである。実にラッキーであったといえよう。しかし、世界的な水不足が顕在化してきた今日、水問題に対して他人事のように振る舞うことは、もうできない。世界に目を向ければ、10億人以上が安全な水が手に入らない日常生活を余儀なくされているからだ。

 さらには、トイレなど排水処理が適切な衛生状態にない地域の住民は26億人に達する。とすれば、日本は世界的課題となっている水問題にどう向き合い、どのように解決への道筋を見出すべきであろうか。ピンチをチャンスに変えるには、どのような方策が考えられるのか。今こそ、水と真正面から向き合うときである。眠れる国会を覚醒するには、冷水をかぶるくらいの荒療治が必要と思われる。

(つづく)

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