2024年04月25日( 木 )

ふくおかFGと西日本FHの実力度を検証する(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 2018年8月、公正取引委員会は(株)ふくおかフィナンシャルグループ(ふくおかFG)と(株)十八銀行の経営統合を他行へ債権譲渡することなどを条件に承認した。このことで九州地銀の経営統合が本格化することが予想されるが、ふくおかFGと(株)西日本フィナンシャルホールディングスがその中核となるであろう。本稿では福岡市に本店を構えるこの2つの金融持株会社の実力を検証したい。

ふくおかFGと十八銀行の経営統合を承認

 2016年2月26日、(株)ふくおかフィナンシャルグループ(以下、ふくおかFG)と(株)十八銀行が経営統合することで基本合意したと発表。しかも今まで長年にわたり長崎県内でライバル関係にあった十八銀行と親和銀行が18年4月1日に合併予定と発表、県内の預貸金シェアが70%を超える銀行の誕生は九州の地銀だけではなく、全国の地銀に大きな衝撃を与えた。

 申請を受けて公正取引委員会は独占禁止法に基づき審査を開始。16年5月に長崎県内の企業約3,000社を対象に調査を実施。結果は「借りる先がほかになくなる」との回答が多く寄せられ、公取委は、『統合により長崎県内の貸出シェアの約7割を超える寡占行が生まれることで、貸出先の選択肢がなくなる可能性がある』と問題視した。このように、公取委の審査が難航していることから、ふくおかFGと十八銀行は経営統合することを2度延期していた。

 変化があったのは18年5月7日、ふくおかFGと十八銀行は再び経営統合に前向きな姿勢を示し、「長崎県経済の活性化に貢献する経営統合の実現に向けて」を発表。

 また、金融庁による「日銀のマイナス金利政策の影響を受けて、地銀は経営統合しないと生きていけない」「このままではリーマン・ショックのような金融危機が再来したとき、地域経済は壊滅的な打撃を受ける」との後押しする発言が追い風となった。

 それを受けて18年8月24日、公取委はふくおかFGと十八銀行が他行に1,000億円の貸出金を債権譲渡することで、シェアが約75%から約65%に下がり「競争が制限されない」と判断。ふくおかFGと十八銀行が「19年4月に経営統合する」こと、また「20年4月に十八銀行と親和銀行が合併」することを承認したのだ。

 公取委が寡占的なこの経営統合を承認した裏には、この案件を未承認のまましておくと、金融機関の経営統合は前に進まない。もし万一、金融機関が破綻するようなことになれば、責任をすべてかぶることになる。餅屋は餅屋に任せたほうが良いとの深慮があったものと推測される。

 この承認によって、九州地銀の経営統合は本格化していくことが予想され、その核となるのはふくおかFGと(株)西日本フィナンシャルホールディングス(以下、西日本FH)となると思われる。福岡市に本店を構えるこの2つの金融持株会社の実力を検証していくことにしたい。

ふくおかFGと西日本FHの収益について  

(1)18年9月期(中間期)の収益実績比較表 【表1】

※クリックで拡大

~経常収益について~
 企業の売上高に当たるふくおかFGの18年9月期の連結経常収益は、前年比▲14億3,400万円の1,207億円4,300万円(▲1.2%)。来年4月に経営統合を予定している十八銀行を加えると、前年比+6億200万円の1,468億400万円。一方、西日本FHは前年比▲12億7,300万円の709億4,200万円(▲1.8%)で、十八銀行+ふくおかFGのほぼ半分で、日銀のマイナス金利政策の影響は大きく、福岡銀行、十八銀行を除き4行の経常収益は前年比マイナスとなっている。
 西日本シティ銀行の収益が前年に比べ大きく減少しているのは、保有していた西日本FH(親会社)株式を同社に売却したことにともなう売却益137億1,800万円計上したことによるが、それを差し引いても減収となっており、福岡銀行の強さが目に付く。

~経常利益について~
 ふくおかFGは前年比▲11億7,300万円の389億9,200万円。福岡銀行は前年比+54億8,600万円の372億円7,100万円(17.3%増)と大きく増加しているものの、熊本銀行は前年比▲19億8,800万円の14億6,100万円(▲57.6%)、親和銀行は前年比▲22億6,800万円の42億6,400万円(▲34.7%)と大きく減少。また十八銀行も前年比▲13億300万円の31億500万円(▲29.6%)となっており、厳しい状況にあるのがわかる。
 西日本FHも前年比▲5億3,500万円の188億1,600万円(▲2.8%)。西日本シティ銀行は前年比▲141億8,300万円(▲46.9%)と減収となっているものの、前年の特殊事情(親会社への株式売却137億1,800万円)を考慮すれば若干の減収。長崎銀行は前年比▲3億3,400万円の1億2,200万円(▲73.2%)と大きく減益となっており、厳しい状況となっている。

(つづく)

【(株)データ・マックス顧問 浜崎 裕治】

(後)

関連記事