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2019年01月29日 12:15

シリーズ・地球は何処に向かう、日本人はどうなる(12)~『現世・極楽往生の経営』とは~進興設備工業(福岡市南区)

福岡地区は建設受注環境が恵まれすぎてこの3年間、ゼネコンだけではなく、どの建設関連企業も莫大な蓄財に励むことができた。筆者は名付けて『別次元への成長企業』と命名した。ところが『別次元成長』を超える企業も存在する。『現生・極楽往生の経営企業』と呼ばれる企業だ。その企業は福岡市南区にある進興設備工業である。同社は今から売上ゼロの状態になっても現預金・有価証券処理で5年分の人件費を支払うことができるのである。

20年先まで読める経営

 同社については幾度となくレポートしてきた。今回は社員たちの観点から『現世・極楽往生の経営』を論じてみたい。財務内容においては「無借金・自己資本率75%」という傑出した指数を指摘してきた。ここに至るまでの原動力は『朝を制する』ことにあった。

 同社の中興の祖は舩津政隆氏である。筆者が早朝(午前5時から午前5時半の間)に電話する相手が4名いた。その1人が舩津氏だった。

大野史朗社長

 4代目の現社長・大野史朗氏から面白い話を聞いた。会社と完全に縁を切った舩津氏の動向である。非常勤になった際、福岡市西区にあった自宅の町内会活動に専念したそうである。そして現在、全国各地に購入したマンションを渡り歩いて人生をエンジョイしているとか。鬼気迫る顔つきで仕事に向き合う、まさに「仕事の鬼」の姿しか知らない筆者は、「仕事の鬼の舩チャンが遊びに夢中になっているとは?」と想像するだけでも楽しい。

 進興設備工業は1959年3月に設立。今年で60年を迎える。会社を起こしたのは的野傳氏。舩津氏の後に3代目社長に就いたのは的野敢氏である。しかし、舩津氏は決して創業家一族に大政奉還したわけではない。
13年4月、4代目社長に大野史郎氏が就任している。同氏は創業家一族ではなく同社の生え抜き社員である。このことからわかるように同社は一族経営の会社ではない。舩津社長の時点で、社内の優秀な人材にバトンタッチすることを決定したようである。

 もう1点は同社の株価が異常に高いことである。一族で株を相続すると、とんでもない相続税の支払いが生じる。そこで自己株式37.8%、他社員株を増やして社長・大野氏の持ち株は9.0%、役員も8%前後を所有している。誰がいつ取締役を辞めても株譲渡の際に発生する税の節税対策が練られているのである。そういった背景があるので、社内から優秀な社員を抜擢しても無理なく社長継承が可能なのだ。

 大野社長は現在、67歳である。本人曰く、「私はあと3年、70歳まで社長をやります。その後は会長職で次期社長の采配を見届ける意向です。今後の社長候補は40代の生え抜きです。十分に社長職を担えますよ。10年前から本人には申し渡していますから意識が全然違います。よほどの天変地異でもない限り、向こう20年の弊社の将来は読めます」と断言する。

 大企業でも20年先を「生きていられる」と確約できない不透明・大動乱の時代に中小企業である同社が20年先を読めるとは羨ましい限りである。

バランスに長けた戦略

 進興設備工業が20年先を見据えることができる第一の要因として「一族経営を捨てたことで、誰でも社長になれる可能性を与えた」というのは前述した通りである。第二の要因として何事にもバランス感覚に優れていることが挙げられる。受注面では最近、上村建設の受注が増えているが、1社受注先ウエイトは30%以内に抑えている。そして最大の強みは自社施工に注力できる20名を超える現場の人員を擁していることだ。

 「設備業者の利益は現場にあり、技術力にあり」という原点を貫きつつ、人員の年齢バランスが良い。10代3名、20代5名、30代5名、40代5名、50代3名の計21名である。多くの同業者が人材不足に頭を悩ませているなかで同社は各世代、バランスの良い人員体制を構築。技術継承においても、内部昇格の仕組みが整えられている。

社員の平均年収610万円

 18年2月期を検証してみよう。取締役5名含めて43名。人件費総額2億8,722万2,000円なので、1人あたりの年収は668万円に達する。役員報酬総額から引いた社員・従業員の年収平均が615万円となる。恐らく業界の方々はこの数字を見て「うちではとてもできない、さすが進興設備工業さんだ」と感服するだろう。

 この年収の構成比率をもう少し掘り下げると技術資格をもっている主任の場合、給与総額は7,892万7,000円、ボーナス4,791万1,000円だから年間ボーナスは7.2ケ月分となる。内勤者は給料3,785万1,000円、ボーナス1,341万7,000円で年間ボーナスは4.3ケ月分となっている。やはり現場技術者たちに対して、手厚い待遇を行っている。現場物件ごとの収益評価が徹底しているからだろう。

 数字的な驚きを付け加える。支払われる総人件費は2億8,722万2,000円である。現預金8億3,105万円、販売目的有価証券が簿価で2億8,048万3,000円あるので、合わせると11億円を超える。何もしなくて収入ゼロでも4年間は人件費が払えるのである。保険積立金を加えると5年間も払い続けられるのだ。誰1人首にしなくても人件費の支払いが可能なのだ。羨ましいものだ。

水回りのコンサルタントに挑戦

 納得できる評価査定であれば、現場担当者たちが利益捻出のために必死になるのは当然である。これが『現世・極楽往生の経営の基本』といえる。そしておそらく19年2月期の決算ではマンション組合からのリニューアル受注が45%を占める見通しである。この10年以上追い求めていた『直需受注50%』戦略の達成に後一歩まで近づいたのである。

 大野社長は最後に「改装工事は必ず生活者と向き合う必要があります。ゼネコンさんを通じた仕事は所詮、設備技術員として受け身に終始することが許されます。しかし、リニューアル工事においては弊社の担当者が最終決断をし、責任を負うことを迫られます。いうなれば水回りのコンサル能力が問われるのです。リニューアル工事は弊社の技術者たちに質的転換、成長を求めるための修練の場として位置付けています」と語った。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:大野 史朗
所在地:福岡市南区玉川町4-2
設 立:1959年3月
資本金:5,000万円
TEL:092-551-6883
URL:http://www.shinkoh-s.com

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