2024年03月29日( 金 )

同じ成功体験を続けない 進化を続けるホスピタリティ(中)

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カトープレジャーグループ 代表取締役兼CEO 加藤 友康 氏

同じものをつくらない

 ―今後の展開としては、どのようなものを計画されていますか。
 加藤 今後は、不動産大手のヒューリック(株)とともに「ふふ」シリーズを幅広いブランドとして確立していきます。このシリーズは、“同じものをつくらない”という特長があります。世界に通用するクリエイターを起用し、“地の持つ力”をしっかりと生かした新しいデザインとホスピタリティの提供によってつくり上げていきます。昨年10月1日に、富士山を望む河口湖の森に第2弾となる「ふふ 河口湖」が、「境界のない森のリゾート」としてオープンいたしました。

 日本のローカルリゾートは、これまで“1泊2日型リゾート”としてのオペレーションが主流でした。しかし、同じアジアでも日本以外の外国の方は、3泊から1週間の滞在をされる方が非常に多いのです。そのニーズに応えることが「ふふ」シリーズのインバウンド富裕層向けのテーマでもあります。

 20年以降では、「熱海 ふふ」にもう1棟増床するかたちで「木の間の月」というブランドが開業します。また、奈良県との提携で奈良公園に「奈良 ふふ」が開業します。こちらは「奈良の歴史と美しき庭園」をコンセプトに、建築は、私どもの設計事務所(株)TKN・ARCHITECTが主体となり、隈研吾先生と一緒に奈良の地元企業の素材を採用し、庭園に融合した和建築をつくり上げます。同時期には、「初めてひらかれた聖地」というコンセプトで、日光の東武鉄道さまの敷地にある皇室の御用邸跡地を開発する「日光 ふふ」が開業します。そして、決まっているところでは「京都 ふふ」「強羅 ふふ」があります。

 ―富裕層のさまざまなニーズに対応しているのですね。
 加藤 私どもの富裕層向け施設としては、「ふふ」シリーズ以外で、熱海に「GLAMDAY VILLA UMITO MORITO KAZE 海森風」があります。これは、ワンゲストのために、2,500坪の敷地のなかにつくり上げた完全なプライバシーを約束する「究極のバケーションレンタル」の施設です。

 また、すでに土地を取得していますが、「ØSTRESIDENCE」(オストレジデンス)計画を進めています。これまでの日本の別荘地では、土地ごとに開発を行うため、たとえばヨーロピアンの別荘の隣にログハウス、和建築などの別荘があるなど、エリアとして統一されていないことがありましたが、セカンドハウスのエリア全体をしっかりとデザインコントロールしていくというものです。価格的には、富裕層向けにセカンドハウスのなかでも高価なものになりますが、我々のホテルが近くにありますので、ホスピタリティ面で付加価値をつくっていきたいと考えております。

 ―利用客における日本人と外国人の割合は?
 加藤 稼働率85%以上をキープしていくことが前提ですが、外国のお客さまは全体の10~15%となっており、中長期的に考えるとその割合をどれだけ高めていけるかが大きなテーマだと思います。

 ―日本の富裕層が増えているということですか。
 加藤 むしろ富裕層を受け入れることができる施設のほうが少なかったと考えています。インバウンドのお客さまについては、ローカルエリアにおいて富裕層を受け入れる宿泊施設がないと言われています。スイートルームで、セキュリティがしっかりできるところが何部屋あるのか。そのようななかで、私どもがやっていることは、『選択肢を増やす』ということだと思います。もちろん、「日本の旅館にきたら布団で寝たい」という方もいらっしゃいます。我々のライフスタイルの提案がすべてではありません。

(つづく)
【文・構成:山下 康太】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:加藤 友康
所在地:東京都千代田区大手町2-6-2(東京本社)
設 立:1962年4月
総資本金:1億7,150万円
総売上高:約240億円(サービス業のみ)

<プロフィール>
加藤 友康(かとう・ともやす)

1965年、大阪府出身。ホテル、フードサービス、スパ、ラグジュアリーリゾート、公共リゾート、エンタテインメントなどあらゆるレジャー事業開発を行うプロデュース企業の代表取締役兼CEOを務める。大学在学中より父親である創業者・加藤精一氏の事業に携わり、以来多角的な視点からレジャー事業の総合的なプロデュースを手がける。グループ内には、多種多様な事業を展開するプロデュースチームが存在し、クライアントや投資家の方からのさまざまなご要望に対して、立地やニーズに合わせ変幻自在な業態開発を創出している。主な著書に、「経営者が欲しい、本当の人材」「世界一楽しい仕事をしよう!KPG METHOD」(ワニブックス)がある。


 

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