2024年03月29日( 金 )

竹中平蔵教授を批判した東洋大学の学生に「退学勧告?」~遅すぎる大学側の回答

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 東洋大学に通う学生(4年生)が今年1月21日、白山キャンパスで教壇に立つ竹中平蔵教授の授業に反対し、立て看板を設置し、学生に向けてビラを配った。しかし、わずか10分あまりで大学職員らが当該学生を取り囲み、ビラ配りを中止させ、立て看板を撤去した。
 当該学生はその後、およそ2時間半にもわたって取り調べを受け、大学側から「退学勧告」されたと主張。SNSを通じてネット上で拡散され、大きな波紋を呼んでいた。


なぜ今頃になって~遅すぎる大学側の回答

データ・マックス社は1月23日、大学側に対し、本件についての取材依頼を行った。主な内容は、

(1)当該学生が竹中平蔵氏を批判するビラを撒き、立て看板を立てたところ、あえなく撤去され、大学当局により2時間半にわたり取り調べを受けた点
(2)その際、学生部の人間から「退学勧告」を受けたと主張している点
(3)上記(1)(2)が事実なら、大学側はどういった根拠に基づき、船橋さんに「退学勧告」を下したのか
(4)上記(1)(2)が事実であるとするならば、大学側の(3)の対応は、日本国憲法第21条に定められている「言論の自由」「表現の自由」に反するものではないのか
(5)「退学勧告」については、船橋さん自身の人権を侵害する行為ではないのか

 これに対する大学側の回答は、同大学のHP上で同日の夕方ごろに公開された。主な部分を抜粋すると、大学側は「学生に配付し周知している『学生生活ハンドブック』に禁止行為として記されており、立看板の撤去とビラ配布を止めるよう当該学生に対し指導した」「事実確認と禁止行為に関する説明を行いましたが、当該学生に対する退学処分の事実はなく、所属学部では退学としないことを確認している」としている。

 当該学生が退学処分を受けていないという(2)についての事実確認はできたが、そのほかの質問内容についてはまったく答えになっておらず、再度大学側に回答を求めたが、正式な回答がきたのは2月5日。依頼してから12日後のことで、あまりにも遅すぎる大学側の対応に、やや不誠実さを感じざるを得なかった。

当社質問に対する大学側の回答

※クリックで拡大

 東洋大学側は、当社が行った質問に対し、以下のように回答している【右・参考資料】。
(1)については、禁止事項である点を指摘したうえで、当該学生が自主的に立て看板の撤去を行ったものとし、その後出入り自由な事務室内で事実確認などの話し合いを行ったとしている。(2)についてはあくまでも「退学の勧告はしていない」とし、禁止行為を行うと場合によっては処分となることを説明したとしている。(3)については、そもそも退学勧告を行っていないとし、(4)(5)については具体的な回答を得ることはできなかった。

 当社は改めて電話による取材を行い、その回答を基に広報担当者に事実確認を行った。

――当該学生は、「竹中平蔵氏を批判するビラを撒き、立て看板を立てたところ、あえなく撤去され、大学当局により2 時間半にわたり取り調べを受け、退学勧告を受けたと主張しているが、間違いないのか?
担当者 当該学生がビラを撒き、立て看板を立てたのは事実。その後、取り調べではなく、オープンなスペースで数名の職員が、当該学生から状況確認で話を聞いた。結果的に2時間半になったと聞いている。

――「取り調べではない」とおっしゃるが、大学側は何を行ったのか。
担当者 なぜ、立て看板やビラ撒きを許可なく行ったのかの「状況確認」だ。

――立て看板は当該学生が自主的に撤去したのか。
担当者 「許可なく立て看板やビラ撒きは禁止です」と伝えたところ「わかりました」と言って(当該学生自ら)撤去したと聞いている。

――写真に写っている学生は当該学生で間違いないのか?一部報道では立て看板の傍で右肩に鞄を下げている方が見えるが。
担当者 本人が自主的に撤去したと聞いているが、(右肩に鞄を下げている方が)本人かどうかは、事実確認が必要。

――「立て看板を立てる」「ビラを配る」は禁止事項なのか?
担当者 原則申し出がない場合、禁止事項。本学のHPで今回の件についての声明文を載せているが、学生ハンドブックに、学内での活動に対する約束事項などを記載している。そのなかで立て看板の立て方やビラの配布について述べているが、立て看板もビラ配りも原則禁止で、行う場合は事前に申告が必要。サークルの勧誘活動やイベント開催時なども同様で、こちら側がチェックして問題なければ許可している。当該学生はそれを知らなかったようで、事前の申請もしていなければ許可もしていなかった。

――「禁止行為を行うと場合によっては処分となる、処分のなかには重いものでは退学もある」と説明されたとのことだが、「退学もある」という表現を当該学生が「退学勧告を受けた」として重く受け止めているのではないのか。
担当者 (職員は)学生ハンドブックを示しながら当該学生に説明したと聞いている。個人の受け止め方の違いでそう取られたかもしれないが、行為そのものについて退学処分になるとは言っていない(断定的には言っていない)。そういう趣旨では言っていない。

――禁止行為と言っても程度によると思うが、今回の件に関してはビラを配っただけ、立て看板をたてただけのもので誰に危害を加えたというものではない。いきなり退学をちらつかせることについて、わざわざそこまでしなくともよいのではなかったのか。
担当者 それは・・・。その時の担当の言い方もあるとは思うが・・・。

――東京新聞は、「ある職員は担当が声を荒げて「大学のイメージを下げているんだぞ」「責任とれるのか」と声を荒げたと報じていますが、これは事実なのか?
担当者 声の大きい職員が説明して、声を荒げたと捉えられてしまった可能性もあるかもしれない。言った内容が本当なのかについては、確認しないと分からない。

――あくまでも当該学生が事前の届け出も説明もないことに対し、これらが禁止行為に当たるから注意したと。
担当者 そうだ。

――では今回の件、ビラや立て看板の内容は「竹中平蔵氏の批判めいた内容」ではあるものの、事前に届出していれば活動自体はOKだったのか?
担当者 状況にもよるが、本学としては基本的に個人の考え・価値観・意見を否定することはしていない。(今回の件は)届け出をしていれば大丈夫だったのではないかと思う。だからと言って反社会的な言動や個人に対する誹謗中傷を是認するものではないが、基本的には個人の考え、価値観を尊重するので、(きちんと届け出を行っていれば)そこまでならなかったと思う。

――届け出をしなければできないといけないことに、そもそもの制約を感じるが。
担当者 制約ではなく、学生自身に意見をもってもらい表現することを妨げるつもりはない。しかし無秩序にビラを配ったり、立て看板を立てたりすることは、大学の環境、校内の美化を妨げるし、場合によってはクレームが来ることもある。学生がさまざまな意見や考えをもっていることを踏まえて、「絶対ダメ」ではなく、無秩序にしないようにある程度コントロールするためのものと理解いただきたい。

――SNSによる今回の拡散は、大学側として事実と異なる部分があるのか。
担当者 「退学勧告」という表現に関してはこちらの認識と異なる。

【長谷川 大輔】

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