2024年04月24日( 水 )

豊洲市場の耐震偽装問題はレオパレス騒動の比ではない!(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

協同組合建築構造調査機構代表理事 仲盛 昭二氏へのインタビュー
(聞き手:伊藤鉄三郎)

-建築基準法違反といえば、東京都の豊洲市場も、建築基準法令違反の是正を求めて裁判になっています。レオパレス問題と共通する点はあるのでしょうか?

 現在、東京地裁で審理中の 豊洲市場の建築基準法違反の是正を求めている訴訟も、建築基準法違反という点ではレオパレス問題と同じといえます。
豊洲市場の場合、設計を担当した「日建設計」が建築基準法令に定められた構造計算方法を守らず、構造計算に必要な係数を偽装していました。

 レオパレスの施工不備は、火災が発生した際に延焼が拡がり人命に被害がおよぶ可能性があります。豊洲市場の場合、大地震が発生した場合に建物が倒壊する恐れがあり、市場関係者や来場者の生命に危険がおよびます。1棟の建物が火災に遭遇する確率と大地震に遭遇する確率はどちらが高いでしょうか? 一概にはいえませんが、「今後30年以内に首都圏で大地震が発生する確率は70%以上」と言われています。豊洲市場は30年以上操業するので、間違いなく大地震に遭遇します。

 現在、豊洲市場では床の大きなひび割れが問題となっています。地震が起きていないのに 大きなひび割れが発生しているのです。ターレ(市場内の運搬車両)の走行による疲労破壊と考えられ、本来は安全率に相当余裕をもった設計をしなければなりません。しかも、1階の柱脚(柱の根元部分)の鉄筋量が規定の50%しかないことを、裁判において東京都側の代理人が認めています。市場内を常時走り回るターレの重量にすら耐えられない建物を設計したのが日建設計だということです。

 この危険な状態を放置しているのが 豊洲市場の管理者であり管轄行政庁である東京都です。東京都は、日建設計とよほど深いつながりがあるのか、日建設計の不適切な設計(建築基準法令違反)に対して追求や是正を行うことをせず、ひたすら擁護に徹しています。

 今月6日、トルコ イスタンブールで8階建ての建物が 突然 崩壊し犠牲者が出ました。この建物は5階建ての建物の上に3階を違法に増築していました。豊洲市場の床のひび割れは崩壊の予兆かもしれず、日建設計による設計の偽装は、トルコの建物崩壊と同じ危険を孕んでいるともいえます。

-なぜ、豊洲市場の管理者であり管轄行政庁である東京都は、日建設計に対して 建築基準法令違反の是正を求めないのでしょうか?

 たとえば、念願のマイホームを建てたものの、その設計に不備があることが明らかであれば、是正や賠償を求めるはずです。黙って建築代金を支払うお人好しは1人もいないと思います。

 東京都は、「税金だから自分には関係ない」と思っているのか? 市場関係者や来場者の安全確保は必要ないと考えているのか? 日建設計に1億2,000万円もの設計料を支払っています。当然、この設計料支払いの財源は税金であり、都民に対する裏切りに他なりません。

-日建設計は、1,900名(グループでは2,600名以上)もの社員を擁する国内最大手の設計事務所であり、海外にも事業所を構えています。そのような日本を代表する設計事務所が不適切な設計をするとは考え難いのですが。

 私もそう信じたい気持をもっていました。しかし、豊洲市場水産仲卸売場棟の設計図書を見れば、構造計算の偽装は一目瞭然です。日建設計は早く偽装の事実を認め 法令違反を是正しなければ、日建設計が関与した全国の物件に偽装の疑いが拡がります。日建設計は 公共建築物を中心に数多くの物件の設計に関与しています。前述のトルコの建物崩壊のような例もあり、多くの国民の生命に関わる大問題ですので、レオパレス騒動よりも深刻な事態となるはずです。

-豊洲市場の裁判については、原告(仲卸業者)側が「裁判官忌避」を申し立てたと聞いていますが。

 豊洲市場の是正を求めている裁判では、仲卸業者側が市場建物の使用禁止を求めた仮の申立に対し、東京地裁・東京高裁は申立を却下しました。しかし、その後 最高裁への特別抗告が認められました。この後に行われた東京地裁における本訴の審理において、東京地裁の裁判長は、特別抗告の許可を知っていながら 審理に入らず結審し、判決言渡し日を決めようとしたため、原告(仲卸業者)側弁護士から「裁判官忌避」を申し立てられ、逃げ出すように法廷を去ったと聞いています。

-なぜ、東京地裁の裁判官は判決を急ごうとしたのでしょうか?

 公平中立であるはずの裁判所まで行政に忖度する現実には、私も呆れました。この国には三権分立は存在しないのでしょうか?

 裁判所の行政への忖度は憲法の理念に反しています。しかし、過去の裁判を振り返れば、裁判所が行政に配慮した判断を示した例はいくらでもあります。とくに地裁・高裁ではこの傾向が強く、その理由は裁判官としての出世に影響するからといわれています。しかし、最高裁は内閣から任命を受けるものであり 出世を考える立場でもないので、公正中立な判断を期待できると思います。

 本来、三権分立として独立した権限をもつ裁判所は国民の利益を守るための機関であるはずです。東京地裁には、その使命を思い出して 公正中立な判断を望みたいと思います。

(了)

(中)

関連記事