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2019年03月05日 07:03

賃貸アパート首位、大東建託に吹きつける逆風 「サブリース商法」が槍玉に(後)

創業者が会社を売却へ

 大東建託のビジネスモデルは、創業者、多田勝美氏が構築した。多田氏は1945年、三重県の生まれ。県立四日市工業高校を卒業し、小糸製作所に入社。10年間働いた後に独立。1974年6月、名古屋市で大東産業(現・大東建託)を設立した。

 先発の住宅会社と同じことをやったのでは勝ち目はない。目をつけたのは農家。農地に貸倉庫、貸工場を建てて賃貸するサイドビジネスを農家に勧めた。現金収入は農家に喜ばれたが、倉庫や工場では汎用性がない。それを賃貸住宅に変え、一括借り上げ(サブリース)、家賃保証を採り入れたことで急成長した。大東建託が成功したビジネスモデルだ。

 2007年10月に社長を退いた創業者で筆頭株主の多田勝美会長(当時)が、同社株を売却して引退を表明したことから大騒ぎになった。投資ファンドは多田会長の保有分だけでなく、大東建託の発行済み株式のすべてを取得し、同社の非上場化を提案した。

 07年12月下旬に行われた大東建託の買収入札の結果、米不動産ファンドのエートス・キャピタル、不動産会社の森トラスト、国内投資ファンドのユニゾン・キャピタルの3社連合が、最も高い9,200億円の金額を提示、交渉権を得た。

 エートス連合は、経営陣が買収に賛同することを全株取得の条件にした。だが、多田会長を除く、三鍋伊佐雄社長ら経営陣の多くは「全株買収で上場廃止になれば、経営に支障をきたす」と非上場化に慎重な姿勢を示した。

 エートス連合は金融機関から買収資金を調達する計画だったが、リーマン・ショックによる金融危機で資金を調達できず08年10月、買収を断念。売却問題は塩漬けになった。

規制強化でノーリスクがハイリスクに

 当時、大東建託は賃貸住宅の戸数拡大を追い風に業績は絶好調。無借金経営の優良会社だ。多田氏は62歳。高齢を理由に引退する年齢ではない。なぜ保有株を売却しようとしたのか。

 転機は、06年4月に訪れた。改正保険業法の施行である。賃貸アパート経営の家賃収入は共済制度が支えていた。家賃保証を大東建託が行うのではなく、オーナーから集めた共済金によって保証、大東建託はノーリスクだった。この共済制度が規制の対象になった。

 オーナーが借金して賃貸アパートを建て、家賃保証もオーナーがやる。そんなウマミのあるビジネスは終わり、連結子会社の大東建物管理による一括借り上げ方式に移行した。それは大東建託が家賃保証というリスクを負うものだ。保険業法の改正で近い将来、大東建託に急成長をもたらしたビジネスモデルが崩壊するのは確実。業績が好調な今が売り時と、多田は判断したとされる。

 株式の売却問題を再開。11年3月、多田氏の個人資産管理会社ダイショウが、保有する全株式(議決権比率31.96%)を自己株式のTOB(株式公開買い付け)に応募して売却。筆頭株主から外れた。大東建託の取得額は2,100億円。この自己株式は3月末に消却(資本準備金や剰余金を取り崩して、発行済み株式数から取り除くこと)した。

 今思えば、創業者の多田氏が大東建託を売却したのは、サブリース商法がやがて破綻することを予感していたからではなかろうか。

資本構成上は外資系企業だ

 13年4月、株式問題を決着させた三鍋伊佐雄氏から熊切直美氏に社長が交代。創業者の3分の1相当の株式を買い取り消却したことで、もともと高かった外国人持株比率は57.77%(08年3月期末)と過半数を超えた。事業は日本の会社だが、資本構成上は外資系企業になった。

 社長・熊切氏はROE(自己資本利益率)を重視する経営に舵を切った。18年3月期のROEは30.5%。建設業界のなかで、上位5位にランクインする高いROEを誇る。株主還元策として昨年12月、700万株、868億円の自社株買いを打ち出した。

サブリース問題が決算に影を落とす

 高収益をひた走っていた大東建託に逆風が吹きつける。サブリース問題だ。サブリース契約を使ったシェアハウス「かぼちゃの馬車」の運営会社スマートデイズが倒産して、サブリース契約をめぐるトラブルが頻発しているのを受け、国土交通省が実態調査に乗り出した。

 大東建託の2018年4~12月期連結決算は、売上高は前年同期比1.4%増の1兆1,756億円、営業利益は同5.9%減の1,050億円だった。同期間での営業減益は10年ぶり。地銀などがアパート向け融資を厳格化した影響で、受注キャンセルや着工の遅延が増えた

 消費者機構日本は、契約トラブルをめぐり、集団訴訟の準備に入った。

 4月には熊切直美社長が退任し、小林克満専務が昇格する。サブリース問題にどう向き合うのか。大東建託は最大の試練を迎える。

(了)
【森村 和男】

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