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2019年03月05日 10:13

それでも電気で回っている~3.11以後の電力・原発・住民たち(上)

 東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故からおよそ8年、ヨーロッパではイギリスで原発推進の中央政府に対して北アイルランドが原発反対を表明するねじれの様相を呈しているほか、ドイツは原子力発電の比率を2030年には20%台にする目標を設定。アジアでは韓国が2030年に再生エネルギー比率20%を目標とする「再生可能エネルギー3020履行計画」を立ち上げ、再生可能エネルギーを振興し原子力発電比率を下げる方針を打ち出した。

 いっぽう、日本では国内原発の再稼働と原発の輸出に政府や関連企業、団体が邁進してきた。
事故処理の先行きも立たないなか、なぜ原発は再び稼働されることになったのか。原子力発電をめぐる3.11後の歩みをたどる。

原発ゼロから再稼働へ

 2011年3月11日、太平洋沖を震源とする東日本大震災が発生し、その津波が福島第一原子力発電所を直撃。日本最大の原発事故に連鎖した。
この事故を受けて日本中の原子力発電所では点検と停止が行われ、順次停止。2013年に大飯原発が定期検診のために停止した後は1年11カ月にわたって原発稼働ゼロの状態にあった。

 当然、電力産業とその関連企業は反発した。事故以前は「原発は安全安心」と謳い、事故後は当時の民主党政権が打ち出した「原発ゼロ」の目標に対しても、「電力需要に対応できない」「計画停電が起こり得る」と広告で喧伝、抵抗した。ところが、現実には計画停電が起こらなかったため、「需要論」は説得力を失ってしまった。

 援軍が表れたのは2013年のことだ。1つは政権与党の座に戻った自民党、もう1つは真贋入り乱れる情報が生んだ「風評被害」への反発だ。

 第2次安倍政権は、前政権とは異なって原発再稼働に前向きな姿勢をとっていた。自民党内の反原発の声は次第に聞こえなくなっていき、原発推進派と、「安全保障のために必要」という容認派の声が大きくなった。政権交代を期に政府の広告費は増加したが、目立つのは「風評被害撲滅」を掲げた広告だ。

 これらのなかには「放射線について正しい知識を」と題して医師や研究者といった有識者にインタビューした体裁を取り、一見して読者に広告だと思わないようにつくられていた。

 このほかにも原子力研究開発機構を支援してきた文部科学省や、汚染土壌の問題を管轄する環境庁ら官公庁による広告は、放射能に対する国民の「理解」を深め、自然界に放射線があることをことさらに強調することで人工的な放射線被ばくが問題ないかのように描くといった過小評価を促す内容になっている。

 原発再稼働は、このような広告を用いることで「問題ない」と思わせるなかで行われてきた。2015年8月に川内原発2号機が再稼働になったことを皮切りに、現在は玄海、伊方、大飯、高浜の4原発で計9基が稼働している。

廃炉費用は電気代?

 事故後、再稼働と同時に廃炉の決定も行われている。現在まで全国で11基の廃炉が決定しているが、これはその費用を電気代に転嫁できる仕組みがつくられたことと無関係ではないだろう。

 東京電力に対する救済策として事故処理と賠償金の費用を政府が支援しているのはよく知られているが、それ以外にも電気事業会計規則の改訂というものがある。これは文字通り電気事業者の会計について規定したもので、この規則を修正することで廃止が決定した原発施設の一部を価値があるものと見なすことができるようになった。

 2013年に行われた改訂で、廃炉と発電を一体の事業と見なして、「原子炉の廃止に必要な固定資産および原子炉の運転を廃止した後も維持管理することが必要な固定資産」を計上することができるようになったのだ。これにより、タービンや発電機などの純粋な発電施設を除いて廃炉に必要な原発施設を資産として計上することができるうえ、その際に新しく導入した機器についても費用として計上できることになる。費用が多くなったから、電気代への上乗せも可能というわけだ。

 こうして、国を挙げた原発の再稼働と廃炉が同時進行で行える状況がつくられたのだ。

(つづく)
【小栁 耕】

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