2024年04月18日( 木 )

建築との出会いからこれまで 建築家から見た福岡のまちづくり(4)

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SAKO建築設計工社 代表 迫 慶一郎 氏

 中国を中心に、世界各国で独創的な建築を生み出す建築家として注目されるSAKO建築設計工社代表の迫慶一郎氏。迫氏が建築家を目指したきっかけから、中国に進出して数々の建築を世に発信してきた経験談、さらに福岡の『まちづくり』に対する現状や、今後の発展の可能性について聞いた。

福岡のまちづくりについて

 ――福岡のまちづくりを見て、現状、これから発展するところと危惧されるところはありますか。

 迫 チャンスを活かさなければ、後で後悔するなと思います。逆に言うと、チャンスはたくさんあります。だけど、いつまでもあるわけではありません。やれる時期にやるべきことを、いかに実現できるかだと思います。

福岡ステップス(保育園)

 福岡は、政令指定都市のなかでも一番人口増加率が高いですし、人口構成も若い。コンパクトシティですし、山があって海があって、川が流れているというような、ポテンシャルはすごい。私も大学で東京に行くまでは、「福岡は小さな街やねー」と思っていたんですけれど。バイクで走るとすぐ山や海に着いてしまうし、何か東京のどこまで行っても街が続く大都会みたいなのが、憧れみたいな感じであったんです。でも東京で学んで、横浜で仕事をして、北京で独立したり、ニューヨーク行ったりして、ぐるっと回って帰って来たら、福岡って本当に良い街だなと、今は思いますね。

 でもこの良い街ということを、地元にいる人たちがあんまりわかっていません。そこが、唯一危惧するところですかね。私は本当にいろいろやりたいので、自分で勝手に“こんな風になれば良いな”って思うことがたくさんあります。

 ――天神地区とか博多駅周辺とか、個別具体的にプランを描かれているのでしょうか。

 迫 たとえば、中洲や西中洲では過去の街並みから変わって、水辺の豊かさに気づいて、オシャレな店をどんどんつくっていっているという状況だと思うんです。だから、もともとポテンシャルはあるんですよ。川がど真ん中に流れていて、しかも夜になるとネオンできらびやかになっていく。屋台が出ていて、それも川越しに綺麗に見える。ただ、その価値に気づいていないだけ。

 たとえば、京都に鴨川がありますけど、ある時期はお座敷を出しますよね、「なんで福岡はお座敷出さないの」って思うんです。あれだけ川幅があって、あんなに流速が遅いわけですし、別に水上輸送で使っているわけでもない。浮桟橋でプロムナードをつくって、そこに面している店のオーナーは、夜、自由にそこに席を出して良いとするだけで、今まで“裏”だったところが、全部“表”に変わるわけですよ。そうすると、どんどん福岡に人が来るようになるわけですよね。当然、国内からもそうですし、これだけアジアに近いから、もっともっと福岡の魅力を増すことはいくらでもできます。

 福岡に戻ってきて思うんですけど、東京を意識している部分はありますね。でも、「東京にもないのに、福岡でやって大丈夫か」というようなマインドではダメだと思います。東京に、こんな川べりのこんな良い条件の場所などないんですよ。ないから福岡が、東京がやってなくてもやるんです。

 これからは国内だけではなく、アジア全体を意識して都市間競争をやっていかなくてはならない時代に入ります。福岡はたまたますごく良い状況にあるから、この位置で甘んじることなく、一気にもっと上を目指すべきと思います。

今後の展望と課題について

 ――建築に留まらない活躍ですが、今後の展望と実現に向けた課題はありますか。

 迫 もともと好きな仕事なので、建築家であり続けることは変わりませんが、施主の敷地のなかの建築だけを考えるということではつまらない。さっきの中洲の話にしても、「こうあったら良いのに」ということが、たくさん思いつくんですよね。アイディアを発信したり、もっと具体的に仕事として絡めたりすると面白いなと思います。今まで中国以外にも、モンゴル、スペイン、韓国で仕事をしてきたんですけど、同じ目標に向かって進めるってことが、一番大事な目標です。英語ベースでも仕事はできるので、あまり国境は関係ないと思います。

 そして、中国はこれからも大きな経済の国であり続けるだろうし、新しいものを求めているという意味でいうと、建築家としては面白いフィールドなので、続けていきたいですね。

 最終的には、これまで研鑽してきたものを、日本で活かせるともっと良いなと思いますね。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
SAKO建築設計工社
代 表:迫 慶一郎
設 立:2004年2月
資本金:10万米ドル
URL:http://www.sako.co.jp/

<プロフィール>
迫 慶一郎(さこ・けいいちろう)
1970生まれ、福岡市出身。筑紫丘高校を卒業後、東京工業大学に進み、96年東京工業大学大学院修了。山本理顕設計工場で8年間の勤務を経て、2004年SAKO建築設計工社を設立。04年~05年には、米国コロンビア大学客員研究員・文化庁派遣芸術家在外研修員を務め、北京を拠点に現在までに100を超えるプロジェクトを、中国、日本、韓国、モンゴル、スペインで手がける。

 
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