• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年03月16日 07:01

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(11)

大きな転機になったリーマン・ショック

大村 浩次 氏

 APAMANグループにとって、2008年に大きな転機をもたらす出来事が起きた。リーマン・ショックだ。2007年に米国の住宅バブルがはじけて表面化したサブプライムローン問題から始まり、株式市場が大暴落して世界的な金融危機がおこった。金融危機はまたたく間に広がり、日本の経済にも大きな波が押しよせてきた。

 世界的な金融危機がおこるまでは、全国のアパマンショップのフランチャイズ(FC)加盟店のネットワークは勢いよく広がり、売上がのびて利益もあがりAPAMANグループの事業は年々大きくなっていた。賃貸あっせん業界で先がけて新しいサービスをつくるためにITシステムに積極的に投資して、部屋を借りる人や不動産オーナーによろこんでもらえるようにサービスの改良をかさねていた。

 そして、賃貸あっせん事業やプロパティ・マネジメント(PM)事業とともに、不動産オーナーとのネットワークをいかして不動産に投資するプリンシパル・インベストメント(PI)事業やファンド事業も成長を続けていた。2007年度の売上約643億円のうち、PI事業は約237億円、ファンド事業は約95億円と、PM事業の約159億円とともに事業の3つの柱になっていた。

投資不動産やファンドの評価が大きく下がる

 賃貸不動産を投資目的で買い、家賃収入を得るPI事業。不動産オーナーがFC店舗に売却を依頼した物件を、APAMANグループが投資用不動産として買い取った。不動産に投資することで賃貸あっせんや管理ができる物件が増えるため、FC加盟店にもよろこんでもらえると考えたためだった。そしてアパマンショップの賃貸あっせんネットワークをいかして、入居率を高めて相場に合う賃料を保つことができるように賃貸物件のバリューアップに取りくんだ。

 また、不動産オーナーからの売却の依頼に対応する、不動産のファンド事業も順調に大きくなっていた。PI事業やファンド事業に投資することでAPAMANグループを大きくしたいと考えていたため、投資用不動産やファンドを積極的に購入していた。しかし、世界的な金融危機がおこったために、投資用の不動産やファンドの評価が大きく下がった。そのため、もっていた不動産やファンドの資産価値が買ったときよりも大幅に下がってしまい、不動産やファンドへの投資を事業として続けることができなくなってしまった。2008年度にはPI事業とファンド事業を中心にして約70億円の純損失となり、アパマンショップホールディングスとして2008年3月には約731億円の負債をかかえることになった。

投資用不動産を売却

 リーマン・ショックの危機を乗りこえるために、もっていた投資用不動産やファンドの多くを売却した。不動産の価値は、世界的な社会や経済の動きで大きくゆれる。世界的にみると10年や20年に一度は金融危機とよばれる大きなショックは起こりがちなため、これからも不動産やファンドをもち続けると金融危機などの世界的な経済の波からの影響を受けることを避けられないと考えた。そのことを強く感じてからは、不動産をもつことに興味がなくなってしまったという。そして、できるだけ不動産をもたずに事業ができるように、事業展開の方向を変えることを決めた。

 事業の幅を広げて会社を大きくしたいという思いから始めたPI事業やファンド事業だったが、リーマン・ショックの危機からPI事業やファンド事業をやめて、経済の動きに左右されにくいシェアリングエコノミー事業、IT事業、管理事業に集中することを決めた。リーマン・ショックがおこるまでは前向きな気持ちから積極的に不動産やファンドに投資していたが、経営者として未熟でした、と大村社長は話す。そのことに気づいてからは、判断が慎重になったという。

 モノをもつことのリスクを大きく見直してからは、事業に投資するときには不動産に限らず資産をもたない方法に変えた。たとえば、システム開発は技術の進歩がとても速いため、企業の資産としてシステムをつくっても1~2年経つと古くなってしまう。そのため、社内でしかできないコアなシステム開発以外は、インターネットのネットワーク経由で使うことができるクラウドを用いた社外で開発されたシステムを採用するようになった。社内で最初から最後までシステムをつくった方が使いやすいものができることはたしかだが、社会環境が変わり時間がたっても影響をうけにくい身軽な仕組みで事業を進めることが大切と感じて、社外のサービスをうまく使って資産をできるだけ持たないことを優先している。

 そして、賃貸あっせん事業や賃貸管理事業の収益を見直して、業務を効率化して徹底したコスト削減をすることで、計画的に負債を返済した。そして不動産賃貸業界で先がけて立ちあげたITの強みを生かして、不動産の賃貸事業での新しい展開をつくっていった。

(取材・文・構成/石井 ゆかり)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年03月25日 07:04
NEW!

生涯介護のいらない人生で最期まで親の尊厳を保つ~糖尿病の予防と治療

  日中特殊鍼法研究会会長 長尾治療院院長 長尾 良一 糖尿病  糖尿病は、持続的な高血糖、糖尿を呈する代謝疾患で、インシュリンの欠乏や作用障害が...

2019年03月25日 07:01
NEW!

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(20)

  外国人観光客のニーズを取りこむ民泊事業 大村 浩次 氏  賃貸不動産業は部屋を貸したい人と部屋を借りたい人をつなぐ仕事。モノを共...

2019年03月24日 07:04

生涯介護のいらない人生で最期まで親の尊厳を保つ~高血圧予防と治療

  日中特殊鍼法研究会会長 長尾治療院院長 長尾 良一  高血圧は本態性高血圧が9割以上と言われ 減塩、肥満改善、生活習慣の見直しが必要です。以下のことを実...

2019年03月24日 07:01

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(19)

  自転車をシェアする「ecobike」 大村 浩次 氏  マンションやアパートの賃貸物件を管理してみえてきたことが、買ったけれども...

2019年03月23日 07:04

伸長するオーガニック市場 海外との違いが浮き彫りに(後)

  ドネーションと奉仕の国  【表1】に示したようにアメリカの場合、食品全体に占める有機食品は全体の5%程度に過ぎない。その成長率も従前の2ケタ成長から最近...

2019年03月23日 07:01

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(18)

  新しいビジネスの場所をつくるfabbit  APAMANグループのコワーキングスペース・fabbit(ファビット)は、国内23拠点、海外19拠点に広がり...

2019年03月22日 17:20

虎ノ門ヒルズの駅直結ビル 国交省が再開発計画を認定

   22日、国交省は森ビルが申請していた(仮)虎ノ門ヒルズステーションタワーについての都市再生事業計画を認定した。10月1日に着工し、23年2月28日の完成を予定し...

2019年03月22日 16:37

自然電力、唐津の住民団体と電力小売で協力構想~地域おこしの財源に

   福岡市に本社をもつ自然電力(株)が、佐賀県唐津市湊町の住民団体「湊中学校区地域まちづくり会議」と電力小売事業での協力を構想している。  自然電力は、...

2019年03月22日 16:25

JR九州、グループ会社の社長人事を発表~4月1日付

   九州旅客鉄道(JR九州)は22日、グループ会社の社長が4月1日から以下のように変更になると発表した。  JR九州ステーションホテル小倉(福岡県北九州市...

2019年03月22日 15:30

堀内電気が水素ステーション起工式~太陽光発電で水素を製造、自社所有の燃料電動自動車で使用予定

  堀内 重夫 社長  22日、(株)堀内電気は同社の本社敷地内で水素ステーションの起工式を行った。水素ステーションを製造する本田技研工業(株...

pagetop