わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
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2019年03月19日 07:05

コミュニティ活動に求められるそれぞれの『覚悟』(後)

大さんのシニアリポート第77回

 桜井教授が香川さんを「強く、それでいてしなやかさ、したたかさを身につけている女性」と評したのは、「自分に自信のない人間は、ヘルプすら出せません。自分が他人にとって、助ける価値のある人間とも思えないから」「“助けを求める”には、自分が助けてもらえるだけの価値が(他人にとって)ある、という自己認識が必要で、自分の存在など他人には路傍の石みたいなものだろうと思っている人間にはかなりハードルが高い行動なのではないでしょうか」と香川さんの“覚悟”を高く評価したからだ。

 しかし現実的に、カミングアウトするという行動にはそれなりの勇気を必要とする。迷惑をかけるのではないのか、という心理もはたらく。「認知症をカミングアウトできるほどしたたかになれない私たちは、どうしたらいいのか。しかし、助けが必要な場面なのに、ヘルプを出さないともっとひどいことになって、周りにももっと迷惑をかけることになる。要は、助けられる覚悟が必要なのです」と。

「子ども食堂」の風景

 「助けることには、自己犠牲をともなう。困ったときはお互い様といいますが、コミュニティで面々と続く生活の場面場面においては、助けることはやはり一方的な行為になりがちです。アンパンマンは顔を分け与えて、徐々に削られていきますが、アンパンマンでない私たちでも、顔ではない何かがすり減っていくということを実感することがあります」「コミュニティ活動では、やらない人ほど好き勝手をいう。コミュニティ活動のインフォーマルな助け合いは、根気と覚悟が必要。コミュニティは、迷惑をかける、かけられる世界であることを覚悟すべきだ」とかなり強い調子で結んだ。
「そもそも人から助けられたら、恩を返すという規範がなければ、結局、援助はコミュニティで不均衡なものにならざるを得ない。長続きさせるには、根気と覚悟が必要になります」という指摘には、十分に納得できる。

 コミュニティというのは、誰でもが平等で対等な立場であることが求められるはずなのに、実際には「助けられる、助ける」という関係性が生じると、互いに一方的(一方通行)になりがちになる。再三紹介している「ぐるり」常連(夫婦)の「棄老事件」では、棄てられた老夫婦の日常を、社協のY相談員(社会福祉士)と「ぐるり」の亭主である私に、すべて丸投げされた。肝心の子どもたちは関わりをもつことを拒否した。Y相談員は「ボランティアとはそういうもの」というが、ボランティアという意識がなく、近所の気のいい仲間という意識の私には納得がいかない。最近でもこういうことがあった。

ある日のメニュー

 第2、4木曜日に、「子ども食堂」を開いている。20人を超す子どもたちを、8人のボランティアが交替で夕食づくりを担当する。開催の本音は、子どもたちにまともな食事をつくらない(作れない)親の現状を打破したい。母親もボランティアと一緒に食事をつくる。つまり「食育」という本音が隠されている。なかには精神的な疾患を抱えて食事がつくれない親がいることも事実である。そうした家庭の子どもたちを助けたいという思いももちろんある。しかし、親の多くは、「一食100円で食べることができる食堂」「子ども食堂があるから利用している」という認識でいるのではと疑念を抱く。食堂に顔を見せないばかりか、送り迎えをする親は少数だ。冬の夜8時過ぎは真っ暗である。子どもたちを家まで送るのは、学生ボランティアと亭主である。

 昼、親に会っても挨拶するのは一部で、大半は知らぬ顔を決め込む。「お世話になってます」という言葉もない。写真をあげても「ありがとう」がない。多分、親が育ってきた生活環境も、今と同じようなものなのだろう。桜井教授のいう、「助けることは結局献身、自己犠牲をともなう」という本音、つまり「無償の行為」ということが理解できても、せめて「ありがとう」の言葉を聞きたいと思うのがボランティアの気持ちだと思う。利用する側の覚悟(感謝の念)も必要だと思うのだが…。

(つづく)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。

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