2024年03月28日( 木 )

弁護士が語る 知っておきたいトラブル予防 債権の差押、仮差押

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岡本綜合法律事務所

支払能力が乏しい相手には

岡本綜合法律事務所 岡本 成史 弁護士

 工事代金・設計料等の債権回収のご相談をいただくなかで、相手方の財務状況が悪化し、現実に支払能力に乏しいというケースも一定数を占めます。相手方が破産等の法的手続をとった場合には、手続に則っていかざるを得ませんが、支払を停止したり、不渡りを出したりしても、法的手続もとらずに営業を継続しているケースもあります。このような場合には、訴訟等の法的手続を検討することになりますが、その前提として現実の回収可能性、費用対効果を検討することが必要です。

 回収可能性を検討するにあたっては、相手方が不動産、機械工具類等の動産、自動車、預貯金や工事代金請求権等の債権等の財産を保有していないかなどを慎重に調査する必要があります。換価価値のある財産が存在すれば、訴訟を提起して判決等の債務名義を取得して、強制執行により回収を目指すことになります。

回収までの時間を短縮

 回収にあたって効果的なのは、相手方が有する売掛金や工事代金等の債権(請求権)を差し押さえるという方法です。不動産等のように換価に時間を要しませんので、差押が奏功した場合には、比較的簡易・迅速に回収をすることができます。もっとも、裁判を起こしてから判決を得て、強制執行を実施するまでには、どんなに早くても数カ月を要しますので、裁判をしているうちに支払いがされてしまうと、回収の可能性は格段に低下するという事態も考えられます。

 そのような場合に備えて、仮差押えという方法があります。仮差押えは、正式に判決を得る前に、財産の散逸等を防ぐために、担保を立てたうえで、相手方の財産を仮に差し押さえる手続きです。債権の仮差押えの場合、仮差押えをしてもすぐに回収ができるわけではありませんが、相手方に工事代金等が支払われないようにすることができますので、その間に判決を得て、後日、本差押をして回収が可能になります。

仮差押えで和解を有利に

 もっとも、仮差押えをすることで、簡単に解決してしまう場合もあります。相手方は、資金繰りのあてにしていた工事代金等が突然入金されなくなり、仕入代金や従業員の給料などの運転資金も不足してしまう非常事態に見舞われ、また取引先に対する信用も低下します。そのため、相手方としても、工事代金が凍結されたままで放置しておくことはできず、仮差押えの解放のお願いをしてきます。そのようなときに、非常に有利な条件で和解をすることが可能になります。当事務所でも、官庁の入札情報を元に公共工事の請負代金を仮差押えした結果、元金だけではなく損害金まで含めた債権全額を一括回収した事例もあります。

<プロフィール>
岡本 成史(おかもと・しげふみ)弁護士
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。福岡県建築紛争審査会委員、一般社団法人相続診断協会パートナー事務所。

 

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