2024年04月19日( 金 )

コンポントム州都の水道建設運営(ODA)を30億円で受注 クボタ工建JV~北九州市が技術支援へ

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コンポントム州の既存浄水場

 (株)クボタ工建(大阪市浪速区)は20日、カンボジア中部にあるコンポントム州の州都地域の水道拡張事業を受注したと発表した。受注したのは、同社を代表企業とするJVで、(株)建設技研インターナショナル(東京都江東区)、(株)ジオクラフト(北九州市小倉北区)、メタウォーター(株)(東京都千代田区)で構成される。同事業は、日本政府のODA(政府開発援助)案件で、受注金額は約30億円。日本の民間企業が、海外の水道施設の設計施工から運営維持管理をトータルで受注するのは、日本初となる。2021年の完成、運営開始を目指す。

 コンポントム州は、首都プノンペンから北に約130km離れた農村地域で、人口は約70万人。近年の経済発展にともない、州都を中心に都市化が進んでいる反面、浄水場の供給能力などが追いつかず、水道の普及率は41%にとどまり、住民の安全な水へのアクセスが課題になっている。

 日本の外務省は2017年、水道の供給能力増強を目的に、同州都へのODA実施を決定。建設設計だけでなく、運営維持管理を含めた「事業・運営権対応型無償資金協力」として公募した。モノをつくるだけの建設会社ではなく、水道事業を運営できる民間企業に受注させたい狙いがあった。今月26日、カンボジアで基本合意書の調印式が行われる予定だ。

 クボタ工建は、2000年に設立された(株)クボタの100%子会社で、国内外の土木、建築工事などを手がける。プノンペン市のプンプレック浄水場建設を受注するなど、海外案件の受注実績も豊富だ。ただ、水道事業全体の運営経験はない。

 今回の事業では、取水施設(日量8250m3)、浄水場(日量7500m3)のほか、導水管、配水管(延長152km)を建設する。事業完成後は、施設の運営などを行うことになる。水源は河川表流水、水処理方式は急速ろ過の予定だ。事業実施により、給水能力は日量約4千m3から約1万m3に増強。給水人口も約2万5千人から約7万3千人に拡大する見込みだ。設計建設期間3年、運営期間5年だが、運営期間は延長オプションがある。

水源のサエ川

 今回の受注には、カンボジア政府とのパイプをもつ北九州市が関わってきた経緯がある。同市は11年、同国工業・手工芸省(MIH)と主要9都市の水道整備に関する覚書を締結。コンポントム州の水道基本計画策定を支援した。16年には、北九州市海外ビジネス推進協議会を加え、官民連携による同国水道事業の発展に関する覚書も交わしている。同市では、同事業への技術的な支援を決定している。

 JV4社は、いずれも北九州市海外水ビジネス推進協議会の会員に名を連ねている。このうちジオクラフトは地元北九州市に所在する中小企業。北九州市の水道マッピングなどを手がけてきた実績がある。

 今回の受注について、北橋健治市長は「(同協議会会員企業JVが受注したのは)大変喜ばしい。今後も、SDGsの6番目のゴール『安全な水とトイレをみんなに』に貢献できるよう、官民連携で水ビジネスを推進していく」などとコメントしている。

【大石 恭正】

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