2024年04月16日( 火 )

シベリアよりAIを込めて~ノヴォシビルスク使節団が語る展開と展望(3)

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ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社 CEO
アレクサンドル・ズィリャノフ 氏
ソフトラボ-NSK社 CEO/業界団体シブアカデムソフト 代表
イリーナ・トラヴィナ 氏

左から、ヴャチェスラフ・アナニエフ(データ・イースト社CEO)、
イリーナ・トラヴィナ(ソフトラボ-NSK社CEO、業界団体シブソフトコム代表)、
アレクサンドル・ズイリャノフ(ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社CEO)、
ワシーリー・プロトニコフ(ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社投資部門ディレクター)

お金ではない協力を

 ズイリャノフ 今回、来日した第1の目的は、日ロ関係がダイナミックに変わろうとしている、頻繁に首脳会談が行われているなかで、民間のレベルでも日ロ関係を深めていくために互いのビジネスパートナーを探す必要があると思ったからです。ノヴォシビルスクでビジネスパートナーを探したいという人々にはぜひ応えたいと思っています。オフィスや住居の手配、空港への送迎など全面的なサポートを、州の事業として無料で行っていきます。

 最初にいくつかの成功体験があれば、あとは日ロ経済交流が加速して進んでいくと信じています。投資エージェンシーのウェブページは英語版・ロシア語版・中国語版のものしかなかったので、日本語版も準備しているところです。関心ある方にはぜひアプローチしていただきたいと思っており、コンタクトから交流が進んでいくことを期待します。私たち投資エージェンシーは州政府によってつくられていまして、実業家と起業家が互いにパートナーを見つけられるように励んでいます。

 その1つを紹介します。アメリカ政府はロシアに対して経済制裁を行っていますが、それにもかかわらず私たちは1年前ほどからペプシ・コーラで有名なペプシコ社と交渉しておりましたところ、昨年、合意しました。同社からの投資額はおよそ2億ドルに達する巨額なものになる予定です。いつも思うのですが、アメリカの人というのはずる賢くて、自分たちで制裁を課しておいて、ほかの人を追い払ったところに自分たちが入っておいしいところをとっていきます。

 ―現在の対ロ経済制裁が天然ガスや資源などの限定的な分野に対しての規制だということはあまり理解されていませんね。

 ズイリャノフ 私たちはお金を投資してほしいわけではないのです。ロシアでもお金はいっぱいあって銀行はどこに投資していいかわからない状況なのですが、そんななかで私たちでは達することのできなかった日本の技術を学びながら、一緒にビジネスをしていくということが私たちの望んでいるものです。

 一番関心があるのはやはり日本と一緒に製品をつくり、その製品が付加価値のあるものであって、それを日本とロシア以外の第三国に一緒に展開していく、売っていくということに非常に関心があります。

 ―投資エージェンシーのウェブページは現在3カ国語対応ということですが、中国企業と進めているプロジェクトはありますか。

 ズイリャノフ 中国の方々も来ていますし、制裁下でも米欧の方々とも仕事をしています。

 ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社投資部門ディレクター ワシーリー・プロトニコフ氏 私たちとしては中国の企業よりも日本の企業と協力していくことの方により関心があります。ノウハウや知見を高めるという点に関心があるからです。中国の人は土地に対して関心を抱いていると考えていまして、その点を警戒しています。

アカデムゴロドクにあるテクノパーク、通称アカデムパーク

 トラヴィナ 中国にも知見や学術的なところに関心をもっている企業はあります。最近ではファーウェイ社が積極的にアプローチをかけていますね。ロシアの既存の会社を買収して、そこを足がかりにアカデムゴロドク(ノヴォシビルスク市近郊の学術研究都市で、研究機関の集積地)のなかにファーウェイの支部をつくる。そういう計画ではないかと考えています。

 ―同社は昨今、厳しい立場にありますが、非常に高い技術力をもつ会社です。

 トラヴィナ アメリカはファーウェイ社に圧力を与えて、自国からの切り離しを図っていますね。そうしてアメリカから締め出された部分を他国で補おうとしているように思いますが、歴史は繰り返すとでもいいましょうか。アメリカは日本車に対しても同じような締め出しを行っていたことを思い出します。

(つづく)
【小栁 耕】

アレクサンドル・ズィリャノフ(Zyrianov, Aleksandr)
ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー社CEO。1993~2008年まで起業家として活動したのち、ノヴォシビルスク市・市民課副課長、ノヴォシビルスク州投資発展エージェンシー第一副社長を経て現職。

イリーナ・トラヴィナ(Travina, Irina)
ソフトラボ-NSK社CEO、業界団体シブアカデムソフト代表。1985年にノヴォシビルスク国立大学を卒業後、同市近郊の研究所でエンジニア、プログラマーとして勤務。ソ連崩壊後は同僚とともにソフトラボを起業。ITクラスター育成の非営利団体「シブアカデムソフト」の設立にも参加し、副会長を経て現職。

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