2024年11月04日( 月 )

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(25)

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暮らしやすい社会をつくる

大村 浩次 氏

  住むことは、暮らすこと。大村社長は、人々が便利で暮らしやすい社会をつくることがAPAMANグループの使命と感じている。以前の賃貸不動産業界は、部屋を借りたい人に賃貸物件の情報を伝えて、不動産オーナーに部屋を借りる人を紹介することがビジネスだった。しかし、インターネットが普及するとともに、賃貸物件や住みやすさの評判などの情報は、誰もが手に入れられるオープンなものに変わった。そのため、部屋を借りる人には暮らしやすいサービスの情報、不動産オーナーには不動産経営に必要な情報を発信して、ユーザーのニーズを先読みした質の高いサービスをすることが、今後のAPAMANグループのあり方と考えている。

 では、住む人にとって生活がしやすくなるサービスとはどのようなものだろうか。部屋を借りている人むけの「アパマン友の会」では、さまざまな会社と提携して「生活を安く、楽しく」できる割引サービスをしている。たとえば、生活用品から映画、レストラン、スポーツクラブ、カード、旅行まで全国で数十万社以上のサービスから、データマイニングとよばれるお客さまの個人情報から生活スタイルや好みなどを知る方法を使って、1人ひとりの暮らし方にあう割引情報を届けている。同じ商品やサービスをお得に使える情報を伝えることで、生活費をかけずに便利に楽しく暮らせる方法を提案している。他社と提携している割引サービスを生活すべてに広げて、部屋を借りることから毎日を安心して暮らせる仕組みをつくりたいと考えている。また、車や自転車を共有するシェアリングエコノミーと合わせて、生活コストのかからないサービスが今後は普及していくと予想している。

 一方で、不動産オーナーには、データを使ってマッチングすることでプロパティ・マネジメントや資産の運用に役立つ情報を届けている。たとえば、法律が変わり賃貸物件に自動火災報知機を設置しなければならなくなったなどの賃貸物件の管理に必要な情報を知らなければ、後に支障が出ることも多い。個人で情報を集めると手間や時間がかかるため、APAMANグループに賃貸物件の管理を依頼するだけで、物件の管理に必要な情報をワンストップで伝えられる仕組みをつくりたいと考えている。また、駐車場を始めたい不動産オーナーには駐車場の経営の情報を伝えて、税金のことで相談があるオーナーには、税理士事務所と提携して相談できる仕組みをつくることを実現したいという。

AIで相手のニーズにあう情報を届ける

 APAMANグループは、約20万人の不動産オーナーや約100万人の入居者とのお付き合いを通して大規模なデータベースをもつ。1人ひとりに合った情報を自動的にデータベースからAI(人工知能)が見つけるデータマイニングを使って、相手がほしい情報を届けている。これまで対面や電話で話していたことや、書類や本を使って伝えていた情報を、1人ひとりの手元のスマートフォンやパソコンに伝える仕組みをつくり、相手にあわせたサービスをしたいと考えている。

 大規模なデジタルデータを使って、部屋を借りている人や不動産オーナーに、ニーズにあった情報を伝えることは、APAMANグループでは10年前から取りくんできた。最近ではAIや業務自動化システムのRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのITテクノロジーが進んだため、これまで集めてきたデータベースを役立てて、どのような情報がほしいかを調べ、相手のニーズにあう情報を提供しやすい時代になったという。

 たとえば、部屋を借りている人に生活に便利なサービスの情報を届けるときや、不動産オーナーに資産運用に役立つ情報を届けるときには、相手をどのくらい詳しく知っているかということが、ニーズに合う情報を届けられるかどうかを左右する。また、賃貸物件を管理しているプロパティ・マネジメント事業では、不動産オーナーや取引業者にメリットのある情報を伝えることが必要だ。情報を知っていたからこそ、知らなければできなかったことができるようになることが情報の価値だ。相手がほしい情報を届けるAPAMANグループ独自のサービスをするためにも、1人ひとりのニーズがわかるデータを集めることが大切と考えている。そして、これからも情報を伝える相手を増やして、伝えられる情報の量を増やすとともに、質がよく幅広い分野の情報を伝えられるように情報サービスの提携先を増やしたいと考えている。

次の時代の暮らしの新しい常識を生み出す

 APAMANグループは、業界トップレベルのデータベースからの情報力を生かして、AIやRPAなどの最先端のITテクノロジーを使いこなすことで、人々が暮らしやすい社会をつくりたいと考えている。いつも10年先を見て、時代の流れを読むことで新しいサービスを生み出している。いまから10年先には、どのような事業を始めているのだろうか。世の中で必要とされていることをいち早くサービスとして実現する姿勢は、次の時代の暮らしの新しい常識を生み出すに違いない。

(了)
(取材・文・構成:石井 ゆかり)

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