2024年04月20日( 土 )

世界一の超大型造船会社の誕生(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 1970年代に日本は、2010年代に韓国が経験したようなことをすでに経験している。その当時、日本政府は造船産業を斜陽産業と規定し、産業規模を縮小する方向で、構造調整を断行した。その過程で、かなりの設備と技術、人材が失われ、日本造船産業の弱体化を招くことになった。韓国はこのような隙を狙って造船産業に注力し、日本から王座を奪うことができたのだ。

 それでは、今回の合併には、どのようなメリットがあるのだろうか。現代重工業では、今回の合併が無事成功すると、研究開発人材を統合し、開発効率が最大化でき、また重複投資を取り除いて投資の効率性を上げたり、購買数量の増加による厚版などの材料の購入費用を低減したりするなどの効果を狙っている。

 造船業界では、今回の合併が成功すると、付加価値の高いLNG船と原油タンカー(VLCC)分野で、競争力が一層強くなるとみている。昨年の両社の受注実績を合わせると、 LNG船の世界市場シェアは60.6%で(43隻)、原油タンカーは72.5%(26隻)である。このように規模の経済を実現できるだけなく、過当競争による低価格受注問題も解消されると見ている。それに、大宇造船は砕氷船、潜水艦などの分野で、かなりの技術を蓄積しているので、現代重工業の業績にプラスになるとされている。

 最後に、今回の合併にはどのような課題があるだろうか。今回の合併は海外の国々で承認されるかどうかという課題がある。国内でも労組の反発が強いので、それをどのように解決していくのかが課題になる。また、合併は状態のよい企業が合併することが常であるが、そのような意味において、現代重工業は業績が回復しているものの、まだ完全に業績が立ち直ったわけではないので、まだ安心できないという指摘も多い。それに、今回の合併は単純に会社の規模が大きくなっただけであって、収益構造は何も改善されたわけではないので、課題があるという指摘もある。

 たとえば2社が同じように得意分野としているLNG船の市況がもし悪化したら、リスクがさらに増大するという懸念の声もある。 LNG船は発注できる国が限られていて、寿命も20年と長いので、現在のような状況が続くという保証もない。

 韓国は7年ぶりに中国を追い抜いて造船世界1位を奪還したと浮かれているが、市場を冷静に観察すると、発注量も、船舶の価格も、まだ回復していないという。このような状況なので、新しい合併法人はLNG船中心の発注体制から環境に優しいコンテナ船などに多様化する必要があると専門家は助言している。さらに、ビッグデータ、人工知能、IoTなどの技術を融合した次世代船舶の開発に力を入れるべきであると強調する。今回の合併が吉とでるか凶とでるか、もう少し様子を見る必要がある。

 (了)

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