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2019年04月11日 07:04

【統合医療の現状と課題】「病院完結型」医療から「地域完結型」医療へ CAMは予防医療の分野でも重要な役割を担う(後)

高齢者医療でも統合医療的アプローチが必要

 一方、高齢者医療においても統合医療的なアプローチの必要性が高まるだろう。前回の平成30年度診療報酬改定では、処方薬の総量規制ともいうべき減薬を促す算定評価が随所に見られた。たとえば、前回新設された「服用薬剤調整支援料」では、6種類以上の内服薬が処方されていた場合、薬剤師が処方医に対して文書で減薬を提案し、2種類以上が減薬された場合に算定できることになった。これは薬局・薬剤師の対人業務を充実させる狙いがある一方で、昨今問題になっている高齢者のポリファーマシーの防止策と捉えることができる。

 日本老年医学会などの調査によれば75歳以上の高齢者の4人に1人が「7種類以上」も処方されているという実態がある。もちろん単に薬剤の種類が多いことが問題なのではなく、服用数が多いと薬物有害事象のリスクが増加することや、10錠も処方されて飲み切れずに廃棄されるなどの服薬過誤の状態を含めて、多剤服用のなかで害をなすものをポリファーマシーと呼んでいるが、いずれにしても多剤服用への対策は、安全性確保と医療費の無駄を削減するうえで大きな課題となっているのだ。

 医薬品の適正使用では、抗菌剤使用における薬剤耐性菌への対策も大きな課題となっている。前回改定で新設された「小児抗菌薬適正使用支援加算」は、風邪などで受診した子どもに「抗菌薬の使用は必要ない」などと説明し、療養上必要な指導を行った場合に80点が加算されることになった。この背景には、15年5月に開催されたWHO総会で採択された「薬剤耐性菌対策に関するグローバルアクションプラン」を受け、日本でも2016年4月に「薬剤耐性(AMR)アクションプラン」が策定されたことが影響している。

 日本のアクションプランには、20年までに抗菌剤の使用を30%減らすことや、第3世代セファロスポリン系、あるいはニューキノロン系、マクロライド系の抗菌薬の使用を半分にすることなどが明記されている。その目標達成に向け、厚労省は17年6月に、「抗微生物薬適正使用の手引き」を作成。単なる風邪で受診した患者には「抗菌薬は不要」として医師から患者への説明例などが記されている。風邪をひいて病院に行っても簡単にクスリをもらえないようになれば、患者は薬局やドラッグストアに行って市販薬(OTC医薬品)を買うようになるだろう。見方を変えればセルフメディケーションへの誘導と捉えることもできる。

生活習慣病とフレイルどちらを重視するのか

 これからの医療は、無駄な医薬品の使用をなくし、生活習慣病の重症化予防のための食事指導や運動指導などに力点が置かれるようになる。前回の診療報酬改定はそのシグナルといえるだろう。とりわけ超高齢社会では、薬物療法だけでなく食事療法や運動療法、さらにはストレスケアなど、生活全般の健康サポートが欠かせない。

 名古屋大学大学院医学系研究科の葛谷雅文教授は、食事摂取基準策定検討会の場で意見を述べ、「一般的に65歳を過ぎると食欲が少しずつ低下し、食事摂取量が低下するが、活動量自体も低下するので、恐らく体重減少はあまり顕著ではないだろう。ただ、75歳を超えると少しずつ体重減少が起こってくるので、それがフレイルやサルコペニアにつながっていく。それを放置しておくと、本当に低栄養になってしまい、なかなか回復させることが難しく、さまざまな合併症が引き起こされてしまう」と、入院につながるプロセスを説明する。

 ただ、フレイルを予防するための栄養療法では難しい問題もある。多くの高齢者が、高血圧症や糖尿病などの生活習慣病を抱えながら、もう一方でフレイルが併存しているということが稀ではないからだ。生活習慣病を考えたときに、たとえば糖尿病だったらエネルギー量を考慮し、脂質異常症だったら脂質摂取に関しての制限を考えなければいけない。また、心不全や高血圧の場合は減塩をし、慢性腎臓病の場合は減塩だけではなくタンパク質の摂取量も考慮しなければならない。これらの病態にフレイルが重なると、エネルギー・脂質制限は体重減少につながり、減塩は味覚が低下している高齢者の食事を味けないものにして食欲低下を招く恐れがある。さらにタンパク質制限は、骨格筋の筋肉量減少、サルコペニアに直結するというリスクがある。

 このことから葛谷教授は、「生活習慣病を重視するのか、フレイルを重視するのかのバランスが大変重要になる。その判断は難しいが、少なくとも考えなければならないのは、後期高齢者を成人と同じような考えで栄養療法をしてしまうのはリスクが高いということだ」と指摘する。

CAM教育で医療従事者の意識改革を

 「フレイル対策ではプロテインなどのサプリメントを提供したり、栄養食事指導をきちんと行えるように準備しておく必要がある」―。こう話すのは(一社)日本女性薬局経営者の会の堀美智子会長。堀会長は、超高齢社会のなかで、高齢者が健康で元気に暮らしていけるようにするためには、保険医療だけでなく「薬局は何ができるのか」という視点が大事だと捉え、薬局においても統合医療的なアプローチの重要性を説く。東京女子医大付属青山自然医療研究所クリニックの所長として10年以上にわたり、診療にCAMを取り入れ、実践してきた川島朗医師(東京有明医療大学教授)も高齢者医療では薬物治療を基本とする保険診療には限界があると指摘する。

 「社会はますます高齢化していくので医療費削減は待ったなしの状況にある。解決の答えは簡単で、病気にならないようにすること。これからの医療は病気にならないことを中心に考えるべきだ。その意味において、CAMは予防医療の分野においても重要な役割を担うのではないか」(川嶋医師)―。では、CAMを取り入れた統合医療を医療現場で利用するにはどうしたらよいのか。川嶋医師は、「医療従事者の意識改革が第一。そのためにもCAM教育が欠かせない」という。

(了)
【取材・文・構成:吉村 敏】

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