2024年03月28日( 木 )

【パチンカー代の『釘読み』】お上のギャンブル依存症対策に今さら感

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 政府は、19日、「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」を閣議決定した。カジノを含む統合型リゾート(以下、IR)の整備を前に、ギャンブル等依存症対策を強化する目的がある。同基本計画案に対しては、3月7日から国民から広く意見募集を行うほか、有識者らとの意見交換などを実施していた。

「今さら感のある要求」

 パチンコ業界に対しては、ホール内における「ATM等の撤去」、ホールへの入店を制限可能な「自己申告・家族申告プログラム」の周知徹底などが求められた。しかし、ホール運営業者はすでにこれらの対応を自主的に進めており、今回の要求に関しては「今さら感」が否めない。

「ホール内に設置されたATM」

 ATMに関しては、撤去済のホール、そもそも設置していないホールがある。また、設置していても「月の利用限度額が3万円」に設定されているものも多い。仮に、全国のホール内からATMが撤去されたとしても、打ちたい人は近くの銀行やコンビニ、そのほかの商業施設に設置されたATMを利用するだろう。

 自己申告・家族申告プログラムに関しては、全国でパチンコホール「ダイナム」を400店舗以上展開する(株)ダイナムが、2017年7月から導入を開始。18年10月31日で全店舗への導入を完了している。事前に決定した「1日の遊技金額」・「1カ月の来店回数」・「1日の遊技時間」を超えた場合、店舗スタッフが対象となる顧客、またはその家族に知らせるという仕組みだ((株)マルハンは19年4月1日、全店舗に導入完了)。

 ただ、同プログラムの利用を顧客に強制することはできない。ホール側にできるのは、顧客側から申し込みがあった場合、それに対応するということだけだ。各ホールが同プログラムの周知徹底に尽力したとしても、ホールに通う顧客、またはその家族にプログラムを利用する意思がなければ、意味をなさない。

「画一化される趣味」

 今回の「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」では、パチンコのほかにも「競馬」・「競輪」・「モーターボート」などの「公営ギャンブル」に対しても要求が出された。主な内容はパチンコのそれと変わらないものだ。

 同基本計画案に対して寄せられた国民からの意見には「宝くじやカジノについても規制対象に加えるべき」という声や、FXや暗号通貨、スマートフォンの課金ゲームに対する記載がないことを疑問視する声が散見されたが、これらの意見が加味されることはなかった。

 そもそも、「依存症」という括りでいうならば、酒やたばこ、買い物なども当てはまる。ある業種・業界を狙い撃つ規制強化は、個人の選択肢を狭めることにもつながりかねない。

 先述の通り、パチンコ業界に関しては早い段階で依存症対策を進めており、今回の要求は遅きに失した感が否めない。単なる「業界いじめ」と言われても仕方がないだろう。

【市場規模概略】
「市場規模相応の雇用の受け皿を担っていることも忘れてはならない」
※クリックで拡大

【参照】
日本中央競馬会平成29事業年度決算等に関する広告
一般社団法人全国モーターボート競走施行者協議会平成29年度公表データ
経済産業省「競輪・オートレースを巡る最近の状況について」(データは平成29年度分)
「レジャー白書2018」(データは平成29年分)

【代 源太朗】

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