2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

Park-PFIによって都市公園はどう変わるか?(後)

勝山公園で初適用されたP-PFIとは?

コメダ珈琲店勝山公園店のテラス

 P-PFIは、都市公園内で飲食店などの公園施設を設置管理する事業者を公募で選び、その収益を公園整備に還元するスキーム。公募対象公園施設には、都市公園法の特例措置として、建蔽率が最大12%まで認められる。数千m2規模の都市公園にもP-PFI活用の門戸が開かれ、設置期間も最長20年まで延びた。従業員の雇用など長期的な視点に立った店舗運営が可能だ。事業者にとって、より収益を上げやすい条件設定とする代わりに、公園整備などの費用を一部負担させるのが、P-PFIの大きなポイントになる。

 P-PFIを全国で初めて適用したのが、北九州市小倉北区城内の「勝山公園」(面積約20万m2)だ。18年7月、紫川に架かる鴎外橋西側橋詰広場(面積約3,200m2)に「珈琲所コメダ珈琲店」がオープンした。事業者はビル管理などを手がける(有)クリーンズ(北九州市小倉北区)。フランチャイズでの店舗運営だが、応募提案には、コメダ本体も深く関わった。コメダ珈琲店の都市公園内出店も今回が初となる。

 北九州市では当初、設置管理許可制度を活用し、飲食店などの公園施設を設置する考えだった。その検討途中、P-PFI制度が創設。「(P-PFIのほうが)行政、民間、利用者にとってもメリットが大きい」(同市担当者)ことから、P-PFIに切り替えた経緯がある。場所の選定に際し、民間事業者へのヒアリングや歩行者などの通行量調査を実施。歩行者が多く、収益が見込める鴎外橋西側の川沿いエリア(約550m2)を選んだ。もともとレンタサイクルのステーションがあった場所だ。同市では、賑わいを創出する空間・広場を確保するため、森鴎外文学碑を移転し、売店や便所を撤去した。

 北九州市は公募条件の検討に際し、マーケットサウンディングを実施。その後、民間事業者が平屋建ての収益施設(建築面積約200m2)と施設周辺の公園施設(面積約350m2)を一元的に整備する。事業期間は20年間。公園使用料は1m2あたり月額200円以上、最低20席の休憩スペースを確保する―などの要件をつけ、公募を行った。選定には、学識者などからなる検討会を設置。その結果、コメダ珈琲店を提案したクリーンズが選ばれた。同社提案の使用料は月1,000円/m2(年換算240万円)だった。

 コメダ珈琲店北九州勝山公園店は、木造平屋建て。川に沿った扇型の店舗を採用。川に面したテラスを含め35卓、88席を確保。公園利用者のためのトイレのほか、店舗周辺には公園施設として、植栽のほか、ベンチや休憩スペースなどを設置している。公園施設の整備費用は、約84%を市が負担する。

 クリーンズの石松賢一社長は、「(応募したのは)地元企業としての社会貢献が目的。以前は夜間暗かった場所に、コメダ店舗の明るい光が灯ればという思いがあった。コメダには和食系の店舗もある。今後、新たな公募案件が出れば、積極的に参加していきたい」と話す。

 オープン後、約半年間の来客数はのべ約8万人。コーヒー店舗としてみれば、まずまずの数字だが、「公園の賑わいづくりとしては、まだまだこれから」(同市担当者)と指摘する。同市では今後、来客者へのアンケート調査などを行い、周辺イベントなどと連携した賑わいの創出に取り組む考えだ。

天神中央公園や大濠公園でもP-PFI

 福岡県では、天神中央公園西中洲エリア、大濠公園日本庭園エリアでそれぞれP-PFIの検討を進めている。天神中央公園の民間事業者として18年9月、西日本鉄道を代表とするJV(yHa architects、松本組、西鉄ビルマネージメント、日比谷花壇)が決定。県が行う公園のリニューアルに合わせて、園内にカフェやレストランを整備するほか、休憩スペースなどを設置する。19年8月にオープン予定だ。アクロス福岡前にオアシスショップが運営されているが、管理許可制度によるものだ。

 大濠公園では、公園南側の日本庭園に隣接する場所に日本茶(八女茶)を振る舞う和風カフェの整備を検討している。18年10月以降、P-PFIによる実施を前提に、サウンディング調査などを実施。調査結果を踏まえ、19年度中に事業者の公募を実施する予定だ。大濠公園では、すでに「レストラン花の木」や「スターバックスコーヒー」があるが、こちらは設置管理許可制度に基づくものだ。

 国土交通省が管理する海の中道海浜公園では、P-PFIによる滞在型レクリエーション拠点の整備運営に向けた取り組みが進められている。宿泊施設やレストランといった施設を中心に、アウトドアキャンプ、水上スポーツなどのアクティビティを楽しむための拠点になることを想定している。

 対象となる主なエリアは、比較的利用者が少ない公園南側中央部のB地区。「環境共生の森」などが立地する自然主体のエリアだ。19年夏ごろに事業者を公募し、開園40周年に当たる21年度中のオープンを目指している。公園西側にある水族館「マリンワールド海の中道」、ホテル「ザ・ルイガンズ」は、PFI事業としてすでに整備運営されている。

賑わいの乏しい公園の活性化をどうするか

 都市公園の一部を民間企業に開放することによって、賑わいの中心となる場が生まれる。店舗収益の一部は公園整備に還元され、利用者の利便性が高まる。公園管理における官民連携の取り組み自体はとくに目新しいものではないが、特例措置を講じ、民間企業にとってよりメリットのある制度を創設することによって、硬直化した公園管理のあり方に一石を投じようとするPark-PFIの取り組みには、一定の意義があるといえる。

 ただし、どんな都市公園でもP-PFIが適用できるわけではない。自治体などが「この公園でPark-PFIをやりたい」と考えても、民間企業が手を挙げなければ実現しないからだ。多くの民間企業にとって、手を挙げるかどうかのバロメーターとなるのは、「そこで稼げるかどうか」。公園に一定以上の人通りがない限り、P-PFIは成立しづらい面がある。本来、賑わいに乏しい都市公園こそ活性化施策が講じられるべきだが、そこは手つかずのままになる可能性が高い。P-PFI適用事例の裾野をどう広げていくか―。設置要件のさらなる緩和を含め、今後の制度設計上の工夫などが期待される。

(了)
【大石 恭正】

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