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2019年05月13日 12:37

平成「失われた30年」に秘められた謎を読み解く!(前)

 現在、多くの日本企業の大口株主は海外投資家によって占められ、株式市場は、現物も先物も、圧倒的に海外投資家の独壇場になっている。2017年1年間の東京証券取引所における海外投資家の取引金額比率は東証一部で72.5%を占めた。なぜ、1980年代後半、世界を席巻したジャパンマネーは、バブル崩壊によって、一挙に奈落の底へ突き落されたのか。

 今話題の近刊『日本が外資に喰われる』(ちくま新書)の著者である、中尾茂夫・明治学院大学経済学部教授に聞いた。元号が「平成」から「令和」に変わるにあたり、平成「失われた30年」に秘められた謎を読み解く。

明治学院大学経済学部教授 中尾 茂夫 氏

大転換は例外なく、外からの圧力によって起こる

 ――近著『日本が外資に喰われる』(ちくま新書)が大変に話題になっています。先生が本書をお書きになられた動機はどのようなものでしょうか。

 中尾 茂夫氏(以下、中尾) 執筆動機は大きく2つに分かれます。1つ目の動機は、新年号「令和」に変わるにあたり、平成「失われた30年」を振り返り、総括していく必要を感じたからです。今、バブルの再来と騒がれ、銀座、丸の内など都心部の地価が上がっています。それに伴って、書籍や雑誌特集などで、1980年代、90年代の、バブル経済から崩壊までを振り返る風潮があります。そして、そのほとんどは、破綻した山一證券、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行など、個別企業のストーリーが前面に出され、日本人読者が好きそうな、内因だけを追うことに終始しています。

 しかし、時代背景をよく観察し、その外因を描くことができなければ、自己満足に浸るだけで、真相に迫れないのではないかと私は考えています。それは、前例踏襲や横並び意識が強い日本で、国内の内発的なモチベーションで、既存の枠組み・システムが変わることなど過去に前例がないからです。大転換は例外なく、外因(外からの圧力)によって起こるというのが日本の歴史です。

 日本人ファンが多い「司馬(遼太郎)史観」というのがあります。私も物語(フィクション)としては楽しく読ませていただいております。しかし、外因(外からの圧力)に関しては一切描かれていません。坂本龍馬はなぜ薩長同盟を仲介することができたのか。龍馬の活動を支える資金はどこから提供があったのか。時代背景的には「パックス・ブリタニカ」全盛の時代です。そうなると、当然イギリスという国家、イギリスの貿易会社であるジャーディン・マセソン商会、スコットランドの武器商人トーマス・ブレーク・グラバーまで、全方位的に考えませんと幕末論を完成することはできません。

1980年代後半に日本は世界最大の債権大国に浮上

 1990年代から21世紀にかけての日本の対外戦略における大枠での変更は、アジアシフト構想の後退、アングロサクソン型、ビッグバン政策といった市場主義的発想への転換だったと考えられます。

 1980年代後半に日本は世界最大の債権大国に浮上し、対照的にアメリカは世界最大の債務国に転落しました。しかし、貸し手の日本は米ドル建てで債権を有するため為替リスクを負い、借り手のアメリカが為替リスクを免れるという、いびつな構造でした。なぜ、日本は経済大国や債権大国に浮上したにもかかわらず、バッシング(市場の閉鎖性や為替相場の過度な円安)ばかりを受け、貸し手という貢献度を評価されることがなかったのでしょうか。

「アジアで団結しよう」という強い気運があった

 共同体形成においては、当時欧州では、EC(欧州諸共同体)からEU(欧州連合)への発展ムードが高まり、北米ではNAFTA(北米自由貿易協定)という北米3カ国の共同体結成ムードが高揚していました。一方、東アジアにおける共同体形成をいかにデザインするのか、その時日本はどのような役割をはたすべきなのか、は大きな日本の関心事となっていました。当時の日本には、「日米貿易摩擦」(日米間の輸出入をめぐる経済的紛争)などでアメリカに苦汁を嘗めさせられていたこともあり、「アジアで団結しよう」という強い気運があったように思います。

 2つ目の動機は極めて個人的なものです。たまたま昨年、私は激しい腰下肢痛治療のため、大学から休みをいただきリハビリに専念することができました。この休みを天からの配剤と思い、これまで研究してきたことを色々と振り返り、今まで感じてきた疑問について、自分なりの解答を出してみようと思いました。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
中尾茂夫(なかお・しげお)

 1954年生まれ。京都大学大学院 経済学研究科 博士後期課程単位取得満期退学。経済学博士(神戸大学)。大阪市立大学経済研究所教授を経て、明治学院大学経済学部教授。シカゴ連邦準備銀行、トロント大学、西ミシガン大学、カリフォルニア大学リバーサイド校、タイNIDA、中国人民大学、マカオ大学などで、客員研究員・客員教授を、国内ではNHKやJBIC(国際協力銀行)などの依頼による調査研究主査を務める。著書に、『ジャパンマネーの内幕』(岩波書店、第32回エコノミスト賞)、『ハイエナ資本主義』(ちくま新書)、『FRBドルの守護神』(PHP新書)、『トライアングル資本主義』(東洋経済新報社)、『日本が外資に喰われる』(ちくま新書)など多数。

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