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2019年05月15日 09:47

逮捕された「ネットベンチャーの旗手」黒木正博容疑者の転落の軌跡(後)

闇の勢力に吞み込まれる

リキッド社をめぐっては、闇の勢力との関係が指摘されていたが、それが現実なものになった。パーティーからわずか9カ月後の2000年10月25日、リキッド社の大神田正文ら5人が、役員を監禁・暴行した容疑で、警視庁に逮捕された。

 大神田は東大工学部に在職中にパソコン教室を立ち上げた学生起業家。だが、不動産事業に失敗し、フロント企業に身柄を取られて、借金を返済するために働かされた。フロント企業から逃げ出した大神田は、黒木正博に拾われ、リキッド社の社長に就いた。

 大神田はマザーズ上場第1号の社長として、一躍、時の人となったため、フロント企業側に知れることになり、借金の返済と口止め料を合わせて2億円を要求された。この時、黒木が山口組の大物幹部を仲介して、借金4,000万円払うことで話がついた。4,000万円は、大神田が保有していたリキッド社の株式を黒木に買い取ってもらい捻出した、とされる。

 フロント企業にいた過去を役員に知られたため、大神田は口封じを、フロント企業の元同僚に依頼して、襲撃させたのである。

 東証マザーズ上場の企業のトップと、暴力団との具体的接点が、これほど明らかになったのはリキッド社が初めてであろう。一連の捜査では、黒木も参考人として事情聴取を受けた。

 スーパーステージはリキッド社の持ち株を売却、黒木も経営の第一線から退いた。黒木が経営するスーパーステージは、手形トラブルが原因で、02年、2回目の不渡りを出して倒産した。「若手ベンチャーの旗手」として時代の最先端を疾駆していた黒木が初めて味わった挫折だったろう。

 学生ベンチャーの黒木と大神田は芸能という利権の海に一歩、足を踏み入れた途端に、闇の勢力の餌食になったのである。

トランスデジタル事件では自衛隊と政治家を利用

 黒木正博が再び脚光を浴びるのは、2008年9月に民事再生法を申請して経営破綻したジャスダック上場のシステム開発会社、トランスデジタル事件である。

 反社会勢力とともに、事業実体のない「ハコ」と呼ばれる上場企業を道具に、無法な資金操作を繰り返し、私腹を肥やすことを生業としているアウトローを「資本のハイエナ」という。トランスデジタルは「ハコ」企業の典型で、名だたる「資本のハイエナ」が群がった。黒木正博もその1人だった。黒木は、暴力団など反社会勢力に協力する「共生者」として、以前から捜査当局にマークされていた。

 資金を注入してトランス社を乗っ取った黒木がマネーゲームのカードに利用したのは、自衛隊と政治家だった。防衛大学出身の元海上自衛官を社長に据え、陸上自衛隊と航空自衛隊の出身者を取締役に招聘した。

 2008年8月7日、トランス社は防衛省近くのホテル「グランドヒル市ヶ谷」で、子会社のケーブルテレビ局が制作したスカイパーェクトテレビ!の新番組『ガンバレ自衛隊!安全保障アワー』の制作発表会および披露パーティーを開催した。会場には政治家、自衛隊員、自衛隊の支援者ら400人が集まった。

 来賓は、就任まもない林芳正・防衛大臣(当時)、小池百合子・元防衛大臣、高市早苗・経済産業副大臣(当時)らの防衛族。自衛隊からの出席者のなかには、あの田母神俊雄・航空幕僚長(同)の姿もあった。

 小池百合子・元防衛大臣は「海上保安庁は『海猿』で格好よさをアピールした。生の格好いい自衛官の姿になるといいと思う」とエールを送った。

 この盛大なパーティーは、トランス社の株価を引き上げるための仕掛けだった。パーティー直前の7月、トランス社は新株予約権を発行。新株予約権を行使して、株式に転換して株式市場で売り抜けるためには、一般の投資家に買い支えてもらいたいのだ。トランス社は「自衛隊も協力している真っ当な会社ですよ」と、自己PRするために「ガンバレ自衛隊」を企画した。イベントは黒木が最も得意とする分野だ。

 パーティーの3週間後の8月27日、トランス社は新株予約権が行使され、31億円を調達したと公表。その翌日に、不渡りを出し、9月1日、東京地裁に民事再生法を申請して経営が破綻した。調達したはずの31億円は、影もかたちもなく、どこかに消えた。

 警視庁組織犯罪対策総務部と捜査2課は、10年2月、黒木やトランス社の社長ら6人を逮捕した。トランス社が破綻する直前に、元暴力団山口組組長の金融業者に借入金を返済するため優先的に売掛金を譲渡した民事再生法違反(特定債権者に対する担保提供)の容疑だ。黒木は、執行猶予付きの有罪判決を受けた。

 かつての「ネットベンチャーの旗手」は「あっちの世界」の住人になっていたのである。

(文中敬称略=了)
【森村 和男】

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