2024年04月19日( 金 )

【躍進する新宮町】駅前を中心とした新たな市街地形成で急速な発展を遂げる新宮町

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JR駅開業で開発進み、人口増加率は全国1位に

 新宮町は南側が福岡市、北側が古賀市、東側が久山町と隣接する福岡都市圏の一角を構成する町である。18.93km2の町域の東部には立花山を始めとした山地が広がるほか、北西部は玄界灘に面しており、その海岸は玄海国定公園に指定。また、沖には近年“猫の島”として一躍脚光を浴びている「相島」が浮かぶなど、豊かな自然が多く残されている。

 一方で、町の西部エリアには平地が広がり、国道3号と国道495号(旧・3号線)、JR鹿児島本線、西鉄貝塚線といった交通インフラの大動脈が南北に走ることで交通利便性に優れ、新宮町役場を始めとした公共施設や、工場、住宅、商業施設などが集積。市街化が進んでおり、実質的な町の中心部となっている。

 町内からは福岡市への通勤者が多く、同町もいわゆるベッドタウンとしての発展を遂げてきた。ただし、同町の人口は1990年代までは長らく1万人台で推移しており、2000年代に入っても2万人弱と、福岡都市圏のなかで比較的緩やかな人口推移をたどっていた。

発展の契機となった「JR新宮中央駅」

 町に劇的な変化が訪れたのは、2010年代に入ってからだ。10年3月に町内初のJR駅であるJR新宮中央駅が開業すると、それに合わせて駅前の区画整理や開発が急激に進行。12年2月に竣工した「MJR新宮中央駅前」(総戸数81戸)を始めとした大型マンションが、次々と開発されていった。また、その周辺には大型の商業施設も次々と進出。IKEA(12年4月開業)を皮切りに、カインズ(16年3月開業)、東京インテリア家具(18年4月開業)などが九州初進出の場所として同町を選んだことで、注目を集めた。

 現在も、駅西側の旧福岡ミツカン福岡工場跡地で、第一交通産業(株)による分譲マンションと商業施設との複合開発が進められている。

 こうした旺盛な住宅供給と開発により同町は、15年10月に実施された国勢調査で人口3万344人を記録し、前回調査時(10年10月実施)より5,665人増加。全国市町村で第1位の人口増加率(23.0%)となった。なお、19年3月末時点で人口3万2,916人、世帯数は1万2,990と、まだまだ増加傾向にある。

新たな市街地の開発余地など、秘めたるポテンシャル

駅前に広がる「沖田中央公園」

 同町に急激な人口増をもたらした最大の要因は、JR新駅の開業にともなう駅前の中心市街地整備が奏功していることだ。駅前に広大なセントラルパークとなる「沖田中央公園」と、その地下に埋設した下水処理場を一体整備することで、まちづくりの“核”を設定。その周囲に大型マンションや商業施設を効果的に配置することで、町としての“骨格”が形成されていった。さらに、新駅開業によってJR博多駅まで最短約20分と交通利便性が格段に向上したことに加え、近年は人気のため上昇傾向にあるものの、福岡市内に比べると比較的リーズナブルな不動産価格や家賃なども、急激な人口増を後押しした。

2019年4月に開校した「新宮東中学校」

 ただしその一方で、人口増加にともなう児童数の急増により、町内の学校のキャパシティが逼迫するという弊害も発生。これを解消すべく、町では町内5校目の小学校「新宮北小学校」を16年4月に開校したほか、今年4月には町内2校目となる新たな中学校「新宮東中学校」(施工:戸田・溝江JV)も開校した。同校は約2万3,000m2の敷地内に、校舎棟と体育館棟、さらには給食棟や武道棟などを口の字型に配置。ユニバーサルデザインに基づいた優れた教育設備を備えている。

 さらに町では、新たな市街地を開発していく計画もある。それは前項の町長インタビューでも触れている「(仮称)新宮都市計画事業三代土地区画整理事業」だ。これは、国道3号の大森交差点から県道35号筑紫野古賀線の的野付近までを幅25mの新たな都市計画道路で結ぶとともに、その沿線となる三代エリアで、「商業ゾーン」「住宅ゾーン」「複合ゾーン」「雇用促進ゾーン」などに分けて開発していく計画。これにともない、一部の急傾斜地を造成するとともに、市街化調整区域から市街化区域への編入なども検討している。

 なお前出の「新宮東中学校」や、隣接する「ふれあいの丘公園」なども、将来的にはこの新たな市街地の一角となる予定だ。ただし、これはまだ検討段階であり、実現するには国の開発許可も含めて、越えなければならないハードルは多い。

 このように、駅前を中心とした新たな市街地開発が奏功したことで、急激な人口増を実現している新宮町。同町においては東部の山地を含めて、まだまだ未開発のエリアは多く、今後の市街地拡張の余地はまだ十分に残されている。ただし、町の東西をつなぐ動線は乏しく、東西でのエリア格差の発生も懸念される。新たな都市計画道路の早期開通などの交通インフラ整備や、離島も含めた地域振興策の実施により、さらに勢いある魅力的なまちづくりを期待したい。

【坂田 憲治】

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