• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年06月05日 15:20

中小企業の健康リスクによる1事業所あたりの労働性損失は年間2,004万円

 企業の労働生産性は、働いている人の健康状態や生活習慣によって大きく変わることがわかった。東京大学政策ビジョン研究センターと横浜市経済局は、中小企業の労働生産性損失と健康リスクの関係を調査しており、体調不良などによる従業員1人あたりの労働生産性損失は年間76.6万円と推計された。元気に仕事ができる職場をつくることで、仕事の効率が高まり企業としての良い成果につながるのか。

出勤時の体調不良は年間73万円損失

 働いている人の健康状態や生活習慣によって、仕事の効率を表す企業の労働生産性はどのくらい変わるのだろうか。東京大学政策ビジョン研究センター(現・未来ビジョン研究センター)と横浜市経済局は、市内の中小企業の6事業所を対象にして、企業の労働生産性と健康リスクの関係について日本初ともいわれる2017年度の調査を行っている。

 まず、健康リスクとして「主観的健康観(健康だと感じるか)」「仕事満足度」「家庭満足度」「ストレス」「喫煙」「アルコール」「運動習慣」「睡眠休養」「不定愁訴(病気やケガなどの体に具合の悪いところがあるか)」の計9項目を設定して、働いている人の健康リスクの有無をアンケートで調査した。

 そして、病気・ケガにより仕事を休んだ日数を表す「アブセンティーイズム」と、出勤していても体調がよくないために仕事を進める能力や生産性が低くなっている「プレゼンティーイズム」から、健康リスクがあると仕事の効率がどのくらい変わるかを計算した。その結果、体調不良などによる従業員1人あたりの労働生産性損失は年間76.6万円、1事業所あたりの労働生産性損失は年間2,004万円と推計された。

 従業員1人あたりの経済損失の内訳は、病気やケガにより仕事を休むことのコストが年間3.6万円、出勤していても体調がよくないために仕事を進める能力や生産性が下がることによるコストが年間73.0万円と、欠勤によるコストよりも出勤時の体調不良によるコストが企業の労働生産性損失に大きく影響していることがわかった。そのため、働いている人の健康や生活習慣を整えて、元気に仕事できる職場をつくることで、仕事の効率が高まり企業としての経営向上につながると考えられる。

横浜市経済局

高リスクの労働生産性損失は2.9倍

 働いている人の体調や生活習慣の健康リスクが高いほど、欠勤が多くなり、出勤していても体調がよくないために仕事の効率が下がるなど、企業としての労働生産性損失が大きくなることもわかっている。

 低リスク(0~2項目で健康リスクあり)、中リスク(3~4項目で健康リスクあり)、高リスク(5項目以上で健康リスクあり)に分けると、1人あたりの労働生産性損失コストは、低リスクと比べて、中リスクは約1.2倍、高リスクは約2.9倍と大きかった。働いている人の健康状態や生活習慣がよくなり健康リスクが下がれば、出勤していても体調がよくないことや仕事を休むことによる労働生産性損失コストが少なくなるということだ。

 具体的には、どのような健康リスクが多くの企業の課題になっているのだろうか。健康リスクのうち、最も「リスクあり」の結果が多かったのは「運動習慣」の68%で、「不定愁訴」の50%、「睡眠」の「49%」と続く。「運動習慣」や「不定愁訴」「睡眠」は、職場のおおよそ半数以上の人が健康リスクを抱えている。たとえば毎日の生活に運動を取り入れる習慣づくりや体調をよくするための環境の見直しなどが、健康経営としてまず取り組みやすいのではないかと考えられる。

始めやすい健康づくりは職場から

 今回の調査では健康経営の取り組みとして、「職場における運動機会の増進講座」や「食べ方で変わるカラダのコンディション講座」「ストレスとの向き合いかた講座」などを各事業所で行い、職場で健康づくりをする効果について、参加した従業員にインタビューしている。

 インタビュー調査の結果によると、体操など職場全体で健康づくりをすることで、1人ひとりが個人で始めるよりも取り組みやすくなることがわかっている。また、ウォーキングを始めるなど毎日の生活でも健康のことを考えるようになり、よい生活習慣ができたという声も出ている。また、デスクワークの職場では、職場全体でストレッチすることで集中力が上がり、仕事をしやすくなる効果もあるという。

 今回の調査期間は2カ月間と短いため、労働生産性に大きな変化が出るまでには至っていないが、これからも引き続き健康経営の効果について調査する予定という。運動や栄養、メンタルヘルスなど普段の生活で健康に気持ちを向けて、体調や生活習慣をよくすることが健康経営だ。運動や食生活の見直しを始めてからも、体調が改善されるなどの目に見える効果が出るまでには時間がかかる。健康経営の効果を見るためには、今後、長い調査期間が必要なのではないだろうか。

高齢化による人手不足の解決にも

 健康経営は、採用面での企業イメージが高まるとともに、働いている人の高齢化による人手不足が課題になっている企業からも注目されている。

 これまで、働く世代の健康を改善することは、あまり注目されてこなかった。しかし、働いている人の年齢が高い企業では、まだ定年になっていない人が健康を害して退職してしまうことが人材面での課題になっているため、元気で仕事を続けてほしいと健康づくりに取り組んでいるという。

 元気に仕事ができる職場をつくり、人材に投資することが前向きな企業経営にもつながるのではないだろうか。

【石井 ゆかり】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2019年11月13日 09:27

曖昧な株式管理が生んだ名門ゴルフクラブの経営権争い(中)NEW!

 ゴルフ場創業者の死後、株式の所有をめぐり、裁判が続いている。舞台は、福岡県糸島市にある「ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ(以下、クイーンズ)」だ。地場屈指のマンション...

2019年11月13日 11:03

福島銀行がSBIホールディングスと業務提携NEW!

 11月11日、ネットで証券・銀行・保険業務を幅広く手がけているSBIホールディングス(以下、SBIHD)と福島県の福島銀行(第二地銀)が資本業務提携すると発表した。...

2019年11月13日 10:33

山本太郎氏がゲノム編集食品の表示を主張、「知る権利脅かされてる」NEW!

 れいわ新選組の山本太郎代表は12日、解禁されたゲノム編集食品の開発について、届け出制で表示義務もないことから「知る権利が脅かされている」と問題視し、最低限の対応策と...

2019年11月13日 10:25

受験シーズンで保護者から頼られるブレインフードが高麗人参~予防医療の新しい風(4)NEW!

 予防医療・健康増進を実践する医療施設として、全国から年間延べ3万人以上が訪れる診療所として注目されているのが海風診療所。今回、院長・沼田光生氏に、同院が推進する、予...

2019年11月13日 09:53

【凡学一生のやさしい法律学】憲法改正について(1)NEW!

 憲法制定権力という講学上の概念は歴史的事実から演繹されたものです。たとえば、明治憲法は徳川幕府を倒し、王政復古(天皇制)を成し遂げた薩長土肥の下級武士階級が憲法制定...

2019年11月13日 07:00

監訳者に聞く 「MMT(現代貨幣理論)」とは何か?(2)

 私が言論活動を始めたのは2011年からです。最初は単なるブロガーでしたが、14年に経済評論家の三橋貴明さんが主宰するメルマガの執筆陣に加わるなど、徐々に活動の幅が広...

2019年11月13日 07:00

日本橋川に「青空を取り戻す」 首都高の地下化プロジェクト(後)

 オリンピック終了後間もなく、地元住民から「日本橋に青空を取り戻せ」という声が挙がる。オリンピックの興奮が去ると、「日本橋の景観が台無しじゃないか」という不満が頭をも...

2019年11月12日 16:59

半分の工期で済む、倉庫・工場建設

 倉庫・工場建設の受注に特化しているゼネコンのある部長が、「マンションの工事なんかやってられないな!」とうそぶく。今回、12億円の工場の受注を請けたというので、「納期...

2019年11月12日 16:39

福島瑞穂・前川喜平氏が萩生田文科相を批判、「表現の自由へのどう喝」「資格に欠く」

 福島瑞穂参議院議員(社会民主党)は11日、東京・平河町のホテルでパーティーを開き、前川喜平・前文部科学事務次官とともに、教育行政をお仲間や民間に売り飛ばす萩生田光一...

2019年11月12日 15:54

【交通取締情報】11月13日、八幡東区で実施

 福岡県警は11月13日(水)、八幡東区で可搬式オービスによる交通取り締まりを実施する。

pagetop